【MTG レガシー】「アーボーグ型ドゥームズデイ」 ~自分と同じ、初心者、復帰勢の方へ~
1.こんにちは。マジック・ザ・ギャザリング、レガシー環境で、初心者や復帰勢の方向けに記事を書いている六条屋と申します。
趣味にかけることができる時間とお金は、人それぞれ。僕自身も復帰勢で、
「数千円~のカードを少しずつ揃えていくのは良いけれど、数万円~のカードを今からまとめて買うのは、ちょっとハードルが高い」
という方のために……つまりは、自分とよく似た感覚をもつ誰かの助けになればと、筆を執っています。
マジック・ザ・ギャザリングは長い歴史をもつゲーム。プレイヤーごとに求めるゲーム体験やカード資産の違いがあるため、「ここからここまでの範囲に含まれるカードでデッキを組む」という「フォーマット」が定められています。
中でも「レガシー」は、これまで発売された、ほぼ全てのセットを使って戦えるフォーマット。「マジック」の華といえる最強のカードたちを自在に扱うことができ、守りのカードも同等以上に速くて強力なものばかりなので、スピード感のあるシャープな攻防を楽しむことができます。
どのフォーマットを選ぶのが最適かは、環境や一緒に遊ぶ人にもよるので一概には言えません。自分が基準にしたのは「どんなカードが好きで、それをどんなふうに活躍させたいか」。
たとえば、この《意志の力》が新しいイラストで再録されたことに驚き、飛び上がって4枚を買ってしまったのが復帰のきっかけだったので、
「“《意志の力》を使えて”、“かつて好きだった《暗黒の儀式》も使える”、“コンボデッキ”」というのがフォーマットとデッキを選ぶ条件。それで「レガシー」。
ところが「レガシー」参入には、かなりの問題が。一部のカード……再録を禁止されたカードたちの価値が天井知らずに上がっていたのです。特に、古の土地カード、「デュアルランド」たちはとても他の人に無責任に勧められる価格ではありません。
そこで再録禁止カードを使わずに戦えるデッキを考えることにしました。その作品のひとつが「1枚、数万円~」という高額カードを使わない「Doomsday」、「アーボーグ型ドゥームズデイ」です。今のデッキリストはこう。
2.「Doomsday」は、主に青と黒のカードで構成され、自分のライブラリーを好きなカード5枚だけにする《最後の審判》と、ライブラリーが0~2枚のときに勝利できる《タッサの神託者》を組み合わせた「コンボデッキ」。
レガシー環境に存在する「コンボデッキ」の中でも「Doomsday」は勝つために必須になるカードの枚数が少なく、空いた枠に多くのドロー呪文、打ち消し呪文+手札破壊呪文を積むことができ、優れた速度と高い安定性、妨害への強さを兼ね備えています。
ただし、高価でした。黒黒黒の《最後の審判》と青青の《タッサの神託者》を無理なく唱えるために、上の《Underground sea》を4枚装備しているリストが一般的です。(当時の10円レアが7000倍以上に出世した《ライオンの瞳のダイアモンド》1枚も)
その代わりに、基本土地の《島》を並べ、《最後の審判》を唱えるときにだけ《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を置けば、瞬間的に黒黒黒というマナを揃えられ、レガシー環境に跋扈する特殊土地対策にも耐性を持てるのでは、というのが「アーボーグ型ドゥームズデイ」の発想の原点です。
また、手札が減りにくい構成にし、呪文の撃ち合いに強く、自分と同等以上に速いデッキにも対抗しやすい作りにしています。たとえ既存のリストより安価でも、単なる劣化版にしたくない、というのが当初から考えてきたテーマだからです。
「デュアルランド」を始めとした高額カードたちは強力な武器ではあっても、それがないと参加資格を得られない入場券などではありません。むしろ、無いことを強みにした個性的なデッキも組めると考えています。そう言い続けて、自分と同じ復帰勢やレガシー初心者を増やし、いずれいっしょに遊んでもらうこと。これがこの記事の目的です。
「レガシー」に興味があるのに、デッキの値段を理由に参入を迷う人がいるとすれば、勿体無いことで、既存のプレイヤーにとっても大きな損失です。新しい芽が育たない世界は、いずれ活力を失い、小さくしぼんで枯れるだけでしょうから。
少し古いリストで恐縮ですが、興味を持ってくれた方のためにデッキ内の全カードを紹介した記事を貼っておくので、ご参照くだされば幸いです。
このデッキに入ったカードでもっとも高額なのは《意志の力》4枚で、予算の半分近くを占めています。それも必須カードではありません。記事の最後でおまけとして、《意志の力》が無いことが強みになるタイプの「ドゥームズデイ」も紹介したいと思っています。
3.しかし、動きが独特で複雑になりがちな「コンボデッキ」を、なぜわざわざ初心者に??? という疑問を持たれる方も多いかと思います。理由はシンプルです。しばしば、経験の差を飛び越えて、勝つからです。
レガシー環境の「コンボデッキ」の速さは、盤面とカードの枚数で争う「フェアなデッキ」とは隔絶したものがあります。特にカードの一部を入れ替える「サイドボーディング」前のメイン戦では、相手に抵抗さえ許さず、勝負を決めることも可能です。
最低限、回しかたを知っていれば、ときどき、デッキがひとりでに走って、勝てる。これが「コンボデッキ」の特権。初心者でも……いや、初心者だからこそ、勝ちの蜜を味わっておくほうが望ましいです。安定して勝てるかは、また別の話として。
