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【MTGレガシー】 異形の獣《キメラ・サイクル》=「五輪の書:デッキ構造編」 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.はぁい。カードゲームうさぎリスペクト、レガシー版《キメラ・サイクル》開発局の六条屋でございます(僭称)。

“五輪の書”などと大上段に銘打ってみましたが、“X”でこの独特すぎるデッキを紹介したところ、面白がってくれる方が多かったため、“こんなふうに考えながら構築してます”と簡単に説明したくなったのですよね。
デッキとは、鏡のごとくに作者の意志を写しだすもの。しかし、この《キメラ・サイクル》に関しては、複雑極まる万華鏡です。この記事でどこまで書ききれるかはわかりませんが、もったいぶらず、今日のデッキはこう!!!

ぐあ、リストが細かい! 1人EDHかよ! 一部のカード以外は1枚ずつで構成された、ほぼハイランダー構築。どうしてわざわざこんな奇行を??? このカードのためですね。《汚れた契約》。

簡単に言えば、同じ名前のカード“2枚”がめくれるまで、任意の回数、ライブラリートップを追放し続け、好きなカードを手札に加えられる、超個性的なサーチカード。今まさに手札や墓地から撃っている《汚れた契約》以外の全カードを別名で組むことが出来れば?
万能サーチにして、自分のライブラリーを一撃で消し飛ばせる最強のコンボパーツと相成ります。次のカードと組み合わせれば、勝ち。《タッサの神託者》。

「おつかれさまでした」

これが「オラクルパクト」というコンボ。あまりに変態すぎるコンセプトなのに、ときどき天才マニアが大会でも結果を残しており、見た目以上に侮れない強さのデッキです。
で。このデッキの最大の特徴が、必須パーツ数の少なさです。《汚れた契約》=2。《タッサの神託者》=1or2。以上。3~4枚。
再現性が課題になる一方で、膨大な空きスロットを活かせば、“何でもできます”。そして、性質が違う他のコンボをこれでもかと詰めこみ、どこが揃っても勝つ構成にしたのが、レガシー版《キメラ・サイクル》。おバカの発想かな?
今回のリストだと“リアニメイト”+“オムニテル”+“ダークデプス”+“オラクルパクト”で、4頭獣!

MTGの世界で
キマイラといえば長らくこれだった
夢とロマンの合体クリーチャー!

“ほとんどのカードを1枚ずつしか使えない”。この制約と誓約のため、ちょいと構築のハードルは高そうに見えるかも。
そこで、各カードを役割に応じた“ユニット”ごとに分けて大まかな枚数を定め、その範囲(1~2枚ずつの幅を持たせつつ)を守って構築すると、全体像を把握しやすくなるかと。役割が重複するカードも多いため、記事内では合計枚数が60枚を超えることには注意を。

まずはデッキの根幹になる、最重要“ユニット”から。
・コンボパーツ 14枚

今回は、試みとして、突然の実写化。視覚的に解りやすく、相互作用の強いカード同士を並べてみたかったのです。
速度と性質が異なるコンボのいずれか……“手役”というべき組み合わせを、立ち回りの過程で揃えていくのが、このレガシー版《キメラ・サイクル》。麻雀やポーカーに近い感覚かもしれません。

まずは先ほども紹介した、デッキの存在意義に関わるコンボから。
A「オラクルパクト」ルート
《汚れた契約》2、《タッサの神託者》2

2種類の2マナ呪文を唱えれば、即座に勝利、というハードルの低さはレガシーの長い歴史でも例が少なく、ターンをまたいだ分割払いが可能な柔軟性も売り。2ターン目の相手ターン終了時、《汚れた契約》で自分のライブラリーを残り1枚に→3ターン目通常ドローでライブラリーを0枚にして《タッサの神託者》、というのが真っ直ぐ走る場合の最短距離。

後述する他のコンボのように、勝つために攻撃を介する必要がなく、盤面と無関係に、コンボ達成=勝利。クリーチャー除去は効かず、墓地対策も無効。ついでに《虚空の杯》=1も効きません。直接的に対処される確率が高いのは、打ち消し呪文と《もみ消し》系で、もっとも呪文コンボ的な性格が強いルートといえます。

1本目で“見せた”場合
このカードの投入確率が高まるため
2本目でのルート選択は慎重に
(それにしても、高いアンコモンだナ)

《タッサの神託者》の採用枚数は、流派が分かれる部分で、今回のリストでは“2”。
万能サーチでもある《汚れた契約》にとって、ときに2枚目の《タッサの神託者》は邪魔札(同名2枚をめくった瞬間、《汚れた契約》は空振りで効果終了)。しかし、今回のリストは他のサーチ手段が多く、リスクを考慮にいれてでも、「オラクルパクト」の達成率を高めるほうが良いと判断しました。
メイン戦では、まず、この「オラクルパクト」か、次のルートを狙うのが基本。というか、パーツ総数とマナコストとの関係で、そうなりやすいように最初から作っており、4本の首(コンボ)のうち、速さにおいては、次のルートがもっとも優れています。

B「リアニメイト」ルート
《再活性》、《動く死体》、《偉大なる統一者、アトラクサ》、《虐殺の執政官》

分類上はサーチ呪文としている《納墓》↓との2枚コンボで、《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》といった超大型クリーチャーを早期に呼び出せるのがこのルート。

ファイレクシアン・アイドルゥ!!?

