【MTG レガシー】 「プレインズウォーカー、父になる」その1/白単エメリアコントロール 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.完全に、浮き足立っていました。予定日までは、まだ10日以上もあったはずなのに。
18時30分、急に陣痛が始まり、病院に電話で相談。20時には分娩室に入って、20時25分。彼女は元気に産声をあげました。早いし、速い。バーンデッキ並みの「速攻」です。
ともあれ、ようこそ。まだ名前の無い赤ちゃん。1人目のときは予定日から3日も過ぎて産まれたので、油断しきっていましたねー。家に迎え入れる準備がまだまだ出来てねぇ。
新たに子供が生まれるとき。主人公は赤ちゃんとそのお母さん……とはいえ、父親にできることも少しながら、あります。
パートナーを速やかに安全に、病院へつれていくこと。痛がる彼女を気遣いつつ、助産師さんやお医者さんに大まかな状況変化を申し送ること。荷物を運び……長い廊下で、車イスを押すこと。
分娩室での立ち会いが許可されるかは病院によると思いますが、書類の束に次々と署名するのも大事な役目です。
うちの場合は、上の子(3歳)のケアが最重要の課題。病院のようすが母子ともに落ちついたら、トンボ返りして、寝かしつけ。実家のサポートを得られて、幸運でした。ほんのわずかな時間でも代わりに見てもらえれば、負担と動きの自由度が全く違ってきます。
次の日は、各所に電話して、報告と予定の変更。それから、オムツなどの物資の買い出しと、赤ちゃんが入る部屋の掃除に、洗濯&洗濯&洗濯……。
ふぅ。フル回転でそんな作業をこなしていると、急にぽっかり、空白のような時間もできるもので、この記事はそんなタイミングを選んで書いています。まだ赤ちゃんたちは、病院です……長女のために牛乳を、自分のためにお茶を用意し、テーブルにひじをついて、さまざまな考えにふけっていました。
まず、名前をどうするか? 奇襲的な素早さで生まれてきたので、候補を選びきれていません。ふむ……。それに、これでうちの子は2人とも女子なのですよね……となると。将来、「護身用のデッキ」には何がふさわしいかも決めておきたいところですね!?
いや、だって、ほら。「放課後マジック部」の如く、いつか学校で厄介事に巻き込まれ、「こうなったらマジックで白黒つけるよ! フォーマットはもちろんレガシーで!」などとケンカをふっかけられたとき、手ぶらでは困るでしょ!?
ただし、高額なデッキだと管理や防犯上の問題があり、それはそれで危険です。
許容範囲は、1枚が数百円から、高くても二千円程度まで。そのくらいの予算規模で「レガシーで充分に戦える“護身用デッキ”を考えよう」というのがこの企画の趣旨。
1人のプレインズウォーカーとして、まだこの世の“初心者”である子供たちのためにッ。
扱いやすさも考えれば、単色のデッキを中心に選ぶのが望ましいでしょうか。その初回には「白」。それも「護身」にふさわしく、守りのデッキを選びたいと思っていました。
レガシーにしては、遅く、重く、鈍い……ただし、このデッキの武器は、大盾のような重厚さ。ライフと盤面を奪い合うデッキに対し、“鉄壁”。「白単エメリアコントロール」。デッキリストは、こう!
2.最新カードで武装はしていますが、このデッキ、処女飛行は古いです。2009年の時点にさかのぼっても、リストを見つけることができたのですから。ただし、心臓となるカードは今も昔も変わりません。《砂の殉教者》。「コールドスナップ」出身のコモンカードです。
ライフを得るだけのカードは、弱い。これは「マジック」を少しでも知っている方になら、常識に近いセオリー。しかし「2ターン目に10点前後を軽々と得られる」と書いてあれば、話はまるで変わってきます。たとえば、このカードと組み合わせればいいのです。
このデッキは遅く、鈍いと書きましたが、上の2枚により、2ターン目から飛行、絆魂、6/6で殴り始めるという数字の暴力としかいえない速攻パターンも完備しています。
そして「エメリアコントロール」の真価は、“継戦能力”……これらの凶悪1マナクリーチャーを単発で使い潰すのではなく、さまざまな手段で執拗に“使い回す”ことができる点です。
たとえば、デッキ名にもなっている《空の遺跡、エメリア》。もし《平地》が並んで、「ゼンディカー」の「女神」の名を冠した《遺跡》が目覚めれば? おおむね、勝ちです。
《砂の殉教者》を毎ターン戦場に戻され、10点ずつライフを得られて……それとも、やっとで倒した《セラの高位僧》がしつこく舞い戻って……高いコントロール力に盤面を掌握された上で、巨大なライフという壁を倒しきれる「フェア」デッキは少ないはず。
《空の遺跡、エメリア》ほど難しい条件を達成しなくても、こういうカードたちでも簡単に使い回しが可能。
《戦隊の鷹》もデッキに合ったカードです。白単なのに爆発的に手札を増やすことができ、《砂の殉教者》との相性が最高。後続が絶えない飛行ブロッカーとしても運用できます。
環境に最適化されて、無駄のない鋭利なデッキほど、餌食です。いったん切っ先を鈍らせれば、ローギアのままで、淡々と着実に圧し潰していくのが「エメリアコントロール」。“遅さ”=“パワー”です。
加えて、土地破壊戦術に長けており、膠着した盤面を維持するのも得意。
今回のリストでは予算の都合もあり、レガシー環境の象徴である《不毛の大地》ではなく、《幽霊街》+《廃墟の地》を採用しています。今回のリストを見たとき、「なんか、レガシーっぽくないな」と感じる理由の1つですね……。
白状すると、「エメリアコントロール」のレガシー用のリストは古いものしか見つからず、最新版に調製するため、モダン環境の「ホワイトサンド」を参考にさせてもらいました。奮発して、すぐに改良できるポイントは、まずここです。
とはいえ、《幽霊街》と《廃墟の地》にも、それぞれ《不毛の大地》に劣らない利点が。
まず、《幽霊街》は代替の土地をサーチさせてしまう代わりに、その基本土地をお構いなしに砕くことが可能。レガシー環境のデッキには基本土地の枚数を最小限に絞りきったものが多く、ごく簡単に枯らせることができるはず。
特にこの「エメリアコントロール」は、土地カードの使い回しもできるので、あとはもう《露天鉱床》の連打です。
《廃墟の地》は起動に2マナも必要で、遅いカードではありますが、相手の土地を割ったあと、自分も《平地》を持ってこられて土地を伸ばせるのが吉。長期戦はこちらの土俵だし、《空の遺跡、エメリア》の条件を満たしやすくなります。
3.盤面の競り合いでは、無類の制圧力を誇るのが「エメリアコントロール」。とにかく負けにくく、粘り強い、良いデッキです。
デッキ内で特に高価なのは《歩行バリスタ》《セラの高位僧》《セラの模範》の3種類のクリーチャー。
初回ということもあり、ちょっと気合いをいれて、値のはるカードを使いすぎたかな……と冷や冷やしていたのですが、それぞれが1600円、1300円、1600円ほどでした。これくらいなら……防犯ブザー代わりとして、許容範囲でしょうか?
