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【長編官能小説#友情(第3話)】

(官能小説を投稿しています。SM、フェチシズムが苦手な方、18歳未満の方は閲覧はご遠慮ください。)

「わたしって、どっちでもいけるの」奈保子には亜希子の言うことが理解できなかった。

「“バイ”よ、バイ」

「バイって…」

「バイセクシャルのことよ」

「えっ…」奈保子は自身の耳を疑った。

「おかしいでしょ、わたしって」亜希子の衒いのない物言いに返す言葉がなかった。

「早い話が、あなたともいやらしいことができるってこと」亜希子はそう言うとリビングルームを出ていった。醒めかかった酔いに亜希子の刺激的な告白が相俟って奈保子は吐き気を覚えた。残ったテーブルに置かれた水差しを手に取ると喉を鳴らして残った水を飲んだ。吐き気が収まる。

「なおちゃん、こっちに来て。聞こえてる?」隣の部屋からの亜希子の声に奈保子は力なく立ち上がると、リビングルームを仕切る扉を開けた。8畳ほどの和室に立っているパンツスタイルの亜希子の足元には拘束具、鞭、荒縄などの性具が散らばっている。

「な、なに、それ…」

「あなたを虐める道具よ」

「いじめる、道具って…」

「ごめん、ごめん」亜希子は顔の前で手を合わせた。

「びっくりしたでしょう、こんなの見たことないでしょ」亜希子の足元に散らばった性具から奈保子は目を離せないでいた。

「わたしにとってセックスなんて必要ないの。相手が甚振られて切ない表情を浮かべていたり、身悶えする姿を見ているだけで興奮するの。その相手が男でも女でも…あとは自分で慰めたほうがずっと気持ちいいもの…」亜希子の言葉が、いつ終わるか分からない壬生の訓示のように聞こえてくる。決定的に違うのは亜希子のそれは奈保子の身体の奥深いところにある深い芯のような部分を熱く揺さぶってくるのである。

「甚振りたい気持ちになったときはネットのその手のサイトにアクセスするの。ネットってすごいわね。結構アクセスがあるのよ。意外と女の人からのアクセスが多いの。“甚振られたい”って女が…」亜希子の頬に赤みがさしていた。

「相手の気持ちになれないとうまくいかないものなのよ。この前なんか、なおちゃんと同じように女の子のくせにストッキング好きの娘がいたの」“女の子のくせに”という言葉に奈保子の頬に赤みがさした。

「それで、その娘に会うことになったんだけど、その娘っていっても、わたしたちとそう変わらない歳だけど…会う前に秋葉原のアダルトショップに寄ってボディーストッキングを探してみたの」

(アダルトショップ…亜希子はそんなところに行くの…)奈保子は痺れた頭で考えた。

「ボディーストッキング?」

「そう、首から上と手首の先以外をぴったりと包むストッキングのことよ」

「えっ…そんなところに行って恥ずかしくないの?」

「最初は抵抗あったわ。でも慣れたわ。そこにいるの人たちはみんないやらしい気持ちでそこにいるんだから、わたしだけが特別な存在じゃないしね」

「で、あったの?ボディーストッキング」

「あったわ。薄いグレーとブラウンカラーのやつをひとつずつ買って、グレーのやつをトイレで着けてから待ち合わせの場所に行ったの」

「…」

「わたしもその娘の気持ちにならないといけないと思ったからね」奈保子は大きく息を吸った。そしてゆっくりと息を吐きながら亜希子のつぎの言葉を待った。

「そのとき、わたし、ワンピースを着ていたけど、その下はノーブラ、ノーショーツだから全身が頼りない感じがして…電車の中で変な気分になってきちゃった」亜希子がいたずらっぽく微笑んだ。

「ほら、そこに鴨居があるでしょう」襖が外された部屋の鴨居とその前には全身を映す鏡があった。

「全裸にブラウンカラーのボディーストッキングを着けたその娘を両手首を鴨居に縛りつけたの」亜希子は足元の荒縄に視線を向けた。

「その娘のあられもない姿を見ながら、わたしも変な気持ちになってきたのよ、ワンピースを脱いで自分の姿をそこの鏡に映してみると淫靡な気持ちと残虐性が頭を擡げてきたの…」

 亜希子の視線が奈保子の全身を舐めまわすように動いた。

―つづく―

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