奥沢

ちょっと時間があったので、奥沢の神社に寄りました。道路沿いにある神社です。晴れた日にしか行ったことがなかったけど、その日は雨でした。
鳥居をくぐって見渡すと、境内には一人二人の女性しかいませんでした。各々が、一人で来ていました。そもそもそんなに大きな神社ではないのです。しかも、雨の昼下がりだし。
そこで気づきました。境内一面に、木から実のような、葉っぱのようなものが落ちて、びっしりと、黄緑色の絨毯ができていました。ちょっと虫のようにも見えるそのもじゃもじゃで埋め尽くされて、石畳は見えませんでした。その中を、お社に向かって歩きました。静かだから雨の音が大きく聞こえるのか。雨の音で他の音が掻き消されるのか。
社殿は止まっているのに、雨は屋根をつたってとめどなく流れていました。静と動なのか、過去と現在なのか。大きなものと小さなものだったのかもしれません。黒と白にも見えました。全く逆のベクトルの二つが合わさるその場所で、私は一人でした。

前は一人でいる時間が圧倒的に長かったけど、今は、一人になれる時間が貴重に思えるようになりました。それでもいつも、神様の前に立つときは一人です。祈りの前で、私が私にならざるをえなくなるのです。
その日も、私が濃くなる時間を過ごしました。ただでさえ雨だっていうのに。

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