(1人リレー小説 全2巡) 甘いもの食べに行こう (2巡目)
いっしょに昼飯を食べないかと弁当を二つ持ってやってくる男子をフったら、違う男子に必ず告白される。
そんな噂を聞いた私は、早速、その男子の特定をした。
鎌犬(かまいぬ)というその男子は、本当に弁当を二つ作って来ていた。
そいつが何度もフられ、何度も弁当を二つ食べるさまを遠くから見ていた。
そして、気づいたことがあったのだ。
弁当がうまそうなことに。
「どうよ。はじめて来たスイーツバイキングの感想は」
「女の子多いね」
「私も女の子だが」
「ああ、はい、うん」
鎌犬は落ち着きなく、あたりを見回している。
店内は可愛い女の子たちが声をあげながら、ケーキを選んでいた。
どの可愛い子が鎌犬のお目がねにかなうか気になる。
「なあ、どの子が好み?」
「なんてこと聞くの」
「男同士の会話なら、よくあるだろ」
「きみは女の子でしょ。このはなしはおしまい!」
「えー、なんで」
「とりあえず、ケーキ持ってくるから待ってて!」
鎌犬は机を手でバンっと音をたてて立ち上がり、ケーキバイキングへ向かう。
暇になった私は、いきなり知らない子に声をかけられる。
「ねえ、私たちといっしょにケーキ食べない?」
「ごめん、友達と来てるから」
「その友達といっしょでもいいから、ねえ」
「ごめんね。二人きりですごしたいから」
女の子たちは、ダメだったーと大きな声で友達に報告しながら、別の席にいた子たちと合流した。
入れ替わるように鎌犬が帰って来た。
「はい、これ。嫌いなのあったら交換してあげるから」
「ん、ありがと」
甘いものに好き嫌いはないが、鎌犬は気づかいができるのかもしれない。
「さっき、女の子たちになにをはなしかけられたの?」
「いっしょにケーキ食べないかって言われたけど、断ったわ」
「なんで?」
「鎌犬に集中したいし」
鎌犬は大きく咳き込む。ケーキをつまらせたのだろう。
「紅茶とってくるわ」
「いいよ。ぼくが行く」
「さっきケーキとってきてくれたろ。少し休んどけよ」
飲み物を取って帰ると、鎌犬は私の分のケーキもすべてたいらげていた。
「一人でいたのに、だれにも話しかけられなかった」
「そりゃ、私が二人きりですごしたいって言ったから、気を利かせたんだろ」
「それでも、知らない子は話しかけてくるでしょ! それもなかった!」
「だからって、ヤケ食いすんなよ」
「きみのぶんも、取ってきます」
鎌犬は立ち上がると、のろのろとケーキを取りに行った。
でも、私のぶんをとってくるのは、優しいなと思った。