「マジック・ザ・ギャザリング」もゲームで、遊びです。こてんぱんに負け続けて、さらに遊び続けたいと考えられる人は少数でしょう。負けが辞めにつながるのは、悲しいことです。まして心血を注いで組み上げたデッキは、安い買い物ではないのですから。
僕自身が「コンボデッキ」を選んだことには、個人的な事情も関係しています。
僕は田舎暮らしな上に、まだ小さな子どもの親でもあり、休日にプレイする機会をなかなか作れないことは始めからわかっていました。相手の動きに応じる「フェアなデッキ」は満足に練習もできません。
しかし、自分の強い動きを押しつける側なら、1人回しの練習でも相当に精度を上げられるはず。これが「コンボデッキ」を選んだ大きな理由です。
中でも「Doomsday」には熱心なファンが多く、海外に専門のWikiサイトがあるほどのデッキで、自宅にいながら学べることが数多くあります。日ごろの感謝を込めて、Doomsday. wikiへのリンクを貼っておきます。
感謝といえば、他のサイトさんにも。
もし、この記事を目にしてレガシーのデッキを組みたいと考える方がいても、いきなりカードを購入せず、1人回しで充分に感触を確かめてからにしてください。
衝動に任せて買い揃えたあとで、手に馴染むかを確かめるのも「実に赤!」という印象で尊敬はできます。しかし、少なくないお金を使ったあとでフィーリングが合わなかった、という結果になっては目も当てられません。
もちろん代用カード「プロキシ」でも構いませんし、カードの入れ替えや検索の手間などの利便性を考えると、1人回しアプリもお勧めできます。
海外の有料アプリなども試した結果、操作感が爽快で、デッキ調整のためにも最高に使い勝手がよいと感じているのは、「うり@Study Hall of M:TG」さんが運営されている「Study Hall of M:TG」内のWEBアプリケーション「MTG Tools」です。
無料でこんなに良質なアプリを使わせてもらって、ほんまにええのん??? と恐れおののきつつ、デッキの細かな構成を変えるたび、軽く3桁に及ぶ1人回しをさせてもらっています。こういう場で紹介してお礼を申し上げることが適切かはわかりませんが、いつもありがとうございます。陰ながら応援させていただいています。
そして初心者、復帰勢の方にも心強い武器として、ぜひ触れてもらいたいツールです。(イラストや版を自由に選べるから、紙のデッキと雰囲気を合わせられるのも、うれしいンだよな……)
4.高額カードを使わないデッキの一例として紹介している「アーボーグ型ドゥームズデイ」ですが、実際の取り回しかたや、相手のデッキによる「サイドボーディング」の方針を書いた記事も貼っておきます。
「初心者、復帰勢向け」と銘打っておきながら、回数を重ねるにつれ、どんどんマニアックで狭い内容になっていくので、「ときどき初心と正気に戻らないと」と自省したのも今日の記事をまとめた動機です。ただでさえ本当に需要があるかは不明の、ニッチな記事でデッキなのにさぁ……。
最後に、《意志の力》を使わない「ボーラス型ドゥームズデイ」についても紹介しておきます。デッキリストはこう。
こちらのタイプのキーカードは、先ほどもお見せした《ボーラスの城塞》。
ライブラリートップのカードをマナ・コストではなく、ライフを支払うことで唱えられるようにする、黒い伝説のアーティファクト。このカードによって莫大な「ストーム」を稼ぎ、《苦悶の触手》でも勝てるようにした「Doomsday」。《タッサの神託者》登場以前に先祖帰りをしたような構成です。
《ボーラスの城塞》でライブラリートップに打ち消し呪文がめくれると、自由に唱えることができないので、連鎖が止まってしまいます。そのため、《意志の力》を始めとした打ち消し呪文をメインボードにほとんど採用せず、《強迫》+《思考囲い》の手札破壊8枚が妨害枠を担います。そのぶん、マナ加速などに枠を割いており、コンボルートも豊富。ゲームプランは大きく違っても、勝るとも劣らない戦闘力を持っています。
練習の甲斐があり、自分に合わせた改造もしやすく、そして「レガシー」のデッキとしては、安価です。キーカードの《ボーラスの城塞》なんか、150円くらい。おやおや。意外と安普請ですなー、ボーラス卿???
ご紹介したデッキたちは「こういうリストでも戦えます」と言うためのサンプルに過ぎません。もちろん他のデッキを選んでも、メインボードやサイドボードが理想の形とちょっと違っても、きっと大丈夫。
「レガシー」は寛容です。膨大なカードプールが、その枠に代わりの工夫の余地を与えてくれます。
そして、まだ復帰して1年半ほどで、なかなかプレイ機会を得られない僕がいうのも変ですが……初心者、復帰勢の方とテーブルを挟んで会えたのなら、それは物凄くうれしいこと。持てる能力が許すかぎり丁寧に、親切に、そのうえで真剣なゲームをしたいと望まないはずがありません。もちろん全員ではなくても、多くの方が自分と同じように考えるだろうと、僕は楽観的に信じています。「レガシー」はそういう意味でも、やはり寛容なのだと。
それでは、このあたりで。今はまだ名前も顔も知らないみなさんと、テーブルの向こうで会える日を楽しみにしています。
もう1つ。私事ですが、上で書いた通り、僕は復帰したばかりの「プレインズウォーカー」で、1児の親です。そして、春が過ぎる頃には2児の親。またしばらく、遊ぶ機会が少なくなるな~、と苦笑いしつつ、育児が落ち着いたあと、再び初心者の1歩目からやり直すことが大きな喜びでもあります。そのときはどうか、お手柔らかに。