【MTG レガシー】「アーボーグ型ドゥームズデイ」取り扱い説明 ~さらに5つのデッキ対策~
1.先日の記事で紹介しきれなかった、仮想敵に対する戦いかたやサイドボーディングの続きです。前回の記事はこちら。
軽いノリで「ほかのデッキも書きます~」などと言いましたが、レガシー環境には多くの……ちょっとたじろぐほど、数多くの怪物デッキたちが存在します。具体的には、晴れる屋さんのレガシーメタゲームに載っているのが、50種類くらい。いやいやいや、類似デッキの重複や使用者がごく少数のデッキもあるとはいえ、無茶では???
……よし、逃げよう。しれっと別のテーマにすり替えよう、などとも考えたのですが。
読者のみなさんは、こういう記事で愛用するデッキが紹介されたら、どう思うでしょう。他のデッキを使っている素人に、勝手なことを言われたくない、という意見も、もちろんもちろん。
僕なら、ちょっと嬉しいのですが。相手側の視点を学べるという現実的な理由以上に、しっかり強敵として扱われている気がして、むしろ名前がないと物寂しい気分になります。……やるか。
そういうわけで、全部は無理でも……紹介し損ねたデッキを晴れる屋さんのレガシーメタゲームの上から順に、5つ!
「スニーク・ショー」「ペインター」「アルーレン」「デスアンドタックス」「赤単プリズン」
あとのデッキは、また機会をみながら!
こちらのデッキ内容は、こう。メイン、サイドともに前回とは変えず、再録禁止カードを使わない「アーボーグ型ドゥームズデイ」です。
2.今日紹介する内容は、
①「青いコンボ=スペル寄り」
②「青くないコンボ=アーティファクト寄り」
③「青いコンボ=クリーチャー寄り」
④「ヘイトパーマネント=クリーチャー寄り」
⑤「ヘイトパーマネント=アーティファクト寄り」
悪くないバランスです。まずは呪文を主体にした、青いコンボデッキから。「イニシアチブ」に強いとされるデッキの1つで、レガシー環境そのものと同じほどの歴史がある重鎮です。
青系コンボ「スニーク・ショー」
色は青と赤。現代レガシーで最強の組み合わせです。2マナランドや《水蓮の花びら》、ときには《猿人の指導霊》も使った加速から、手札からマナを踏み倒して大型クリーチャーを展開できる《実物提示教育》か《騙し討ち》。そして《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》を走らせて、蹂躙。
青いコンボデッキとして《意志の力》《目くらまし》をはじめとした「Doomsday」と同等の打ち消し呪文、《渦まく知識》《思案》などのキャントリップ呪文も標準装備。高い安定性と優れた速度を両立している難敵です。違うのは、補色が赤だということ。
呪文である《暗黒の儀式》にマナ加速を頼り、手札からのスペル連打によって本来の強さを発揮する「Doomsday」や「ANT」と異なり、「スニーク・ショー」は《古の墳墓》などの土地によって必要なマナを確保し、一撃の大砲で勝負を決めるタイプ。
《虚空の杯》《三なる宝球》《スレイベンの守護者、サリア》や《エメリアのアルコン》の影響を受けづらく、「イニシアチブ」のヘイトパーマネントの影響が薄いです。「リアニメイト」などとは異なり、墓地を介さないので、墓地対策が効かないのもポイント。
・メインボードで警戒するカード
《意志の力》4枚、《目くらまし》2~4枚、《狼狽の嵐》2枚
・サイドボードで警戒するカード
《赤霊破》+《紅蓮破》2枚、《外科的摘出》1~2枚、稀に《すべてを護るもの、母聖樹》1枚
2枚程度の《狼狽の嵐》をメインボードから装備し、打ち消し呪文の密度なら「ターボ型」の「Doomsday」を上回るほど。ただ「Doomsday」が有利な点も2つ。
