【毎週ショートショートnote】 最後のマスカラ
林檎さんはイケメンだ。
女の子だって知っても、私は林檎さんが好き。
何度もフラれても。
だから私は。
林檎さんをお化粧することにした。
「理香ちゃんは、いつも唐突だね」
「そうですか?」
「私に、お化粧させてください! なんて頼む子、いないからさ」
「林檎さんの価値を見誤ってますね」
「なにそれ」
林檎さんは、ふふっと笑う。
やっぱりカッコいい。
お化粧センスは、あまりないけど。
きれいに、したい。
「できましたよ」
「どれどれ……おぅ」
林檎さんは鏡を見て、驚いている。
私も、びっくりだ。
こんなに、きれいになるなんて。
林檎さんは背が高いから、まるでスーパーモデルみたい。
「すごくいい。このまつ毛が太いのって、どうやったの?」
「マスカラです。まつ毛にボリュームが出るんですよ」
「へえ…。すごいなあ、これ」
これから、私と林檎さんは、お祭りに行く。
犬先輩は、さそってない。
林檎さんをひとりじめするんだ。
私は知らなかった。
お化粧が恋のおわりになるなんて。