この記事は、これまでの他の記事と変わらず、初心者や復帰勢の方をレガシーの世界に誘うために書かれています。こういうデッキでも充分に戦えますよ、と言うことで誰かの背を押し、自分のデッキを組んでもらうために。
それから同じ親であるプレインズウォーカーのみなさんに。これから……いずれ、親になるみなさんに、自己紹介と挨拶をするために。
お子さんたちに、実際に護身用のレガシーデッキが必要となるかは……まあ、進学先の校風やら周囲の環境にもよるとは思いますが。
親になったあと、趣味とどう向き合っていくか。なかなかに難しい課題ではないかと思います。条件は様々でも、子育てにはお金も時間も体力も、やっぱり必要になってきますから。
子どもたちが大きくなるまでは、「きっぱりと手を引く」。これも勇気ある、強い決断だと思います。
しかし……できることなら、少しだけでも、繋がりを残しておくのも良いのではと、個人的には考えます。
親になったからといって、羽化するように突然、別の存在に変われるはずはありません……無理に偽って、そうしようと頑なになり過ぎるのは、不幸です。自分の人生を生きていない親のもとで育つのは、きっと子供にとっても、息が苦しいことでしょう。
そういう意味で、「マジック」というのは恵まれた趣味のひとつです。今までのように、精力的に大会に出ることは難しくても、自由に高額カードを買いにくくなっても、工夫しだいで楽しみ続けることはできます。
現にほら、こうして2人目の子供が生まれたあとも、空白の時間にお茶を飲みながら、新しいデッキを考えることだって出来ています。これも、れっきとした「マジック」で「レガシー」の一部。僕はそう信じます。
そのために改めて……「うり」さんが運営されている「Study Hall of M:TG」内の、1人回し用WEBアプリケーション「MTG Tools」をお勧めさせてください。
爽快な操作感で、イラストも版も実際のデッキに雰囲気を合わせて選べるので、ちょっとした時間を活かして愛機の調整用にも、新デッキの試運転用にも。
初心者や復帰勢の方はもちろん、親であり、プレインズウォーカーでもあるみなさんにもぜひ。
親=プレインズウォーカーの方に、特に1人回しアプリを勧めることには理由があります。
親になると、さまざまな意味で時間が得られにくい、という以上に……子供の前で、実物の紙を広げてデッキの調整をするのは、“大変に”危険な行為だからです。
興味を持たないワケがないやん、こんな面白そうなん……。
4.上の「エメリアコントロール」は、あまりお金をかけずに作れるレガシーのデッキとして紹介したかった作品です。しかし、大きな欠点もあります。
白単色の宿命として……このデッキ、対戦相手の手札に全く触れません。速度差の問題もあり、メインボードではコンボデッキに対し、ほぼ無力です。メイン1本目は落とすことが前提で、サイドボードから相手のデッキに応じたヘイトパーマネントを投入する必要があります。
今回のリストではサンプルとして、これらのカードを用意してみたのですが……。
え? 読みが外れて、サイドボードに適切な対策カードを用意できなかったときは??? ……(ニッコリ)。
環境の読みとサイドボードの練り込みが、他のデッキよりもさらに重要になってくるでしょう。また、白なのに墓地を全力で利用するデッキなので、対策カードで封じられると中途半端な、遅いミッドレンジでしか無くなるので、要注意。
呪文戦での不利を補うため、手札を覗ける手段として、次のカード辺りを試す方法もあります。2マナでちょっと取り回しは良くなさそうかな……《セラの模範》で使い回しが効くのは買いですけどね。
ふぅ。そろそろ、マグカップのお茶も無くなります。今回の記事はこの辺りで。
赤ちゃんたちは、明日、家に帰ってきます。また忙しくなりますね。それまでは、洗濯&洗濯&洗濯。そして、長女の寝かしつけ……。
あ、そうそう。この記事を書いているとき、牛乳飲んでた長女がタブレットを覗きこんできて、「わたし、大きくなったら、ネコデッキを作りたいわ!」と言ってきました。
オッケー。わかった。約束する。そのときは、レガシー環境でも通用する、史上最強の「ネコデッキ」をいっしょに作ろう。
いつか……キミがこの約束を覚えていてくれたら、な。それでは、また。
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