自転車とどこまでも。
最近、自転車に乗ることがないので、無性に乗りたくなる時があって。冷たい冬の空気が少し緩み始めたこんな時期は、一年で最初に来るそのタイミングだ。
小学生の頃、自転車さえあれば、どこにでも行けると思っていた。幼稚園の頃は、さすがに家の周りだけでしか乗っていなかったし、逆に中学生になるともう、相変わらず自転車には乗っていても、どこにでも行けるなんて思考はなくなっていたと思う。そこはその、現実的になって。
だからやっぱり、小学生の頃がまさに、ちょっとした冒険心も含めてそう思っていたのだ。
今思えば、自転車で行ける範囲が行動範囲だった、というだけのことなんだけど、それは大人の発想だ。子供にとっては、とにかく自転車さえあれば、どこにでも行けたのだ。現に私は、今思い出してみても、結構遠くまで走り回っていたから尚更だ。いつも、誰かしら友達と一緒に。
みんなと過ごした、あの堤防、あの公園、あの秘密基地。自転車が無かったら行くことも出来ず、見つけることも出来なかった場所がたくさんあった。
どこにでも行けただけじゃない。あんなに楽しい時間そのものが、生まれなかったかもしれない。遊びまくった時間はもちろん、自転車で走っている時間そのものも、夕焼け空を見ながら話しこんだ、ちょっと背伸びしたような時間も。そう、小学生だって、そんな時間があったんだぞ。子供なりに、色々考えてたんだよなぁ。なつかしいな。
いつもワクワクしていたあの頃の、楽しい!しか無かったあの頃の、ぜんぶ大切な思い出だ。
・・・と、ここまで書いてきたけど、あの頃の私は、自転車でどこにでも行ける、ではなく、自転車でどこまでも行けると思っていたのかもしれない。
何だかもう、ただただ楽しくて、未来は希望に溢れていて、たくましくどこまでもと。
あの頃、友達と同じくらいに、自転車は無くてはならない相棒だった。
あ、じゃあ「自転車でとこまでも」じゃなくて、「自転車とどこまでも」かな。
だって相棒だもの。
で、じゃなくて、と。だよね。