【毎週ショートショートnote】 未来断捨離
今日は孫が来ないので、断捨離をすることにした。
「これと、これ。あと、これも、あの子は興味なかったわね」
「なにしてるんだ?」
来た。
ろくに片付けをしない夫が、来た。
「断捨離してるのよ。邪魔しないで」
「え…前もしてなかったか?」
「物が多いから、ちょっとずつしか、進まないのよ。邪魔だから、どっか行って」
「まだ、いるものも、あるかもしれないじゃないか」
「年齢を考えなさい。あなたも断捨離しないなら、私がするわよ」
にらみつけると、夫はちぢみあがって逃げていった。
まったく。
私は未来のために、断捨離してるのだ。
そう。死んだら物は持っていけない。
掃除をするのは、孫を生んだ一人娘の仕事になる。
それだけは、勘弁だわ。
…ふう、だいたい片づいたわね。
夫の様子でも見に行こうかしら。
きっと、なにもしてないわね。
「ただいまー」
夫の声だ。
声の方向は、夫の部屋からではない。
私は玄関へむかう。
「今日の晩ごはんは、私が作るよ」
あら、気がきくじゃない。