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【MTG レガシー】 「プレインズウォーカー、父になる」その4/赤単フェニックス 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.さて。こまりましたね。初心者や復帰勢、それから親であるプレインズウォーカーの方に安価で組みやすいデッキを紹介するために、この記事は書かれています。
「赤」には始めから……「マジック:ザ・ギャザリング、在れ」とリチャード・ガーフィールドが言った黎明のころから、このデッキがあります。リストはこう!
「赤単バーン」。このリストはMTG日本公式、岩SHOWさんの名物コラム「デイリー・デッキ」で紹介されていたものを参考にさせてもらいました。……簡潔で美しい。デッキの全てが、対戦相手を焼き尽くすことに特化されています。
野暮を承知で解説すると、プレイヤーを直接狙える火力呪文群に、低コストの「速攻」クリーチャーを組み合わせ、速やかに20点のライフを焼ききるのが「赤単バーン」。あらゆる意味で「電光」のデッキです。
デッキを象徴するのは「始めの5枚」=「ブーンズ(祈り)」の一角にして、今もなお、最強の火力呪文《稲妻》。
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もっともプレイされた回数が
多いカードかもしれません
「マジック」のみならず、全てのトレーディング・カードゲームにおける「火力」という概念の祖。わずか1マナで、あらゆる対象に3点ダメージ。現代でもこれ以上に高効率で、速い呪文は刷られていません。
使う呪文だけではなく、ゲーム展開も「落雷」のスピード。1ターン目と2ターン目が序盤なら、3ターン目はもう終盤。このデッキに中盤などという悠長な概念はありません。ライフ10点程度なら、詰めの段階です。
しかも、安価。対戦相手の挙動に反応して火力を飛ばす《大歓楽の幻霊》こそ二千円近いですが、他に高価なパーツはなく、数十円~数百円のカードが中心。
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バーンデッキと他のデッキでは
ライフの価値が大きく異なります
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殴れない代わりに除去されにくく
より安価
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彼がお求め易くなったのも追い風
「その何箇所かは覚えてるんだぞ」
良いデッキです。さぁ、みんなで「赤単バーン」を組もう! と、速攻デッキらしく、今日の記事をさっさと畳むこともできたのですが……いやはや。こまりました。
「赤単バーン」が、使いこなすと最高にカッコいい、素晴らしいデッキ、というのは一点の曇りもない事実。
シンプルな目的に沿った工業製品のようで、“用の美”に満ちています。入手性の易しさもあり、とりあえず最初に組めるレガシーデッキとして紹介されることも多いようです。
ただし……“初心者”向け……? こまっているのは、そこです。個人的には、扱いも最高峰に難しいデッキの1つだと感じているのですが、どうなのでしょうか???
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2.僕も「MTG ARENA」上で、上のようなカードが現役だったころの「赤単アグロ」デッキを回していた時期があります。
もちろん、デッキパワーは「赤」の粋を集めた「レガシー・バーン」には遠く及びませんでした。それでもテキトーに、手札に来た順番にクリーチャーを繰り出したり、火力を投げつけたりしているだけで、そこそこに勝ったり負けたりを楽しめるデッキだったとは思います。
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1試合が短く、連戦が前提の「ラダー」戦で
快適だったのです
しかし、“手なり”でも戦える反面……けっきょく最後まで、“このプレイングでホンマにええんか”と首をひねり続けていた記憶があります。上達した実感もなかなか得られなくって。
「バーン」デッキは、門戸は広いが、突き詰めようとすると……あまりに奥深く、難しい。まして、他のパワーとスピードも跳ね上がるレガシー環境では、さらに。
初心者さんに勧めるにせよ、値段での組みやすさだけを理由にするのではなく、難しさ(と、その裏表の面白さ)の部分もきちんと納得してもらったうえでないと「フェア」ではない、と考えたのです。
勢いに任せてデッキを買いそろえるのも、実に「赤」。ところが「やっぱり、合わなかった……」とつぶやく羽目になって、すぐ手を触れなくなるのはプレイヤーにとってもデッキにとっても、不幸です。
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複雑怪奇なテキストやな……
ライフの価値が違うことを活かし
バーンデッキに採用されることがあるカードです