1つ目は、こちらが黒いデッキでもあるという点。《暗黒の儀式》の加速力のおかげで、「スニーク・ショー」より少し、足が早いです。何より、このマッチアップでは手札破壊が有効。
「スニーク・ショー」はその強烈な砲撃を放つ前に、《実物提示教育》か《騙し討ち》という「砲身」と、それとは別に《グリセルブランド》や《エムラクール》という「砲弾」を揃えなければなりません。手札にキーパーツの片割れが来るのを待つタイミングに突き刺しやすいです。
2つ目の有利な点は、こちらは《最後の審判》の1枚コンボだという点。2枚コンボの「スニーク・ショー」よりもコンボに必要なリソースが少ないので、同じ手数のキャントリップでもコンボパーツ以外に妨害スペルを集める余裕があるはず。コンボキラー(自称)として作られた「アーボーグ型」の特性がもっとも活きる相手です。
サイドボーディング後は《赤霊破》+《紅蓮破》を投入されることが見込まれます。黒いカードを中心にゲームを組み立てるほうがいいでしょう。目指すべきゲーム展開はこの通り。
・増量した手札破壊を用いて相手のコンボパーツを寸断、《否定の力》も使って動きを封じる→ 《最後の審判》から《赤霊破》系が当たらない「サイクリング→《魂の洞窟》」ルートでパイル完走
サイドボードを活かし、少しの有利をさらに広げるイメージで。さいわい「アーボーグ型」には一般的には要警戒カードの《血染めの月》があまり効かず、サイドインされるカードで厄介なのは《外科的摘出》くらい。それも単発のスペルである以上、避けることは充分に可能かと。
これを踏まえて必要なカードはまず《強迫》2枚。サイドチェンジ後は手札破壊6枚体勢で戦います。《狼狽の嵐》が当たる《実物提示教育》はともかく、メインボードのままだとエンチャントの《騙し討ち》を打ち消しにくいので《否定の力》も4枚を投入。計6枚。
外したいカードは、《赤霊破》系に弱い「リアニメイト」ルート用のカード、《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚。《実物提示教育》など相手の動きを巡る応酬で使うことができない《否定の契約》1枚。より効果的な《否定の力》との入れ替え用に《目くらまし》2枚。計6枚。
「スニーク・ショー」相手にターンを返すパイルを組むときは、キャントリップとサイクリングを駆使し、できるだけライブラリー2枚以下で《タッサの神託者》を手札に持った状態を作っておくこと。もし最後の反撃に《実物提示教育》を撃たれても、逆用して、勝つことができるからです。
「アーボーグ型」は「スニーク・ショー」のようなデッキと互角以上の呪文の応酬をするために作ったデッキです。マジック・ザ・ギャザリングにどんな楽しみを求めるか。ひいては、どんなデッキを自分のために選ぶのか。それはもちろん、それぞれが答えを見つければいいこと。
少なくとも僕自身は、打ち消し呪文と手札破壊による駆け引き、手札からのスペル戦がマジックの華だと感じるタイプのプレイヤーのようです。それだから「アーボーグ型ドゥームズデイ」はこのような形になりました。
そして、「スニーク・ショー」はその挑戦に、大いに応えてくれるデッキの1つだと思います。存分に楽しみ、最後は勝ちたいですね。
対「スニーク・ショー」
In《強迫》2枚、《否定の力》4枚
Out《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚、《否定の契約》1枚、《目くらまし》2枚
非青系コンボ「赤単ペインター」
……ゲボァ!? 失礼、口から変な色の液体が。
「アーボーグ型ドゥームズデイ」はコンボキラー、などと偉そうに言っておきながら、次のデッキがこれかい。
