ウマ娘新規からマニアックになりたい人向け、第26回NHKマイルカップの血統予想と解説 ~外国産馬の軽い歴史と国別の特徴~
※ご注意
本記事はウマ娘に触れた人が実際の競馬に触れようとした時に、私の得意とする血統予想からの観点を提供するという目的で書いています。
極力簡単になるように書いていますが、理解しづらい可能性もあります。
G1は今後すべて書いて行こうと思うので、段々と理解していったら予想が楽しくなるかも…という事でご容赦ください。
なお普段はfanboxにマニア向け予想記事を掲載しています。
■先に少し音楽屋らしい事を語らせて!
今週のG1はNHKマイルカップですが、このレースのファンファーレはN響ことNHK交響楽団が生演奏する事で有名です(コロナ渦なので今年は実施されるかわかりません→追記:団員のツイートによると実施されるようです!)。
通常のG1ファンファーレの楽器構成と違い打楽器を入れず、テンポは遅め、倍管を採用しない(倍管:各管楽器の人数を倍にすること。厚みと音量が上がる)という他とは違う形で演奏されます。厳かな雰囲気マシマシといった感じなので、ぜひ違いに注目してみてください。
…というたまには本来私は音楽屋である所から書き出してみました(バズった実写テイマク写真ツイートからの方だと余計伝わらなそうなので)。
ファンファーレ等についてはいずれ記事にします。
■NHKマイルCは外国産馬のためのG1だった…?
NHKマイルカップというレースの前身はNHK杯(G2)とはwikiにもあるようですが、芝2000mで日本ダービーのトライアルでもあり外国産馬とセン馬は出走不可というクラシック競走と同条件。
レース名通りの”お堅い”ところがありました。
それよりもG2のニュージーランドトロフィー(NZTと略す)が当時5月の東京芝1600mで外国産馬セン馬の出走も可能と、レース条件的な前身は実質こちらです(現在は4月の中山で開催されているNHKMCのトライアル)。
(ヘッダの写真のヒシアマゾンはG2時代のNZT勝ち馬。NHKMCがその頃あればね…)
1996年にG1として創設されたNHKマイルカップですが、第5回の2000年までは日本ダービー等のクラシックのレースに外国産馬が出走できなかったため(セン馬は今も不可)、◯外ダービー(まるがい・外国産馬は馬柱の名前の前に◯の中に外という記号が付く)とも言われ、シーキングザパールやエルコンドルパサーなど後に海外G1でも活躍する馬もこのレースを勝って羽ばたいていきました。
この90年代から00年台前半にかけては出走制限があったにも関わらず外国産馬の活躍馬が多かった。毎年のようにG1を勝つ馬が現れ、前述の2頭の他にもヒシアマゾン、タイキシャトル、グラスワンダー、アグネスデジタル、シンボリクリスエス等といった名馬が次々登場。
日本ダービーの外国産馬開放元年となった2001年にNHKマイルカップを勝って参戦したクロフネ(ダービーは5着)は、白毛の桜花賞馬ソダシの父であったり現在も非常に重要な種牡馬です。
また1997年は1600m以下で当時出走可能なG1レース7つのうち6つを外国産馬が制覇、逃した1つは現表記2歳G1なので、3歳上なら完全制覇。まさにスピード勝負のレースを席巻しましたし、NHKマイルカップでは外国産馬が上位独占を繰り返していました。
しかし2000年半ば頃から日本の芝は"硬くて速い"傾向に変化、そこに見事に合致したのがサンデーサイレンスだったため、いい馬は国内で買えるという状態に。
また外国産馬が流行っていた頃はバブル景気も後押しして個人馬主が購入していたケースが多かった反動もあり、次第に減っていきました。
せっかく開放されたクラシックも最後に勝ったのは2007年オークスのローブデコルテ。天皇賞に至ってはシンボリクリスエスの秋天以来いないので2003年が最後です。