門外漢の勝手な意見で恐縮ですが……「バーン」デッキが難しいと感じた理由、1つ目。《稲妻》系列の火力呪文たちは、圧倒的に自由で、便利すぎます。
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他の一般的な除去呪文と異なり、《稲妻》の強みは即座に撃てて、けっして腐らないこと。赤1マナと殺意さえあれば、目の前の顔面にも叩き込めるのですから。
反面、この1枚は、ブロッククリーチャーを除き、道を開ける“露払い”にするべきか……最後の瞬間まで取っておき、対戦相手を直に焼ききる“切り札”にするのか。状況に応じ、最適解を見極めなければなりません。
どうも僕は思考が「赤」向きではなかったようで、割といつまでも手札に貯めて、使いどころを待ってしまいがちなタイプ。いざというときマナが足りずに撃ちきれず、しょっちゅう手札にだぶつかせていました。
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むしろ使うのは楽なのですが
難しいと感じた理由、2つ目。構造上、ライフを狙う以外のカードを採用しづらく、デッキの調整による誤魔化しも効きにくいです。
「バーン」デッキはどこを切り取っても同じパフォーマンスを発揮できる作りになっており、そのぶんドロー操作呪文などは採用されにくい傾向にあります。
「赤」でもあり、同じ役割のカードばかりのデッキなので特定の1枚を探す意味合いが薄く、ここまで速いデッキだと1マナのテンポ損でも無視できないという理由も大きいでしょう。
「バーン」デッキの芸術作品そのものの無駄のなさは、“デッキに出来ることの少なさ”という弱点にも直結します。
たとえば、前回ご紹介した「緑単ストンピィ」。同じ単色の攻撃型デッキでも、“器用さ”においては「赤単バーン」と雲泥の差があります。
《自然の秩序》や《緑の太陽の頂点》《むかしむかし》というサーチ、準サーチ呪文を擁する「緑単ストンピィ」には1枚挿しのクリーチャーを採用する価値が大きく、状況や環境に応じたチューンを施すことができます。
ところが、純正「バーン」デッキに別の性質のカードを少数挿したとしても、保険以上の価値は少なく、多くの場合、探し当てる前に勝負が終わっているでしょう。
なぜなら「バーン」デッキがゲーム中にアクセスできるカード枚数は、初期手札+経過ターン数。つまりは……10~12枚程度。デッキ内の5分の1でしかないのですから。
かといって、役割が異なるカードを多数積むには、火力の枠を割かねばならず、殺意が如実に下がります。火力呪文自体の使い分けにも知識が必要で、大まかな構築は容易でも、細部の調製がとても繊細なデッキという印象があります。
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ドロー操作と打ち消し呪文を持つ「バーン」デッキ
という視点も
難しいと感じた理由、3つ目。理由1、2とも関連し、初手依存度とカード1枚あたりの価値が高く、ゲームスタート時点の手札を見て、そこから終局までの道筋をしっかりイメージしなければいけません。
しかも対戦相手と戦局に応じ、リアルタイムでダメージ計算に修正を加えながら。ドロー操作という“後出しジャンケン”の助けも無しで。
1人回しの練習で20点のライフを焼ききるのは、とても簡単です。妨害を考えなくて済むので。
ところが、テーブルの向こうに対戦相手が現れると、たちまち、ターンをまたぐ立体的な“先読み”能力を要求されます。「赤いコントロールデッキ」とさえ呼びたいくらいです。
こと、レガシー環境では……「バーン」デッキは最速のデッキでもありません。各種「アンフェア」デッキは同等以上の速さを誇り、「フェア」デッキもそれらへの備えを標準搭載。
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そんな環境で、分厚い妨害をかいくぐり、対戦相手を焼き尽くすには、最高効率で火力を撃ち続ける「センス」が必須。「センス」を磨くには「研鑽」が……つまりは、それらを支える豊富な「実戦経験」が必要。
総じて、「赤単バーン」は“初心者”向けどころか、「絶えず実戦の舞台に身を置ける“猛者”のためのデッキ」ではないかと思います(あくまで個人の感想です)。
今日の記事は生粋の「赤」使いの方に叱られそうな内容で、内心、びくびくしているのですが……単に値段だけで飛びつくのではなく、上のような難しさも承知しつつ、“やり込み”甲斐を感じた方にこそ「赤単バーン」はふさわしい武器ではないでしょうか。
《稲妻》の速さに魂を惹かれた方は、ぜひ。本当にカッコいい、魅せるデッキですから。
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この極端なスペック……大好き
3.さて。歴史ある「赤単バーン」に最大の敬意を払いつつ……この記事のメインターゲットは、初心者や復帰勢の方、それから同じ親であるプレインズウォーカー。子どもたちが学校で「勝負ぞ! フォーマットは、レガシーじゃ!」などと一方的に宣告されたとき、「護身用のデッキ」がないと話になりませんからね!