「ペインター」にもさまざまな型がありますが、今日は代表として、もっともポピュラーな「赤単ペインター」に。ライブラリーや墓地をふくめた全てのカードを指名した色に変える、ルール改変カード《絵描きの召し使い》。このクリーチャーと、共通の色を持っているカードを墓地に落とし続ける《丸砥石》と組み合わせれば、対戦相手のライブラリーが一瞬で消し飛ぶことに。
直線的にコンボ達成を狙うだけなら、青いこちらのほうが再現性も高く、速いです。しかしこのデッキは凄まじい数のアーティファクトシナジーを内蔵しており、多角攻撃こそが本領。たとえば《鏡割りの寓話》や、悪名高い「モダンホライゾン2」の強カード《ウルザの物語》を標準装備。トークンによる「ペインターコンボ」(暴力)でも圧力をかけてきます。
《ゴブリンの溶接工》はゴブリンとしては突然変異クラスに知能が高く、墓地に落としたアーティファクトのリアニメイトが可能に。アーティファクトへの打ち消し呪文はほぼ無意味と化します。
青キラーという性格も強いデッキで、《絵描きの召し使い》で色を変えることで万能打ち消し+万能除去になる《赤霊破》+《紅蓮破》をメインボードから大量に搭載。本質はアーティファクトデッキなのに、呪文戦にも対応できる器用さを持っています。
・メインボードで警戒するカード
《赤霊破》+《紅蓮破》6枚、《稲妻》3枚、《丸砥石》2~3枚
・サイドボードで警戒するカード
《三なる宝球》2枚、《外科的摘出》2枚、時おり《精神壊しの罠》3枚、時おり《倦怠の宝珠》2枚、時おり《アメジストのとげ》1枚
(《大いなる創造者、カーン》で引っ張ってくるための《丸砥石》1枚)
「Doomsday」にとって困るのは、コンボパーツの《丸砥石》が単体でも刺さること。《最後の審判》を通したあと、このカードを構えられると、少ないライブラリーをゴリッと削られ、一撃死が見えます。ただでさえ「アーボーグ型」はスペル戦に重心をおいているぶん、軽いヘイトパーマネントを早い段階で置いてくるデッキが苦手。メイン戦から6枚の《赤霊破》+《紅蓮破》にも睨まれて、中~長期戦は無理の無理無理!
反対にいえば、短期決戦ならこちらに勝機が。「ペインター」側にとっても黒い高速コンボはそれほど得意な相手ではないはず。よほど早期に《ペインター》の着地を許し、「全てが青に」という不幸に見舞われなければ、《暗黒の儀式》《最後の審判》《魂の洞窟》+《タッサの神託者》……コンボ要素のどこにも触る術がありません。
そして「ペインター」は2枚コンボ。単独で活きる場面が少ない《丸砥石》は、メインボードに2枚だけというリストが多いです。ナチュラルにコンボを揃えられる確率は高くなく、青ではない「ペインター」が初手にないコンボパーツを探すには、一手間も二手間も必要。
最短距離を走り、速さの差で先に斬ること。これが1番ではないかと思います。
サイドボーディング後はヘイトアーティファクトの増量も見込まれます。ゴブリンたちに修理をさせないためには、《否定の力》の追放効果が活きるはず。それにサーチ手段が豊富な相手です。それを踏まえて、目指すべき展開はこう。
・《意思の力》+《否定の力》で「ペインター」が繰り出してくるコンボパーツやヘイトアーティファクトを弾く→ 相手のトークンに圧されるより早く《最後の審判》を通し、《赤霊破》系に邪魔されない「サイクリング→《魂の洞窟》」ルートでパイル完走、もしくはヘイトカードが効かない《黙示録、シェオルドレッド》着地
この展開を実現するために欲しいカードは《否定の力》4枚。《ペインター》や《ゴブリン》を狙撃できる《致命的な一押し》1枚、これらに加えてアーティファクトも戻せる《残響する真実》1枚。対コンボ要員《敵対工作員》1枚、追加のエンドカード《黙示録、シェオルドレッド》2枚。以上、9枚。
