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74--「泥棒も有名人になりたい」1575字 モントレーの山奥から心の叫び

泥棒が空き家に入り、いい収穫がなかったら、腹が立つに違いない。
そんな時に泥棒は何をするか、考えてもみなかったが、世にも稀な仕返しをしてあった。
泥棒現場の第一発見者になったのは、私は生まれて始めてであった。
私達の教会に泥棒が入った。
変な気持になり、どうしてキリスト様は?という気持になった。
寂しい気持ち、 悲しい気持ちと 不安な気持ちが交互に動いた。
教会のキッチンの裏側へ回ってみたら、1枚のガラスが粉々に割られていた。
近づいて中を覗くとキッチンのホール中いっぱいに、小さなガラスの破片が散らばっている。
ガラスの破片だけではない、小さな石も4つ、5つ散らばっている。
 教会が壊されたとか放火された話は聞くが、 教会へ泥棒が入ったと聞くのは珍しい。
泥棒さんにお聞きします。
大阪ではヤクザに”さん”をつけて”ヤクザやさん”と呼びますが、教会に入った泥棒ですから、”さん”をつけて”泥棒さん”と呼ばせてもらいます。
キリスト様は心の優しい方ですから許してもらえると思って入ったのですか?
教会には現金を置いてないのが知らなかったのですか。
泥棒さん、キリスト様が憎くて入ったのですか ?
南米のパラグアイに住んでいた頃、 生活に困って、悪いことをしたり、泥棒をしたりした後、教会へ行って「キリスト様、生活費に困って泥棒したのです、どうかお許しください」と、お祈りしたらキリスト様が許してくれると、現地人のパラグアイジョーから聞いたことがあった。
でもあんたは、いつもは金を置いていない教会で、お金を見つけた。
運がよかったのです。
きっと、キリスト様が助けてくれたのでしょう。
いや、お腹が減っていたから見つけたのだと思います。
その日は、たまたま牧師さんが冷蔵庫にお金を入れていました。
腐らんようにじゃなく、入れるところがないから入れてあったと思います。
小さな教会の寄付金のお金ですから、35ドルか40ドルだったと聞きました。
 探し疲れて、お腹が減り、冷蔵庫を開けたら、お金も入っていた。
コーラを飲み、ココアを飲み、空いていたお腹を満たしていた。
少ない金しかなかったから、あんたはムシが収まらなかったに違いない。
わざわざ、別棟の礼拝堂から聖書を持ってきて、キッチンのフロアーに投げつけている。
あなたは聖書を読めなかったから、腹が立ったのですか。
それともキリスト様が憎いのですか ?いやそれとも、ガラスを割った窓から入る時、手か、足か、顔か、頭か身体の一部を 切って血を出し、その血を見て腹立ったからですか。
赤い血のついた白いTシャツを半分に引きちぎり、 その半分をキッチンのカウンターに飾るようにして置き 、その半分は礼拝堂の礼拝台に丸めて置き、 牧師さんになったつもりで聖書を読んだに違いない。
いや、ページをめくっただけかも知れない。
その証拠にいつもと違う小さな説教台の上に聖書が乱雑においてあった。
ガランとした、小さな、古い教会で泥棒であるあんたが牧師に成りすまして、 誰も座っていない整然と並んだ椅子に向かって声高らかに説教をしたに違いない。
「皆さん、泥棒したらいけませんよ、私みたいにガラスの破片でで身体を切って、血を出すのですよ」「泥棒は教会では儲けられまへん、お金を扱うお店が儲かります」、そんな内容に思いますが。
泥棒が教会の説教台で、上半身裸で説教している姿を想像すると、キリスト様も笑っている顔が浮かびます。
説教をしたあんたは入り口にある教会訪問者名簿にちゃんとサインまでしてある。
皆さんのように行にはめて書かないで、新しいページいっぱいに皆さんの4,5倍の大きさの字で、殴り書きしている。
それはアルファベットに違いないが判読できない。
泥棒さんよ、泥棒もいいけど、もっと字を綺麗に書く稽古をしなはれ。
サインまでしていった泥棒さん、きっとあんたは有名な映画スターになりたかったに違いない。
2-28-2006 フリムン徳さん

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