鴨居

好きだと言ってくれるから、という軽いノリで付き合った時もありました。暇だったのかもしれません。寂しかった訳ではないです。退屈していたのでしょう。若かったのです。

同じバイトで知り合った相手との、初デートのことでした。待ち合わせから、違和感がありました。キャラクターのぬいぐるみが二つもついた大きなショルダーバッグ。人通りの多い場所でうろうろと待っている立ち姿。

気を取り直して、当時まだ新しかったショッピングセンターに行きました。そこでも盛り上がる訳でもなく、入ったカフェで、彼はスプーンでカフェラテの泡を丁寧に丁寧にすくって食べていました。なんか違うと思いました。聞けばそういう空間が初めてだったそうです。カフェのキャンドルが綺麗だったことがその日の収穫でした。

付き合い始めた以上、付き合う責任があったのかもしれませんが、わたしは教育する気はありませんでした。年上でしたが「姉のような恋人」になりたいなんて微塵も思っていませんでした。

わたしと別れてすぐ、同じバイト先の別の女の子と付き合いだした彼。彼としても「恋に恋するお年頃」だったのかもしれません。ちょっと面倒見きれませんでした。

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