できるだけ速さを落とさないよう、「サイクリング」カードなどのコンボ用パーツには触らず、妨害は効果が薄いものと入れ替える方向で。
外したいのは対スペル用の《狼狽の嵐》2枚、《目くらまし》2枚、《否定の契約》1枚。「リアニメイト」ルートは《赤霊破》系の直撃を受けやすいので《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚も外し。枚数調整に《水蓮の花びら》1枚。以上、9枚。
もし可能なら《ゴブリンの技師》や《ウルザの物語》に先んじて《敵対工作員》を戦場に。その場合は《丸砥石》を手にし、ペインターコンボを牽制、というパターンも考えておきたいところ。
難しい敵でも、短距離走ならこちらが上。多彩な攻撃パターンに惑わされず、邪魔するものは《意志の力》《否定の力》で凪ぎ払い、息継ぎなしで駆け抜けてください。
「ペインター」は個人的に思い出深く、レガシー環境デビュー戦の相手がこのデッキでした。そのとき、こちらが使っていたのは「レインストーム」という純正青黒のストームデッキ。よくそれを始めに選んだな、という玄人向けで、扱いの難しいデッキでしたね……。
1戦目、1ターン目に2マナランドから《絵描きの召し使い》。2ターン目に2マナランド2つ目から、マナを使いきる形で《丸砥石》+起動で負け。
いま思うと、完璧な回り方をされたものです。しかし、動画や記事でしか観たことがなかった「ペインター」を目の当たりにし、ちょっと興奮したのを覚えています。いまでも詳細を記憶している、良いデビュー戦でした。まあ、負けたけど。当時は《ラガバン》全盛で、2戦目はよりによって《強迫》を盗られてな……。レガシーって、面白い。しかし、恐いな、と。
In《否定の力》4枚、《致命的な一押し》1枚、《残響する真実》1枚、《黙示録、シェオルドレッド》2枚、《敵対工作員》1枚
Out《狼狽の嵐》2枚、《目くらまし》2枚、《否定の契約》1枚、《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚、《水蓮の花びら》1枚
青系コンボ「アルーレン」
今日は性格違いのコンボデッキ3連。3つ目が青く、「スニーク・ショー」とは違ってクリーチャー主体の「アルーレン」。
キーカードは上の《魔の魅惑》。3マナ以下のクリーチャーを無料+瞬速で出せるようになるエンチャント。この影響下で《洞窟のハーピー》を用い、《氷牙のコアトル》《悪意の大梟》などが戦場に出たときの効果をライフが続く限り使い回す、というのがコンボの骨子。
そうしてエンドカードの1つ《アーチリッチ、アサーラック》にたどり着けば、無限にダンジョンを潜って、勝ちです。《魔の魅惑》の特性で、全ての手順をインスタントタイミングで進行できるぶん除去をかいくぐりやすく、妨害に強いのも特徴。
コンボの部分だけを見れば、まず4マナのエンチャントという限りない重さの《魔の魅惑》を通さなければならず、それほど強いとは言えません。このデッキは「ペインター」と似ていて、豊富なクリーチャー群で攻めつつ、隙を見て必殺の一撃を放つ、という多角的な戦い方が本分です。象徴的なのがメインボードに3枚採用される、このカード。コンボパーツでもあり、アドバンテージ源でもあり、強大極まるフィニッシャー。
今、マジック・オンラインで活躍しているのは、青黒緑の3色が多いので、この記事ではそちらのタイプを参考に。
・メインボードで警戒するカード
《意思の力》4枚、《忍耐》2~3枚、時おり《トレストの使者、レオヴォルド》1枚
・サイドボードで警戒するカード
