【毎週ショートショートnote】ビジュアル系男子に教えられた琴
林檎(りんご)ちゃんは、見た目だけなら、ビジュアル系男子だ。
プラチナブロンドの短い髪に、耳にピアス。
僕より大柄で、一番背の高い生徒が履くズボンの丈は足首より上だ。
そんな林檎ちゃんは、僕に構ってくる。
「鎌犬(かまいぬ)ー!」
「しーっ! 静かにして!」
「えー、なんでだよ」
なんで後ろから抱き着くの、もう。
女の子だって、意識する。
時刻は昼休み。
僕の弁当が目当てなのはわかるけど、くっつきすぎだ。
「周囲の目が気になりすぎるから、せめて僕を呼ぶときは、静かに呼んでください」
「えー、なんでだよ。つまんないじゃん」
なにを言うの。
「せめて、私の名前をちゃんづけで、呼んでくれたら考えるかなー」
「わかった」
そこまでいうなら、睨みつけてやろう。
「林檎(りんご)ちゃん、やめてください」
この空白の時間はなに?
「お前、めちゃくちゃ可愛かったんだな」
「ええ!? なにそれ、どういう意味なの!」
「そのままの意味だけど」
なんの琴、いや、なんの事よ。