エネルギー需給実績を見て考える

2023年度のエネルギー需給実績(速報)が11/22に発表された。これによると最終エネルギー消費は前年度比3.0%減と言うことで、内訳をみると企業・事業所他部門は製造業の生産活動停滞などにより3.5%減(うち製造業は3.7%減)、家庭部門もテレワーク実施率の低下の影響などで4.4%減、運輸部門は0.6%減とのこと。製造業の生産活動停滞と言うことは製造業が元気がないと言うことなので喜べるものではない。

https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241122001/20241122001.html

発電電力量は前年度比1.6%減(9,854億kWh)となり、2010年度以降で最小。再エネの構成比は22.9%と前年から1%増、原子力は8.5%と前年から2.9%増となっている。これにより、再エネと原子力を合わせた非化石発電比率は、東日本大震災以降で初めて30%を超え、31.4%になった。これはまだ化石燃料に68.6%依存していると言うことで我々のエネルギーは海外の輸入燃料に依存した状況に引き続きあると言うことになる。

発電電力量が減少したのも電力消費量が企業・事業所他が2.5%減(うち製造業は2.9%減)、家庭が2.7%減と言うことで、これも製造業の生産活動停滞と言うことだと喜べない。

2030年度に再エネ比率を36-38%にすると言う目標があるが、仮に再エネが2023年度と同様に1%づつ増加するとするとあと7年で30%に到達するかどうかとなり、目標達成は難しいことになる。

今後急速に再エネが増加すればいいのではとなるが残念ながらその様な状況にはない。量的な拡大が見込めるのは再エネの中でも太陽光発電と洋上風力になる。

太陽光はどうか

太陽光発電は2012年のFITの導入により、再エネの中でも突出して導入が進んだが(構成比88%)、それがゆえに踊り場に来ている。地域の理解なく導入が進められたものがあったり、杜撰な工事、管理で地域に迷惑を掛けているものがあったりと地域で歓迎されない状況が出て来ている。

事業者にとっても適地が少なくなってきているし、系統への接続が簡単ではなく、出力抑制が増え、ケーブルの盗難の被害にも遭い、今年度から始まった説明会等の要件のルールが厳しくなっており、現在、議論されているリサイクルの義務化など事業開始時に想定していなかったことに後から対応しなければ行けないことが増えるなど事業環境は悪くなっている。

一方で追い風としては太陽光パネルの太陽光パネルの価格が下がっていること、需要家が今後再エネを益々必要としていることが挙げられる。

洋上風力はどうか

洋上風力は資材コストの増加があり、事業採算性が厳しくなってきている。例えばコスモエコパワーは採算悪化で第3ラウンドの入札を見送ったと報道されている。ようやく価格調整スキームが議論される様になり、第4ラウンドから導入される方向性になっている。

コスモ、洋上風力公募第3弾の入札見送り 採算悪化で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC098WV0Z00C24A8000000/
洋上風力促進小委員会 2024.11.21 
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/yojo_furyoku/pdf/030_01_00.pdf

ではどうすればいいのか

地域で再エネ導入への風当たりが強くなり、事業環境も厳しくなる中で脱炭素に向けて再エネの導入を増やすにはどうしたらいいのか。なかなか難しいが、それぞれが何のために脱炭素を行い、何のために再エネを導入するかと言う原点に立ち返って考えることが必要ではないか。気候変動を食い止め、限りある化石燃料を燃料以外の用途により長く使うためには燃料として化石燃料を燃やしてCO2の排出を増加させるのを止める必要があり、化石燃料の代わりに再エネを活用する必要がある。持続的な発展を行うためには再エネを活用することを第一に考えていく必要がある。

地域での乱開発を止めることは大切だが、再エネの導入も考えていく必要がある。地域で再エネの導入のメリットを考え、どの様に再エネを増やして行くかを地域の人が考えていく必要がある。ただ、これまで地域でエネルギーのことを考える機会はあまりなかったのが実情かと思う。自治体にエネルギーを考える専門の部署はなく、環境部署が再エネを扱っていることが少なくない。エネルギーの専門の部署を作ったり、産業振興として再エネを捉え、産業振興部署が扱っていくのでもいいかもしれない。

政策においては政府の審議会では事業者はオブザーバーで呼ばれることはあっても委員として入ることはあまりない。政策が導入されても事業者がその政策に沿って事業を行わなければ政策目標を達成することが出来ない。最初から事業者も当事者として審議会に入れておき、事業者への適切なインセンティブを設計して行くことが必要ではないか。




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