芝質の変化で勝てる血統が変わってしまうというのは、過去のnoteでも度々お話ししていた事ですね(例えばこの記事)。
そんな感じでしばらくは外国産馬の強い馬を見かけなくなったのですが、日本の高速馬場も
"馬場が固くて速い"という少し前の状態から
"クッションが効いてはずんで速い"という傾向に変化しています。
同じ速い馬場といっても傾向が変わっているんです。レコードタイムが出ると脚の心配をする人は固くて速い時代の名残り。
その変化のせいか以前よりもパワーとスピードの両立という要素の重要度が増しました。
また芝のレースが主体の欧州でも徐々にスピード方向にシフトしているのもあり、アメリカ産牝馬を欧州種牡馬と掛け合わせる等が行われていった結果欧州血統もところによりスピードアップ傾向。
以前ほどでは無いにしろ、日本でもまた外国産馬や持込馬(海外で種付けされ日本で産まれた馬。マルゼンスキーやビワハヤヒデ等がそう)の活躍馬が出てきつつあります。
■国別の血統の特徴は開催条件でわかる
ただ外国産馬と言っても一概に語れるわけではありません。
粘土質のダートで小回り平坦が主流のアメリカと、深い芝で起伏が多く広いコース主流の欧州では栄える血統は違います。
その国がどういう競馬を主流としているかで、血統を見た時にどういう競馬を得意とするのかが推測できるわけです。
なので国別にざっくりとした基本特徴をわけてみますね。
(※これは私の解釈です。血統派によって色んな解釈があるため、あくまでも一つの解釈としてください)
・米国血統(カナダ含む)
ダートは粘土質で軽く時計が速くて平坦小回りコース、ペースが速い。芝も似た特徴。
→軽いスピードの持続力に長けているので、高速馬場に強くペースアップしてから長くトップスピードを続けられる。またコーナリングがうまく起用。
やや早熟傾向が多い。スピードに乗った一本調子の所があるので、スピードに乗り切れないタフな馬場や流れだとつらい。一部道悪を得意とする血もいるが主流とは言い難い。芝1200mでは逆にパワーを発揮する。
父ディープインパクトと好相性(例:コントレイル・ワグネリアン・グランアレグリア)
なお両親共に米国血統だとダートのスピード馬として活躍するケースが大半です。
・南米血統(主にアルゼンチン)
ゲート出てすぐ下り坂なコースがあったり時計が速い芝
→軽い馬場のスピードの持続力があるが北米タイプよりは不器用で、瞬発力はさらに乏しい。直線平坦コースや下り坂からなだれ込むようなコースに強い。道悪が苦手。(例:ペルーサの母方・ディアデラノビアの母方)
・フランス血統
起伏が多くスローペースになりやすい。芝はやや深め。
→パワーとスピードを併せ持ち瞬発力も優秀。アップダウンのあるコースにも強く荒れ馬場も苦にしない(例:リスグラシューの母方・クロノジェネシス)。
日本の競馬に幅広く適応するが、超高速馬場ではアメリカ系の血の助けが欲しいところで、併せ持つと爆発する事も(例:アーモンドアイ)。
・英国血統
起伏が多いが直線が長く1600~2000なら一直線で行われる大レースもあるなど息が入りづらいタフな競馬。かつ芝が深い。
→重厚なパワーと坂のアップダウンに強い傾向があり、パワーとスピードの持続力という組み合わせ。草丈の長い芝や道悪にも強い。瞬発力に欠けるのとパワーがありすぎるので血統のどこかに軽い瞬発力の助けが欲しい(例:ブラストワンピース)。
また小回りの競馬場が苦手な事が多く、広いコースが得意。高速馬場対応はアメリカ血統と組み合わせると爆発する事がある(例:ノームコア)
・アイルランド血統
起伏はそこそこ、芝が非常に深い。
→重厚なパワーとアップダウンに強く、パワーと瞬発力という組み合わせ。
高速馬場はかなり苦手で、欧州の競馬では素晴らしい瞬発力が発揮できても日本ではその瞬発力が発揮できない事が多い。
