とあるアイドルの話
「本気でアイドルを目指します」
その宣言に、私は耳を疑った。
彼のことは、詳しいとまでは言わないが、そこそこの頻度で話をしていたので、少しだけ知っていた。つもりだった。
そこまで精神的に強いわけでもなく、人と会話するのもそれほど得意そうではない。それが私の印象だった。人の悩みを聞いて何とかする、似たことをやっていた私にとって、とても彼には無謀と思えることをやろうとした直後だった。
"この世界" では、知識なく無謀なことをしてしまうことがある。それならまだしも、始めたことを正しく終わらせることすらできず、最初からうやむやにすればいいやと考える者もいる。特に、イメージもなくただ「大きなことをして人気になりたい」という動機である場合は。私には、ちょうどそのことのように聞こえていた。
とはいえ、私にも止める理由はない。それならば、特に応援する理由もない。ただ私は遠くの出来事とした。
3年が経った。
彼のグループの話が聞こえてくる。彼らのたくさんのファンに惜しまれながら、最後のライブを終えたらしい。それが彼がどこまで望んだものかどうかはわからないが、どんなものだったのかはわからないが、彼は「ちゃんと」やり終えた。
これは勝手な想像でしかないが、ここまで出来るためには、彼は相当努力したのだと思う。本当にすごいことだと思う。誰かのために何かしたい、というのは彼の中にずっとあったんだろう。
私には言える義理もないし、"遠く" にいた彼には届けるつもりは正直ないし、この話はただの私のエゴ以上の意味はないし、如何なる受け取られ方をされてもいいと思っている。
あの時、正直みくびっていたことをごめんなさい。そしてお疲れ様でした。
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