自作メタフィクション自演 第1話 私キャラメイク
あなたは、キャラメイクをしなければならない。
「は…?」
キャラメイクとは、ゲームなどにおいて、自身の分身となるキャラクターを作成することである。
「えと…」
数多くのパーツから、気に入るものを選び、キャラクターを作成することは、愛着や世界への没入感を深めることに一役かっている。
「ちょっと待って」
さあ、きみだけのキャラクターを創造しようではないか!
「だから、待てって!」
なんだ。騒がしいな。
「いきなりキャラクターメイキングってなに! というか、あんただれだ!」
私は地の文。ナレーションだよ。
真昼の夜道で、絶賛つぶやき小説の語り手をしてるのさ。
「地の文だったら、こんなふうに会話はできないでしょうが!」
二人称小説だから、できまーす。
「二人称小説って、そんなのだっけ?」
うん。
「嘘つけや!」
激昂しているあなたは、喋々(ちょうちょう)という、小説家を目指しているだけの人間である。よく蝶々と混同される。
あなたが住むのは、七階建てのアパートの三階だ。一人で住むには、もったいないほどの広さの部屋で、あなたは一人で叫んでいる。
「急にまじめに解説するな!」
解説? 描写と言っていただきたいなあ、はっはっは。
「うわ、むかつくっ! だいたい、私のことを知ってるお前はだれなんだ!」
喋々(ちょうちょう)だが?
「は?」
あ、そうそう。この小説、どうあがいてもメタフィクションだから。がんばれ。
「はあああああ!? いや、メタフィクションってなに?」
簡単に言うと、登場人物が、この世界が物語であることをわかってて、登場人物であることもわかってて、ってな感じがストーリーの中盤あたりで明かされて、人気が急転直下で落ちていくっていうのが、私の持論だ。
わかりやすいように、私のつぶやきのなかから、メタフィクションに関するつぶやきをおいておこう。
えーと。かいけつゾロリがいいかな。
あれ、どれだったっけ?
ええい、面倒だ。全部のせるから、探せ!
かいけつゾロリのつぶやきをすべて、おいてきた!
「長っ! これは、読者減るだろうが!」
メタ発言ありがとう。
「うわ、のせられた。メタ発言ってなんだよ」
読者を意識したようなセリフを物語の登場人物が話すことかな。
「なんか、メタフィクションって、ストーリーへの没入感減らねえか?」
うん。だからね。最初からメタフィクションって言えば、問題ないと思うんだよ。
「おい、自信満々に言うなや。さっき人気がなくなるって、言ってただろうが」
や、大丈夫。
物語の中盤で、そーゆーことを明かすからいけないんだよ。最初からメタフィクションにすれば、ほら…問題ないね。
「おおありだわ。私の人生返せや」
あれ? きみの人生はまだ設定してないけど?
「小説家になりたいだけわかってりゃ、あとはどうでもいいよ」
ふうん。そうかい。
上の記事をベースにしたキャラクターなわけだな。
「勝手に人のキャラつくんなや」
えー? だって、きみのキャラは、私にもよくわかってないって設定なんだよ。困ったことに。
「は? なんでわかんねえのよ」
つぶやき小説のね、真昼の夜道の『あなた』と、のんびりちゃんの『私』が混ざった感じになっちゃってさ。
まー、つまり。ケイオス。
「カオスをカッコつけて発音するな!」
「まあまあ、落ち着こうよ」
あなたは後ろをふりむいた。そこにはあなたそっくりの白い影でできた人がいた。
「故意に登場人物を増やすな!」
「だめだよ、怒ったら。ほらほら、落ち着いて、ね?」
わー、のんびりちゃんだ。
ねえ、のんびりちゃんって、どういう設定なの? つぶやき小説では、イマジナリーフレンドだったけど。
「んー、幽霊みたいな感じかなあ。でも、物とか触れるし、幽霊なのかなあ? 私の設定、イマジナリーフレンドから変わってないみたいだから、たぶん、これ喋々(ちょうちょう)ちゃんしか私が見えなくて、ひとりごとを喋ってるんじゃない?」
「私はひとりごとなど、しゃべってない!」
ごめん。ここにいるの全員喋々(ちょうちょう)みたいなもんだからさ。ひとりごとで正解だよ。キャラクターメイキングがあるゲームの実況も、ひとりごとみたいなもんじゃん? うん、だから、あきらめろ!
「そんなんヤダ!」
「大丈夫! のんびりちゃんがいるよ!」
私もいるぞ!
「不安しかないわ!」
インターホンが鳴る。
だれかが来たようだ。
あなたは、渋々、出ることにした。
「はい」
『すみません。上の階の鎌犬(かまいぬ)です。ちょっとうるさいので、静かにしてもらってもいいですか』
「あ…、すみません気をつけます」
『じゃあ、失礼します』
鎌犬(かまいぬ)。
それは、あなたが書く毎週ショートショートnoteの登場人物だった。
「多い! 加減しろ!」
「林檎ちゃん出てくるの楽しみだねえ」
私は理香ちゃん派だ。
「ちょっとのんびりちゃん、黙っててくれないかな…。あと、地の文はしれっと推しを言わなくていいから。つまり、小説に書いたキャラクターたちが、ちょっとずつ出てくるわけね」
え? 次の話で全員登場するけど?
「は?」
面倒だから、全員同じマンションに住んでることにしたわ。
「はあああああ!?」
次回、ひっこし=ソバ! 気がむいたらつづく!