スタミナも豊富で長距離適性が高い(例:アンライバルドの母方、フサイチコンコルド)
・ドイツ血統
起伏は欧州にしては少なめで綺麗に生え揃った芝
→二種類いる。
ノーザンダンサー系ではないドイツ血統は中距離以上であれば高速馬場にも対応でき、パワーとスピードの持続力がある。芝が綺麗に生え揃った状態の方が強い(例:ワールドプレミアの母方、エイシンフラッシュ)。
ノーザンダンサー系であるドイツ血統ではパワーに優れアップダウンの多いコースにも強いがその分やや高速馬場対応に難が出る。芝が荒れても強い(サリオスとサラキア姉弟の母方)。
・豪州血統
芝は短めで最後の直線が短い
→パワーとスピードの持続力の血統。ただ英国血統と違ってスピードの絶対値は高めでより一本調子の傾向。
日本に於いてはマイル以下の短い距離を得意とする
・香港血統
芝は暖地型芝と寒地型芝のオーバーシードで欧州よりは日本に近め。
だが基本的に豪州血統と同じ傾向で元英国植民地的馬産傾向という感じ
・ドバイ血統
競馬史としては新しい部類になるので欧米各国の折衷が多い。
芝質は香港と同じく日本と欧州の間
・日本の血統
日本の新しい血統はアメリカとフランスの血統が混ざった形の瞬発力と軽いスピードの持続。
日本の古い血統は欧州寄りで荒れ馬場・重い馬場の適性が高くスタミナは高め。パワーはそれなりにあるがスピードは少し足りない。ダート中距離以上の適性へと変化していく事がある。
現在に於いてウマ娘登場馬の多くがこの後者に入りがち。
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非常にざっくりとですが分類してみました。
血統派はよく"米国系の持続力"とか"フランスの血のスピード~"とかを口にしますが、この辺の基本が元になっています。
■今回のNHKマイルC出走する持込や◯外は?
さて今年のNHKマイルカップには持込馬が1頭、外国産馬が2頭。人気もしていますね。
4枠8番グレナディアガーズは持込馬。
父フランケルは英国産の名マイラー。
母方は米国系で、母父は軽いスピードの一本調子、と見せかけてフランス系のスピードも実は持っています。
母母父も母父とはややタイプが違うもののパワーとスピードの持続力の血統。
7枠14番ショックアクションはアイルランド産の外国産馬。
父グレンイーグルスはアイルランドのマイルG1馬でイギリスでもマイルG1を勝利。
母父は豪州血統で、母母は再びアイルランド血統。
上記・下記の馬達よりは重厚さがあり高速馬場だとスピード不足になりがち。
7枠15番シュネルマイスターはドイツ産まれの外国産馬。
父はイギリスのマイラーでフランスのG1も勝利。
母父、母母父はフランス血統で、母母母からようやくドイツらしさが感じ取れます。
グレナディアガーズほどの軽さはありませんがショックアクションよりはあります。
普段上記のような出走馬の血統解説については有料部分でやっていますが、たまにはという事で触れてみました。
ちなみに3代父グラスワンダー・母父キングヘイロー・母母父サクラバクシンオーというウマ娘勢向け血統の馬8枠18番ピクシーホロウですが、上記分類表を見た通りの傾向なのではと考えます。
そのような特徴を持つ各馬ですが、では現在の馬場の傾向を含めた今回のレースに於いてはどうなのか…は予想記事部分で触れたいと思います。
以下、予想になります。
どうしても一段回内容は濃くなります。
普段完全マニア向け(かつ他のレースも有り)な予想記事をfanbox(月額510円)に有料掲載しているので、こちらも有料化(単記事200円)する事をご容赦ください。(fanboxは他のレースも掲載中)
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