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テスト1週間前となり部活動が一旦停止したので、唯花は学校が終わるとすぐに走って家に帰る。

「ただいま」

「あら、おかえり」

「今日は咲南花たちと勉強会をするんだ!だから走って帰ってきたの!」

「ふーん、どこで?」

「近くに市立図書館があるじゃん?あそこに自習スペースがあるらしいから、そこでやろうかなって……」

「別に1日くらいお友だちと勉強会をしてもいいよ」

「やった!ありがとう」

「ちなみに、その自習スペースは図書館の中でもちょっと奥の方にあるから、本当に静かなんだって!しかも、近くにある窓の外には森林が広がっているから、勉強にはもってこいだよ!」

唯花は一生懸命説明して、
いかに図書館で勉強することが自分たちにとって得なのかを熱弁していた。
下手したら許可が降りないと思ったからだ。

それに市立図書館の場所は、唯花の家から少し遠い。
きっとテスト期間じゃなければ許可は降りなかっただろう。いや、テスト期間でも微妙だが。

「5時半までには帰ってきなさいね」

「わかった」

いつもなら子どもだけで遊びに行くのは許されないのだが、
今日は図書館で自習をするからなのか、お母さんの機嫌がよかったからなのか、すんなりOKをもらった。

さっそく唯花はグループに
『お母さんから許可をもらえたから急いで向かうね!』と打って家を出た。

その直後にきたメッセージで、晴れやかだった唯花の心は一気にどんよりと暗くなった。



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咲南花は家に帰ってから、真っ先に母親の元へ向かった。

「ねえ、お母さん
今日これから図書館で自習をしようと思うんだけど…」

咲南花は母親の顔が険しくなったのを感じた。
背中に冷や汗が伝う。次に話したのは母親の方だった。

「はぁ……それって1人?」

「ううん、唯花たちと」

元々険しかった顔に加えて眉をしかめる。これはNOの合図なのだと咲南花はすぐにわかった。

「そもそもうちには門限があるのよ?今から図書館に行ったところで大して勉強できないじゃない。それに1人で勉強するならまだしも、友だちとだなんて………。」

「私が中学生の時は家でも勉強できていたわよ」

母親のまくし立てるような反対の言葉に、咲南花は何も言えないでいた。

もうこのモードに入ったら絶対に人の意見を聞かないし、仮にも反抗したら去年のように部屋に監視カメラを置かれるかもしれない。

いろいろな最悪パターンを頭に巡らせているうちに、気づけば6人のグループで『今日は行けない』とメッセージを送っていた。

「ねえ、咲南花。今日の小テストの点数は?」

「っ……!?なんでそれを…?」

「今日、担任の先生とお話したのよ。今日は数学のプレテストがあったみたいじゃない。咲南花の得意な数学なんだから、95点は超えているわよね?」

「…うん。一応98点だった。唯一間違ったところは今回のテストの中で1番難しいと先生が言ってた場所で、正解した人は1人もいないんだって。」

「だから何?」

母親との“オハナシ”は、まだまだ続きそうだった。

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