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謎は謎のまま〜『鈍色幻視行』を読んで〜

恩田陸さんの『鈍色幻視行』を読みました!どっしり重厚でドイツパンを食べたような満腹感でした(何その感想)。ネタバレ結構あります。この作品の読書会とかあったら参加したいな〜。誰かと語り合いたいです。

内容

謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。

撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――

amazonより

参加の動機

これが全くわからない。クルーズ旅行ってお金と時間(2週間)がかかるもの。参加者みんなある程度裕福だけど、そんなに時間ある?第一線は退いたものの、なんだかんだ仕事しているっぽいし。梢や真鍋姉妹はフリーランスだから休み=収入減だと思うけど。

一応は角替夫妻と武井京太郎が言い始めたことだけど、それなら3人でいいんじゃない。事件のことを話したいなら一ファンである真鍋姉妹や親戚の雅春にまで声をかける意味って?そもそも船旅にするのがわからない。話だけなら喫茶店でも温泉に何泊かでもできるはず。(それこそI半島って伊豆のこと?)

でもって一番怖いのは、P60に「あたしたちがいなくても、今回みんなは集まったわけよね。」と言った梢に対して雅春の表情が何かの核心をついたように感じたこと。

え、もしかしたら本来の目的は違うの?前妻の死の真相知りたいなら、3回目の関係者がいないのは不思議。彼が参加者に内緒でボイスレコーダーで録音したことも。

熱量のアンバランスさ

主人公・梢を見ているとこんな大それたこと(クルーズ旅行しながらインタビューするとか)するのに、発表媒体は決まってないし『夜〜』に対する思いれみたいなものが低いように思う。印象的なエピソードもないし。たしかにガツガツ・ギラギラしたタイプではないけど腑に落ちない。

夫の雅春の方がよっぽど思い入れがあるように感じてしまう。

あと『夜〜』は母がテーマになっているのに、梢の親の話は一切なし。出てくるのは前夫の義母ばかり。何だか避けているようにすら感じる。

飯合梓の失踪

梓が住んでいたとされるI半島。何をもって「住んでいた」って言えるのか。出版社や編集者に伝えていた住所なのか。本名もわからないのに何でそこだけはっきりしてるの?

もしかしたら噂の域を出ない話をみんながまことしやかに話しているだけなんじゃないの?ただ、彼女が所有していた家で火事があり身元不明の遺体があった際「飯合梓さん死亡か?」という報道がされていたそう。

家or土地の登記簿くらい調べてよって思うけど。恩田陸さん宅建の資格持ってるそうだからこのくらい矛盾はわかってたように感じる。だからなんかまた仕込んでるでしょ?って思っちゃう。

彼女の所有している家が火事にあった際に死亡した人(身元判明している人)のことをなんで調べないの?交友関係でもしかしたら飯合梓のことわかったかもしれないのに。

何回も読む本

小説って一回読んだら終わりだけど、これ何回も読むやつだな。『ユージニア』みたいに。(ユージニアは読むたびに怖くなった)読んだところでわからないだろうけどね。謎を謎のまま楽しむってもやもやするけど、ワクワクもするんだよね。

まとめ

やっぱり自分が貧乏性のためクルーズ旅行=高い、っていう印象が抜けきれないです。どうせ行くなら完全プライベートで、昔の悲しい話を語り合うようなことなんてしたくない!っていう思い込みが抜けない(汗)

コロナでクルーズ旅行の印象が良くなくたったけど、一回くらい(2泊3日くらい?)は体験してみたいなって思いました。海に出ると連絡も満足にとれない(衛星通信のみ)ネットもできない環境で本読みながら(読書室があるらしい)ぼーっとするのもいいな。

とりあえず、来月『夜果つるところ』を読みます!

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