《花の絨毯》2~3枚、《夏の帳》2枚、《否定の力》2枚、《思考囲い》2枚、《忍耐》1~2枚、時おり《外科的摘出》2枚、時おり《狼狽の嵐》1枚、時おり《敵対工作員》1枚、時おり《夢を引き裂く者、アショク》1枚
メインボードは、おそらく有利です。コンボで攻めてくるにしろ、クリーチャーで圧してくるにしろ、《最後の審判》のほうがずっと速いのだから。メインボードにはコンボ相手だと無駄になる重いカードが多く、自衛に使えるカードも《意志の力》4枚と《忍耐》2~3枚だけ。
Doomsday.wiki曰く、「コントロールの亜種として扱え」。対「コントロール」と同じように、丁寧に手札破壊を突き刺してから、打ち消し呪文で《忍耐》による逆転も封じ、《最後の審判》。基本に忠実に。呪文を構えたまま完走を狙える「リアニメイト」ルートが活きる相手です。
ただ、「アルーレン」側も「盤面の勝負で多くのデッキに優位を取りやすい代わりに、高速コンボに弱い」という事実は折り込み済みのはず。
リストによって採用されるカードの種類がちがうとはいえ、サイドボードにかなり分厚い枠が割かれています。6~8枚。その中には、手札破壊の天敵《夏の帳》も2枚程度が。
サイドボーディング後はスペル戦に備えつつ、警戒レベルが高い《最後の審判》とは別軸の勝ち筋も仕込んでおくほうが良さそうです。それを踏まえて目指す展開は、
・《意志の力》+《否定の力》8枚で「アルーレン」の《魔の魅惑》や開幕《花の絨毯》をケア、緑マナからの《夏の帳》に注意して手札破壊を突き刺す → 相手の《意志の力》や《否定の力》を叩き落としたあと、《最後の審判》 → 《忍耐》《外科的摘出》から身を守りやすい「リアニメイト」ルートで完走
または、
・妨害を構えられる前のタイミングで《暗黒の儀式》と組み合わせ、《意志の力》以外では打ち消せない《黙示録、シェオルドレッド》を貫き通す → ゲームのコントロールを掌握したまま、勝利
こんなところでしょうか。欲しいカードは「アルーレン」を上回る妨害の厚みを作るための《否定の力》4枚と《強迫》2枚。キープ基準を拡大でき、序盤の強襲も視野に入れられる《黙示録、シェオルドレッド》2枚。以上、8枚。
外したいカードはまず、さほど速さを必要としない相手なので《水蓮の花びら》2枚。より効果的な《否定の力》との差し替え用に《目くらまし》2枚。「サイクリング」ルートより「リアニメイト」ルートを優先するので枚数調整に《通りの悪霊》1枚、《秋の際》2枚。同じ理由で《魂の洞窟》1枚。以上、8枚。
妨害の枚数より速さを優先した「ペインター」戦と異なり、対スペル防御をほぼフル装備。もちろん、攻めるための防御です。
あちらの視点だと、自分の手を進めるより、まずこちらのコンボ達成を止めることが命題になるはず。そして「アルーレン」がいかに多くの妨害呪文を追加してこようと、元々メインボードに積んである枚数が違います。
サイドボーディング後、《夏の帳》をふくめても、あちらの打ち消し呪文+手札破壊は10枚前後。それに加えて、《忍耐》+《外科的摘出》が6枚。
一方でこちらは打ち消し呪文+手札破壊だけで16枚。それに加えて《否定の契約》。そして一撃を通せば勝つのは、こちら。けっして侮れない相手とはいえ、貫けないほどの鉄壁ではありません。その上で「アルーレン」の死角をこの方に襲ってもらいましょう。
「ペインター」がデビュー戦の相手なら、「アルーレン」は始めてコンボを決めてゲームを取った相手でした。《思考囲い》でコンボ直前の《魔の魅惑》を落とし……いや、見ただけで満足して解決しかけ、相手の友人に横から無言で指さされて気づくという初心者仕草を挟んでから、勝ちました。
