蓮華山麓(40)─十坪の家つづきのつづき
壁と床にはグラスウールの断熱材をいれてあったが、外壁がまだ仕上がってなかった。構造用合板に防水紙のアスファルトフェルトをはっただけ。
窓や引き戸や建具は、不用のサッシ、ガラス戸をもらってきてはめた。屋根裏部屋の明かり取り窓は自作した。
電気は養鶏舎の修理の時におやじさまが頼む工事店でやってもらい、最初の契約は10Aだった。
水道は近所で工事店を営むOさんに引いてもらった。水道管はすぐ横の未舗装道を通っていて、これはおばあさま(山小屋で私に情報をもたらした)の別荘に自費で引いた管なので、分岐をするにはおばあさまの了解が必要だった。もちろん快諾してくれたのだった。
便所は地面を掘って、その穴のうえに穴をあけた耐水コンパネを敷いて、まわりをベニヤ板で囲って屋根をかぶせた、まさに山小屋の便所だった。
風呂はない。おばあさまの別荘にもらい湯に行った。しかしおばあさまは冬には東京へ帰ってしまうので、その間どうしていたのか今では思い出せない。
とにかく寒い土地だから、家の中でも氷がはった。井上陽水の「氷の世界」で、人からもらった古いテレビ(旅館で使っていたようなの)が画期的な色になった。
畳は旅館の古畳を4枚もらってきて、畳屋さんに寸法を直してもらって敷いた。
こうした不用品を使い回して最小限の出費でできた家は、100万まではきっちり勘定していたが、その後住みながら作り続けていくうちに生活費と建築費がごちゃごちゃになり、正確な額がわからなくなってしまった。
でもまあ、200万まではいってない。150万くらいのところだ。新車買うより安いのだった。