鉄道会社からの転職を改めて考える
こんにちは。
今日は鉄道会社からの転職について改めて考えてみようと思います。
私自身、鉄道会社から転職をして2年ほどですが、コロナ禍を経てまた当時と状況も変わってきている部分もあるかなと感じるので、改めて今思うことを言葉にしてみます。
転職は成功か失敗か
結論、転職をして非常に良かったと個人的には考えています。給与については当初かなり下がりましたが、今では現業での手当分ほどの差分になっており、泊まり勤務の負担や、リモートワークが可能になったことを考えると待遇には不満はありません。
今になってより思うことはいくつかあります。
①鉄道会社の給与はそれなりに高待遇
賞与も込みですが、特殊な業界であることも相まって手当分などを加味すると、
仕事量に対しては十分な額の給料であるように感じています。
更に、生活圏内が自社線であれば移動がほぼ無料もしくは割安で出来るというのも地味に大きなポイントであったと実感しました。ただ、これが鉄道会社の辞めづらさに繋がっている大きな原因であるとも感じています。(会社としてはそれなりの給料を支払って辞めないようにするのは正しい戦略なのですが)
②汎用的なスキルを身につけることは困難
今更ですが、改めて非常に閉鎖的な社会であったと時を経るごとに痛感しています。鉄道というシステム自体を担う仕事であるので、自社商品を営業するという感覚も、原価がいくらで自身の1日の売り上げがいくらなのか、損益分岐なども分からないまま日々決められた業務を全うすれば決まった給料が出る環境では、社会人として一般的に持つべき感覚を養うことも中々難しいのが現実ではないでしょうか。
③時計の針の速度が世間と著しく異なっている
感覚的な話ですが、これも非常に感じるところです。鉄道会社の3年は世間の1年、下手したら半年くらいの感覚なのではないかと思います。運転士になるためには1年近く養成期間を経ますが、これも20代でどんどんキャリアを磨きたい感覚の人からすれば途方もない期間でしょう。早ければ数年でマネジメントの立場に、というスピード感覚の会社からすれば、現業採用であれば10年近くは基本的に横並び、というのは信じられない感覚かもしれません。採用HPを見た時に、10年選手もしくはそれ以上の社歴の社員紹介を見ても、今の学生からすればその歳になる頃には変化が大きすぎて参考にならない、と映るかもしれませんが、そもそも入社2〜3年目の若手の紹介がないのは、それくらいの年次にならないと特徴的なキャリアを歩み始められないことの裏返しでもあるのです。
決断するなら早いほうが良い
自身が転職を志しているときも現実の壁にはぶつかりましたが、なんとか安定して働けるようになってきた今は冷静に物事を見れるようになってきました。
残酷な話ですが、鉄道会社に入社をするのであれば、一生勤め上げる覚悟を持つか、そうでなければ1日でも早く転職したほうが良いと考えています。
ChatGPTなど生成AIの登場などもそうですが、社会の変化は非常に目まぐるしいです。私が今いる会社でも、取引先でも、コロナ以前の話というのはもう比較材料に挙がることはありません。オンライン化や人々の常識含めコロナ禍前後で変化が大きすぎるためです。
そんな中でも、鉄道会社で日常の教訓となっているのは数十年単位での過去の事故の教訓であったり、脈々と引き継がれてきた業務の伝承です。それでも成り立つ時間の流れ方であるということは、安定を求める人には良いかもしれませんが、将来ビジネスに携わりたいと考えている人にとっては大きな機会損失であると感じます。
勿論鉄道会社も安定的な業務を抱えているのだからそうした原資を強みに社員チャレンジを推奨する環境を目指しているのだと思いますが、如何せん取り組みが形式的なものになっているのは、そもそも生え抜き社員はチャレンジしようにも「稼ぐ」という言葉の本質を理解し得ない環境で育っていることや、硬直した給与体系からチャレンジへのインセンティブが働きにくいことなどが原因なのではないでしょうか。
鉄道会社の主な収益源がもうしばらくは運輸の収入であるのであれば、運輸業とは個人の優劣で差がつく仕事ではありません。とても優秀な運転士・車掌が仮にペアを組んだとして、電車が定められたダイヤよりも大幅に早く目的地に着くわけではありませんし、仮に新人が遅れて運行させたとしても、乗客が支払う運賃は一定です。つまり、会社からの目線で言えば、運賃収入を得るためのコストとしての見え方は目に見えない「技量」によってそう変わるものではないということです。
これでは社員が自身の技量を高めるインセンティブが働きようがないという点で恐ろしいことだと思いますが、鉄道会社が所属する社員の技量で売り上げを立てているわけではなく、大きく鉄道というインフラを止めないことで収益を確保していることを考えれば、会社の仕組みの一部としての働きを受け入れることは仕方ないのかもしれません。
しかし、その働き方を受け入れ続けることで、市場で役立てられるスキルが一向に身につかないまま気がついたら未経験で他業種に挑戦できる年齢ではなくなっている…。そんな悩みを持つ方は実際にそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか。
だからこそ、早めに覚悟を決めた方が良いというのが私の結論です。
中にいて変えられることも沢山あるとは思うのですが、やはり中にいるままでは時の流れ方が外の世界と違いすぎることにどうしたって気づくのは困難だろうと感じているからです。
鉄道会社が本当のところで変革していくためには、自社と世間の時計の針の進み方の違いに自覚することが必要不可欠なのではないでしょうか。