しかし、たとえ経験が及ばなくても、コンボが決まれば、相手は倒れる。ルールとカードの理の前には、どんなプレイヤーも平等。こんな当たり前の事実に気づかせてくれた戦いでもありました。今回の紹介順になったのは、どちらのデッキも「URデルバー=イニシアチブ」環境に合っているからで、本当にたまたまだったのですが……デビュー戦の日の追体験をしているようで奇妙な感覚。今度はぜひ「アーボーグ型」の全力をかけて戦ってみたい相手です。
In《否定の力》4枚、《強迫》2枚、《黙示録、シェオルドレッド》2枚
Out《水蓮の花びら》2枚、《目くらまし》2枚、《魂の洞窟》1枚、《通りの悪霊》1枚、《秋の際》2枚
ヘイトパーマネント「デスアンドタックス」
これまたレガシー環境の古株で重鎮です。白のヘイトクリーチャーと《不毛の大地》《リシャーダの港》によるマナ否定戦術を組み合わせ、相手を徐々に縛りながら殴りきります。このデッキの使い手さん曰く「初手に《霊気の薬瓶》があるか無いかで、戦闘力が2倍は変わるデッキ」。
レガシー環境では極めて遅いデッキの1つで、「多色コントロール」とはまた別の「青くないコントロールデッキ」というほうが適切かもしれません。「死と税金」=「逃れ得ぬもの」という名称も、白のクリーチャーと銀のアーティファクトで統一されたカードたちも美しいデッキです。
・メインボードで警戒するカード
《霊気の薬瓶》4枚、《リシャーダの港》4枚、《スレイベンの守護者、サリア》4枚、《迷宮の霊魂》2枚、《聖域の僧院長》1枚
・サイドボードデッキの警戒するカード
《耳の痛い静寂》2枚、《外科的摘出》2~3枚、《精神壊しの罠》1~3枚
《意志の力》を持たない白のデッキで、一見コンボには抵抗できなさそうですが、それは1ターン目か2ターン目までの話。それ以降は《サリア》や《迷宮の霊魂》を始めとしたヘイトクリーチャー群に容赦なく絞めつけられていくことに。
「アーボーグ型」の特性として、通常なら要警戒カードの《不毛の大地》が効きません。この対戦では本来なら、マナが1番の急所になるので、大きなアドバンテージです。しかし《リシャーダの港》のほうは基本土地にも平等。パイルを組んだあとに少ないマナを縛られると、予定通りの行動ができず、ものすごく危険です。
やはり、すべてをつなぐマスターキーは《霊気の薬瓶》。クリーチャーの展開にマナを使わず、そのぶん相手を縛るために活用できるようになり……1マナにして「手数が2倍になるアーティファクト」は半端ではありません。
「Doomsday」は、ストーム系ほどには《サリア》も《迷宮の霊魂》も致命にならないのが利点。《最後の審判》さえ通せば、「サイクリング」ルートの使い方次第で影響を抑えられます。
問題になるのは、複数の手段を組み合わされたとき。《サリア》+《リシャーダの港》、《迷宮の霊魂》+《リシャーダの港》……。《霊気の薬瓶》での複数回行動を許せば、減速を強いられた末の「紛れ」が起きる可能性は大きくなります。《霊気の薬瓶》=3まで育てられ、《護衛募集員》→《聖域の僧院長》なんて動きをされたら、妨害もできずに詰みですからね……。
速さそのものはこちらが遥かに上。「デスアンドタックス」のメインボードにはコンボに直接抵抗できるカードがなく、あちらにできるのは減速を試みることのみ。よほどの悪条件が重なることがなければ、勝てると思います。向こうは「よほどの」事態を人為で起こすことに長けたデッキですが……。時間をかけず、勝てるタイミングにきっちり勝つのが肝要かと。
そうなれば、サイドボーディングの方針は定まってきます。初手《薬瓶》をなんとしても挫きます。その上で今の構成だと「イニシアチブ」対策の、このカードがサイドボードにいます。申し訳ないのですが、白限定の劇薬として投入も考えておきましょう。
