
高所恐怖症
ごめん登山はパス。
あーごめんスカイツリーもパスで。
え?あいつタワマンの最上階に住んでるの?友達やめよ。
んー観覧車?念ため止めとく。
バンジージャンプ?絶対やらない。
うーん、飛行機もダメなんだよねぇ。
あれ。
言って無かったっけ?
俺って重度の高所恐怖症なんだ。
まぁ飛行機に乗れなくてもこうやって船で海外にはいけるからいいじゃん。
でも大きい船って案外背が高いからビビったよ。
風が気持ちいいね。
え?高いところにいったらどうなるのかって?
死ぬらしいよ。
いや、ウソじゃないよ。
君にそんなウソつかないよ。
試したことはないから証明は難しいけどね。
いやいや 死んでから本当だってわかっても遅いじゃん。
俺だってまだまだ死にたくないし。
なんでそんなに死んで欲しいんだよ。
ん?じゃあなんで死ぬってわかるのかって?
悪魔がそう言ってたから。
あーその顔は信じてないね。
まぁそら信じないよね。
でも本当だよ。
願いを叶える代わりに高所恐怖症の呪いを掛けられたんだ。
悪魔はこう言ってたよ。
「ある高さを超えたら死ぬからね。でもその高さはヒ・ミ・ツ」
だってさ。
笑っちゃうよね。
でも本当に願いを叶えてくれたから たぶん呪いも本当だと思う。
この呪いってさ、死ぬ高さがわからないから怖いんだよねぇ。
だから高所恐怖症なわけよ。
ただのビビリとはわけが違うんだよ、生き死にが掛かった切実な問題なわけ。
これからもデートで高いところは無しね。
ん?願い事はなんだったのかって?
ハハハそれはヒミツだよ。
ヒ・ミ・ツ。
怒るなって。
可愛い顔が悪魔みたいになってるぞ。
わかったわかった言うから叩くなって。
恥ずかしいからあんまり言いたくないけど…。
それはね…運命の人に…出会えます…ようにって…。
ぐっ…。
胸が…苦し…い…。
お、おまえは…ッ!
そ、そんな…。
どうして…。
「フフフ。やっと死んだか」
女の顔がみるみる悪魔のそれに変わる。
「高さばかりに気を取られ、水深には気が付かなかったな」