脱炭素を支えるのは人
Northvoltの破綻とその原因
スウェーデンの車載蓄電池メーカーであるNorthvolt社が連邦破産法11条の適用を申請した。関連の報道で興味深かったのが、同社が水力発電や風力発電などの環境に優しいエネルギーのみを使って生産することを優先し、技術、価格が二の次になっていたこと、水力発電がある北極圏の小さな港町シェレフテオに工場を設置したが、欧州労働者は酷寒に耐えられず仕事場に行きたがらなかった、と言うことだ。シェレフテオはストックホルムから北に飛行機で1時間、電車では9時間以上かかる様だ。同社ホームページで雪が積もった工場を見ることが出来るが確かに寒そうだ。
Northvolt
https://northvolt.com/
中国に勝てず破産した欧州のEV用電池企業ノースボルト トランプ2.0で世界に与える影響
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7849162d6e857f6c9b129b29e76400b3d916aba1
倒産の引き金となったのはBMWの発注キャンセルと言うことだが、特に労働者が寒すぎて仕事に行きたがらなかったと言うことに関心を持った。たとえ工場に一流の設備があったとしてもそれを動かす人がいなければ機能しないと言うことだろう。
ノースボルトの破綻、BMW発注キャンセルが引き金-欧州の劣勢象徴
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-25/SNH78WT0AFB400
地域の脱炭素を進めるにあたってそれを担う人材が地域で少ないと聞くが、Northvolt社の件と同様、必要な人材がいないと絵に描いた餅になると言うことだろう。
ワット・ビット連携
最近、データセンターを再エネの電気が豊富な地域に設置しようと言う動きが出て来ている。
「ワット・ビット連携」、コスト強みに構想検討へ
https://www.denkishimbun.com/sp/376618
先行しているのは石狩市で京セラコミュニケーションシステムが10月にゼロエミッションデータセンターを稼働させた。このデータセンターの運営に何人必要なのかは分からないが、工場に比べるとデータセンターで必要となる人数は少ないと思われるし、石狩市は札幌市からも車で40分程度なので必要人員が集められないと言うことは考えにくい。そう言う点ではNorthvoltのシェレフテオとは異なり、石狩市は立地条件が良いと言えるのではないか。
京セラコミュニケーションシステム、ゼロエミッション・データセンター 石狩を開所
https://www.kccs.co.jp/news/release/2024/1001/?top_pickup
グリーン人材の育成
また新しい動きとしてはカーボンニュートラル実現に向けて必要となる「グリーン人材」の育成などに関する課題解決を目指す団体としてグリーン人材開発協議会が設立された。この団体が地域のグリーン人材の育成も取り組んで行けると、より面白い動きになるのではないか。
「グリーン人材開発協議会」を7月2日に設立カーボンニュートラル実現、再エネ対応、気候変動に向けて必要となる人材の課題に対応する協議会を6社でスタート
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000119997.html
営農型太陽光発電の担い手
一方で今後の再エネ拡大のカギの一つとなる営農型太陽光発電については営農者とどうタッグを組んでいくかと言う課題がある。2050年には農業従事者が今の¼の30万人になると言う見通しがある中で、農作業を行う人がいないと営農型太陽光発電が成り立たない。儲かる農業、持続可能な農業があれば人は自然に集まるだろうが、どの様にそう言うモデルにしていくかが今後の大きなテーマになるだろう。
脱炭素と言えばそう言った理念に共感した人が自然に集まるかと言うとそうではなく、そこに儲かる仕組みがないと持続可能な事業にならない。脱炭素かつ儲かる事業であればそこに従事している人の満足度が最高度に上がっていくだろうことを考えるとそう言うものを常に目指して行きたいと感じた。