目指す展開は、こちら
・「デスアンドタックス」の初手《霊気の薬瓶》か《耳の痛い静寂》を《意志の力》《否定の力》8枚で弾く → 《暗黒の儀式》も用いて早期の《最後の審判》か《憂鬱》 → 《リシャーダの港》《外科的摘出》に注意しつつ、ヘイトパーマネントも《精神壊しの罠》も効かない「サイクリング」ルートでパイル完走
このために必要なカードは、まず《否定の力》4枚。《瓶》が使えない「デスアンドタックス」の行動をほぼ完封でき、キープ基準を拡大できる《憂鬱》2枚。万一、着地を許した《聖域の僧院長》などを掃除するために《致命的な一押し》1枚。以上、7枚。
外したいカードは、まず打ち消し呪文対策の《魂の洞窟》1枚、《否定の契約》1枚、《狼狽の嵐》2枚。「サイクリング」ルートを中心にパイルを組むので、「リアニメイト」ルート用の《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚。以上、7枚。
サイドボーディング後は「デスアンドタックス」も《外科的摘出》や《精神壊しの罠》でパイル進行に干渉できるので、白い相手だからと油断せず、前方確認や打ち消し呪文での備えを怠らないように。
いったんターンを返すパイルを組んだあと、《リシャーダの港》に干渉されると《タッサの神託者》を唱える青マナが足りなくなるときがあるので、《水蓮の花びら》を余計に用意しておくか、「《渦まく知識》」ルートで即座に勝つパターンも考えておくこと。
Doomsday.wiki曰く「《外科的摘出》対策で、もっともシンプルで、もっとも実証されたパイルの積み方は「フェッチランド」2枚、《タッサの神託者》、《島》2枚」。……なるほど。覚えておきましょう。
んで。デビュー戦の日、直接は当たらなかったけれど、大会の優勝デッキがこの「デスアンドタックス」でした。カード1枚ごとに絵柄や版も選び抜かれていて、きれいなデッキだな、と思った覚えがあります。性能とは別の、愛情を感じて。
自分の「アーボーグ型」はできるだけ新々枠、日本語版で統一しています。そのあたりの楽しみ、特に《島》の絵柄の話なんかを始めたら長くなるので、それはまたの機会に。
In《否定の力》4枚、《憂鬱》2枚、《致命的な一押し》1枚
Out《魂の洞窟》1枚、《否定の契約》1枚、《狼狽の嵐》2枚、《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚
ヘイトパーマネント「赤単プリズン」
今日、最後に紹介するデッキがこちら。2マナランドや《金属モックス》により、《虚空の杯》《三なる宝球》《血染めの月》を開幕早々に叩きつけ、相手を一撃で機能不全に落とし、3マナ4マナの高機能クリーチャーで戦場を支配。前回紹介した「イニシアチブ」と構造が同じで、いわゆる「《虚空の杯》デッキ」の一角……というより、こちらが祖です。古の「ドラゴン・ストンピィ」の流れを汲む、歴史あるデッキタイプですね。
各種の《月》なども使えるぶん、こちらは「イニシアチブ」よりさらに拘束力が強く、《ゴブリンの熟練扇動者》《軍勢の戦親分》による面制圧攻撃も可能。赤が濃いデッキの特権としてサイドボードに《赤霊破》系も装備できる上、《倦怠の宝珠》を投入すれば「イニシアチブ」クリーチャーを一方的に封じ、同じ条件下でも存分に戦闘力を発揮することが可能に。
・メインボードで警戒するカード
《虚空の杯》4枚、《三なる宝球》2~3枚、《血染めの月》4枚、時おり《血染めの太陽》2枚
・サイドボードで警戒するカード
《倦怠の宝珠》1~2枚、時おり《石の脳》2枚、時おり《狂乱の呪詛》1~2枚、《赤霊破》+《紅蓮破》3~4枚(ただし《虚空の杯》との併用に難あり)
