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46-- 「初めてのキャンプ」1135字  モントレーの山奥から心の叫び

山や海でのキャンプ生活をするために仕事をしている私の親友、井手尾さんは仕事よりもキャンプに人生を楽しんでいる。
でも、決して仕事を怠ける人ではない。
仕事まじめ人間である。
私は彼をキャンプの達人と呼んでいる。
月曜日から木曜日の4日間はガーデナの仕事(庭師)をし、金曜日、土曜日、日曜日のほとんどはキャンプに行っている。
キャンプをするために仕事をしている。
独身の彼はキャンプが生きがいである。
 そして彼は非常に親切な人である。 
去年の夏に、還暦を過ぎて、生まれて始めてキャンプというものに連れて行ってもらった。
リノの山にあるキャンプ場である。
同じリノのギャンブルの町ではない。
人の少ないヤマのキャンプの楽しさを始めて経験した時であった。
彼のまじめな、そして控えめな、親切な人柄に惹かれたひと時でもあった。特に、うれしく楽しかったのは彼の趣味の料理だった。
テレビで有名な料理の達人“道場六三郎”の料理の本で勉強していることを証明してくれた。
味にこだわったおいしい沢山の料理を堪能させてもらった。
松林の中で小さなテントを地べたに張り、飯盒でご飯を炊いた。
生まれ故郷の喜界島で小さい頃聞いていた”飯盒”という言葉が読みかえってきた。
使ったことはないけど、今日はこの飯盒で実際にご飯を炊くのである。
俺はキャンプに来て山で昔懐かしい飯盒でご飯を炊いているんだと、満足感十分である。
ルンルン気分である。
秋刀魚、イカ、タン、心臓、肝を網で焼く。
彼はただの炭では焼かない、竹の炭で焼いた。
青竹をコップにして酒を飲んでいるのを見ると情緒があるが、竹の炭で焼くというのも「私たちは贅沢な焼き方をしているんだ」とうれしかった。
ビール、濁り酒、そして私の生まれ故郷の喜界島の焼酎までこのアメリカで手に入れて持ってきてくれた。
ますます彼が好きになった。
喜界島の皆さん、フリムン徳さんは喜界島の焼酎をアメリカ・リノの山奥のキャンプ場で飲んでいるのでいるのであります。
気の合う人同士が星空の下で、たらふく飲んで食べて、語り合うキャンプはまさしく最後の晩餐会ではなく、最高の晩餐会であった。
 綺麗な枝ぶりの大きな松ノ木が、天にも届きそうな高い松の木が、真っ直ぐに沢山生えている林の中である。
その松の木が星空の下で、私に語りかけてくるようであった。
ザワザワと揺れる松の木の枝に私は夢中で話し掛けた。
傍の井手尾さんは私が「松ノ木が喜んでいる」と言うと「徳さんは松ノ木と話している」と面白がった。
木を扱う大工を長年してきた私には綺麗な木は松の木であろうが何の木でも何か親しみを感じて、思わず話し掛けたくなるのである。
これは大工を経験した人にはいるかもしれない。
道を歩いていて別嬪さんを見たら声をかけたい、あの気持ちになる。
山の中の星空の下でご飯を炊き、食べて、飲んで、語り合い、地べたに張った小さなテントに寝る、たったこれだけのことが、昔の人は誰でも普通にやっていたことが、今の私達には楽しい遊びになり、幸せ感に浸れる。
キャンプは街の人間の心を癒してくれる

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