こいつを使え、戦り方は体で覚えろ! と「赤単バーン」を投げ渡すストロングスタイルも、親として実に「赤」。しかし、同じ場面で、もう少しは扱いやすいデッキを渡しても、甘い親め、とは笑われないと思います。
そこで……探しましたとも。「赤単バーン」と同等に安く、同等に爽快で、そこまでピーキーではない「赤単」デッキを。一時は「枯渇ランド」を使った「赤単《抹消》コントロール」や「赤単氷雪コントロール」まで検討していたのですが……。
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すぐ枯れるので「枯渇ランド」
「増殖」と相性良しです
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“妻子の墓を守るため”に放った
魂の大魔法
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エンチャントとプレインズウォーカーに触らないので
マナ加速とコントロール両面で役立ちます
つまり、ウルザがトレイリアにいたとしてもな……
しかし……やはり「赤」といえば《稲妻》を活かした速攻デッキ。いずれ別の道を模索することがあっても、入り口くらいは真っ直ぐでありたいものです。そこでこのデッキに白羽の矢を立ててみました。リストはこう!
「赤単フェニックス」。「赤単バーン」と重複するパーツもあり、実際にサイドボーディング後はより純粋な「バーン」型へと変形が可能。とはいえ……ゲームプランはかなり異なります。
ダメージソースの主軸は「赤単バーン」のように火力呪文ではなく、1マナ「果敢」クリーチャーたち。そしてデッキ名にもなっている、このカードです。
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《僧院の速槍》などで攻撃しつつ、《信仰無き物あさり》や《ドラゴンの怒りの媒介者》で《弧光のフェニックス》を墓地にセット。これにて攻撃準備、完了。
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元、電波デッキの友
極悪墓地利用デッキのためにも
便利すぎたンだ
機を見て、手札のスペルを集中連打。3回唱えれば、墓地に落ちた全てのフェニックスが甦り、空から対戦相手へと襲いかかることに。
最速パターンは「赤単バーン」を上回り、なんと2ターンキル。「果敢」クリーチャーと複数の《弧光のフェニックス》が絡めば、爆発的な攻撃力を発揮します。
必殺呪文は、《約束の終焉》。おおむね1枚で、《稲妻》+《稲妻の連鎖》+墓地の《弧光のフェニックス》復活条件を達成。つまりは、通らば、勝ちです。
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上の《約束の終焉》のように役割がはっきりしたカードが多いぶん、引きムラが生じやすく、安定性は「赤単バーン」のほうが上。しかし、それを差し引いても、僕個人としては「赤単フェニックス」のほうが扱いやすく感じます。
《ドラゴンの怒りの媒介者》+《ミシュラのガラクタ》+「フェッチランド」も装備しているので、「赤単」なのに意外と器用に手札を回せるのも嬉しいところ。
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1番の狂カードかも
生ける《師範の占い独楽》
書いてあること、全部がおかしいゾ
今回はデッキスペースの都合と《約束の終焉》との相性の悪さから外していますが、消費が早い手札を《騒乱の歓楽者》で補充し直すこともできます。
トークンを横に並べられる《若き紅蓮術士》もデッキと好相性。
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ずっと、これ
ねぇ、神秘的で情熱的な、女性魔道士は?!