初手の重い一撃、特にヘイトパーマネントが突き刺されば、ゲームエンド直行もあり得ます。その数は10枚以上。……まず間違いなく、どれかは繰り出してくるということ。相手のデッキを知らないことが多いメインボード1戦目でその強襲を凌げるかは、まぁ……運と噛み合い次第です。《意志の力》を持っているか、こちらが先に《最後の審判》からの即死攻撃を叩きこめるか。
ただし、「アーボーグ型」には《月》が効きにくく、なにより「イニシアチブ」と違って「赤単プリズン」には《魂の洞窟》がないというのは追い風です。エンチャントやアーティファクトによる妨害なら充分に対処が可能。
サイドボーディング後は偶然に頼る要素をできるだけ排し、自らの手で勝ちにいきましょう。そのための備えは充分にしてあります。「赤単プリズン」がサイドボードから追加してくる脅威は、種類こそ様々でも、アーティファクトやエンチャントが主体という点では同じ。目指す展開はこう。
・《意志の力》+《否定の力》+《緻密》の10枚で「赤単プリズン」の初撃を何としても弾く → 返す刀で《暗黒の儀式》から《最後の審判》、最速で勝てる「渦まく知識」ルートか、ヘイトパーマネントに邪魔されづらい「サイクリング」ルートで勝利。もしくは《黙示録、シェオルドレッド》での強襲
このストーリー実現のために欲しいカードは、まず初動を封じる役目の《否定の力》4枚、《緻密》2枚、追加のキープ基準で勝ち筋《黙示録、シェオルドレッド》2枚、万一のお守りに《残響する真実》1枚、《致命的な一押し》1枚。以上、10枚。
外したいカードはまず、使う場面がない《否定の契約》1枚、《狼狽の嵐》2枚。「リアニメイト」ルート用の《予報》1枚、《考慮》1枚、《発掘》1枚。前方確認の必要が薄く、1マナで《虚空の杯》に遮られやすいカードなので《思考囲い》4枚。以上、10枚。
10枚に増やしたピッチスペルで先制攻撃を確実に潰してからが、本当のゲームスタート。そして、速やかにゲームエンドを狙いたいですね。
こじ開けた隙で、すかさず必殺の一撃を放てるよう、未来を見据えながらキープするかを決めてください。対「イニシアチブ」同様、エンドカードが6枚に増えてアクセスしやすくなるので、《暗黒の儀式》がより重要なキープ基準に。
ゆらめく偶然を、できる限りの精度で確たる必然に近づける。そのために、サイドボーディングはあるのだと思います。読者のみなさんが手にしたそれぞれのデッキの健闘を、祈ります。
3.前回の記事と併せ、これでメタゲーム10位内外のデッキをおおむね紹介できたことになります。他のデッキは、またいずれ。
すでに、入れ替えたいカード、より効果的に思える方針も考えましたが、現時点での記録として、記事ではこのままの形にしておきます。
これらはもちろん、間違いや非効率を多く含んだサンプル。メタゲーム上位を占める怪物たちと実際に対峙したとき、“今の”「アーボーグ型ドゥームズデイ」ならこんなふうに戦う、という例にすぎません。
自分のデッキならどうするか、という思考実験の叩き台にでもしてもらえれば、と考えたのが、前回と今回の記事を作った動機の1つです。楽しい作業で、調べものでしたけどね。
ひるがえって「アーボーグ型ドゥームズデイ」自身はどんなデッキと対峙するのが辛く、どんなサイドボーディングをされると苦しいのか、という点も見つけましたが……それはあえて、書かないことにしておきます。
読者のみなさんがこのニッチすぎるデッキと出くわす機会はめったにないとは思いますが、答え合わせはそのときに。それでは、また。
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