地域にとっての再エネ導入のメリットは何か
前回、地域の人が再エネ導入のメリットを考え、どの様に再エネを増やして行くかを考えていく必要があると書いた。これまで地域にとっての再エネはどう言う位置づけだったのかを考えてみたい。
2012年7月から開始されたFIT制度は太陽光発電所で発電された電気を送配電事業者や小売事業者が買い取る仕組みだ(現在は送配電事業者が買取る)。送配電事業者により買い取られた電気は卸売市場に最低価格である0.01円/kWhで投入される(特定卸供給契約により特定の発電所と電力小売の間で契約を行えば、電力小売は送配電事業者からFIT電気を購入出来る仕組みはある)。
再生可能エネルギー電気特定卸供給
https://www.yonden.co.jp/nw/electric_wholesale_supply/index.html
多くのFIT電気が卸売市場に投入されるので、発電所が位置する地域で電気が使われる訳ではない。もちろん系統に接続されればあらゆる電気が混ざるので系統に入ったFIT電気が物理的には地域で使われているだろうけれど、契約上は地域新電力なりが特定卸供給契約を締結していなければ地域で使われないことになる。ゆえに地域の方でFIT発電所は「植民地」だと言われる方もおられる。
地域にとってのメリットはないのか
ただ、電気だけを見ると地域に何の恩恵もない様に見えるが、太陽光発電所の建設の際に地域の建設会社が関わることは少なくない。また、稼働後の保守管理で草刈りを地域の方が仕事として請け負う場合もあるし、固定資産税も地域に入る。
また、20年後にFIT期間が終了した後は送配電事業者が買い取る訳ではなく、発電事業者が売り先を探さないと行けない。そうなると地域新電力などに電気を売ることも考えられる。卒FIT後に地域で活用される再エネ電源となる可能性がある。
地域での条例制定等の動き
太陽光発電が設置される自治体から見ると、設置を規制する条例が291ある(都道府県8、市町村283)。
太陽光発電設備の規制に関する条例
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/005_solar.htm
福島市では2023年に「ノーモア メガソーラー宣言」を行ったものの、宣言後も新規の計画が寄せられ、市が計画中止を求めても聞き入られないため、メガソーラーを規制する条例の制定に動いている。
福島市は「ノーモア メガソーラー宣言」をしました
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/kankyo-o/no-more-mega-solar.html
福島市がメガソーラーを条例で規制へ 禁止区域で抑止力強化
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20240822/6050027189.html
残念ながら地域の納得感が得られない中で事業を進めようとしている事業者がまだいると言うことだろう。
今年度から施行された宮城県のいわゆる森林課税についてはこの税金の対象外、つまり地域共生が出来ているということで非課税になった。これは東北電力と言う地域で信頼されている企業が進めている案件と言うことが大きかったのではないか。
宮城県、再エネ新税の運用で「非課税」第1号、33MWの風力に対し
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04429/?ST=msb
再生可能エネルギー地域共生促進税について
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/saisei/kyousei_tax.html
青森県でも地域共生条例、再エネ新税が検討されているが、こちらは宮城県と違い、新税は既設発電所も対象とすることも検討している様だ。
青森県が共生条例案、風力500kW以上・太陽光2MW以上を対象
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04329/?ST=msb
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kankyo/kankyo/reene_kyousei_yuushikisyakaigi.html
どうすればいいのか
地域では地域にとっての再エネ導入のメリットを考えて行くと共に、事業者側は地域に受け入れられる再エネとは何かをもっと考えていく必要があると言うことだろう。地域毎に状況が異なるのでこうすれば良いと単純化出来る訳ではないかと思う。地域にとっての再エネとは何か、受け入れられる再エネとはどの様なものかは引き続き考えて行く必要がある。