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(ただし、頭蓋骨をかち割ってくる)
当然、墓地を対策されると攻撃力は落ちます。しかし、サイドボーディング後は《弧光のフェニックス》《約束の終焉》などの墓地依存度が高いカードを下げ、代わりに《大歓楽の幻霊》《発展の代価》を投入し、純正「バーン」として立ち回る戦術が有効かと思われます。
「赤単バーン」の真っ直ぐな殺意も、良し。一方で「赤単フェニックス」の武器は、“冗長性”にあります。火力対策でも墓地対策でも完全には動作を封じられず、有効な勝ち筋にスイッチが可能。柔軟で、そういう面でも使いやすいデッキではないかと思います。
ただし、「赤単フェニックス」の欠点のひとつは主力カードが1マナ域に集中しており、《虚空の杯》に弱いこと。環境によっては《削剥》の増量、メインボードへの昇格も考慮に入れてください。
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4.唐突ですが「何だか、料理みたいだな」と思っていました。今回のデッキ、「赤単バーン」と「赤単フェニックス」の両方を1人回しアプリで試しながら。
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僕自身は普段、「コンボ」デッキばかりを好んで使っているプレイヤーです。親になったこともあり、対人での練習機会を作ることが難しい……それだから、強い動きを押しつける側で、1人回しの練習でも相当に精度をあげられる「コンボ」。
それ以上に……「アンフェア」デッキのほうが、自分の性格に合っていたようです。僕は同じ「ブーンズ」でも《暗黒の儀式》に惹かれたタイプでしたから。
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《暗黒の儀式》は現役
しかし《稲妻》はもう、収録されていなかったのです
源体験って、長い尾を引きますね……
ところが……昔から赤いデッキを上手く使いこなせる自信がなくって。
前述した通り「赤単バーン」はイメージに反して緻密で、プレイングに重点をおく「対話」のデッキだと、僕は勝手に思っています。
食わず嫌いはいかんな、と反省し、ときどき類似のデッキを試しては「おかしいな……点数が合わねぇ」と首をひねるばかりで。そしてまた、リーサルを逃す。
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ホンマは「ゴブリン」やきん……
ここで「料理」の話に戻ります。もし、子どもたちが「この食べ物、苦手」と言い始めたら???
自分が家族と話していることは……「無理すんな。大人だって意外と、嫌いなものは食べない」です。
子どもがその食べ物を嫌うことには、何らかの理由があります。そのことを自覚し、上手く表現できるかはともかく。苦み? 匂い? 食感? 充分な理由です。彼らの感覚は、僕らよりずっと鋭い。
ただし……アレルギーなど余程の理由がなければ「始めからあきらめるのは、もったいない。工夫をして、試してみよう」。同じ素材でも「料理」のしかたで、好き嫌いがひっくり返ることは大いに有り得ますから。
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カード化をワクワク待っていたのですが……
髪型!!!
うちの長女は、野菜がお苦手。特に、葉物野菜や、ニンジンが。どんなに小さなカケラにしても、何食わぬ顔でひょいひょい器から取り出す几帳面さには感心させられます。
ところが彼女は、“お母さん”が作る“野菜入りの炊き込みご飯”がお好き。特に、ニンジンご飯は大好物で、おかわりしながらパクパク食べています。ふ~む。興味深い。
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僕はパートナーに遠く及ばないのです
「マジック」には、握るデッキによってまったく別のゲーム感覚を味わえるという奥深さがあります。それなのに父が「赤単は苦手~」などというのは、悪影響です。道が狭くなる。不器用な親と違って、子どもたちには20点のライフをぴたりと焼ききる「センス」があるかもしれないのですから。
「構築」=「料理」。同じ素材でも、工夫次第で味わいを変えることはできるはず。「赤単フェニックス」。「赤単バーン」に負けないほど爽快で、速く、良いデッキです。攻めのタイミングを計りつつ手札を貯めて、一気に襲いかかる感覚はコンボデッキにも似ています。そういう戦い方が自分のリズムと合っていたのが、より“扱いやすい”と感じた理由なのでしょう。
僕は自分にない技量を持つ相手に、無条件の敬意を払います。特に熟達の「赤単」使いは、畏敬の対象。
たとえば僕もいずれ、《稲妻》の真価を少しは引き出せるようになり、嬉々として「赤単バーン」を握っているかもしれません。
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または、娘たちがその恐るべき「赤単」使いになって、父のデッキを最速パターンで倒しにきたら?
オッケー、わかった。全霊をかけて、名高い「雷速」のデッキとのレースに臨みましょう。
テーブルの上では親も子もありません。ただ、尊敬すべき強敵がいるだけです。それでは、また。
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負けたら、歯ぎしりするほど悔しいだろうな~