《納墓》→《再活性》と動く場合、1マナ呪文2種類と、「オラクルパクト」と比べても必要なマナ総量は半額。撃つだけでは勝ちを決められない代わりに、2ターン目にコンボ完成させられるほどの軽さが武器。デッキ全体の牽制技で、見せ技でもありますね。
勝つまでに攻撃を介する必要があり、クリーチャー除去に弱いですが、《アトラクサ》から入れば、次のコンボに悠々と繋げられるほどのリターンを得られているはず。
また、墓地対策を筆頭とした専用対策カード全般に弱く、メイン戦用の武器という性格が強いです。あと、このルートだけは、他では効かない《虚空の杯》=1が本当に邪魔。

で。出が速い上のコンボ2種に意識を向けさせたところで、下のコンボ2種を狙うのが吉。3頭目は「リアニメイト」と対をなす、大型クリーチャーを用いたパワーコンボ。

C「オムニテル」ルート
《実物提示教育》、《全知》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》、《偉大なる統一者、アトラクサ》、《虐殺の執政官》

一柱目の女神

3マナと大振りながら、レガシー最強格ソーサリー、必倒の“砲撃”《実物提示教育》。手札から放つ“砲弾”になるのは「リアニメイト」ルートとの共通パーツ《偉大なる統一者、アトラクサ》《残虐の執政官》に加えて、《引き裂かれし永劫、エムラクール》。そして《全知》です。

「オムニテル」ルートの良いところは、「リアニメイト」と比べても特効的な妨害の手段が少なく、コンボ達成がそのまま勝利に結びつきやすいこと。
女神《エムラクール》の決定力はいつの時代も強烈無比だし、《全知》と各種のサーチ呪文が揃えば、攻撃を介する必要すらありません(0マナ「オラクルパクト」に繋げて勝つため)。
ただし大技なぶん、手札破壊や打ち消し呪文による迎撃には弱いため……さらに軸をずらして攻めるために用意してあるのが、4番目のコンボ。

D「ダークデプス」ルート
《暗黒の深部》、《演劇の舞台》、《吸血鬼の呪詛術士》

他の3コンボとの互換性がなく、やや“浮いたコンボ”ですが、それは長所でもあります。他のコンボと違い、このルートだけは呪文主体ではなく、“土地コンボ”。《暗黒の深部》と《演劇の舞台》を用いた「ステージデプス」は土地セット権だけでコンボ完成させることができ、打ち消し呪文と手札破壊はほぼ完全に無効。
クリーチャー除去、土地破壊に弱く、簡単に止められる相手もいる反面、タイミングとデッキによっては全くの打つ手なし。実際、自分の経験では、最多キル数を誇るのが、この「ダークデプス」ルート。他のコンボを見せ技にして振り回した後、おもむろに、もう一柱の女神が土地から現れ、20点で噛みついて終了です。

がぶんちょ🖤

今回は他との兼ね合いで外していますが、このルートをより活かすためには、《トレイリア西部》や《海の先駆け》を積極的に採用するのも手。

「変成」は呪文ではないため
本当に一切の呪文を使わず
パーツを揃えられる
こちらは苦手な《不毛の大地》対策で
ある種のデッキを封殺するヘイトクリーチャーとしても
彼女がいる間に《暗黒の深部》を置くと
氷カウンターがない島として戦場に出るため
何かのきっかけで《先駆け》が戦場を離れたら
女神降臨
サブのコンボパーツとしても機能する
ウィザードだから、サーチしやすいしな

このとおり、上記の4コンボを手札や戦況と見比べながら使い分けていくのが、このレガシー版《キメラ・サイクル》のスタイルです(長え自己紹介だな)。
もちろん、それぞれのコンボパーツは他と有機的に結びついており、たとえば墓地にあらかじめ落とした《タッサの神託者》や《吸血鬼の呪詛術士》を《再活性》で安価に甦らせつつ、「オラクルパクト」や「ヘックスメイジデプス」に繋げる、といった戦術オプションをアドリブで選んでいく必要があります。

この14/60枚がデッキのコアパーツ。といっても、こうも雑多なコンボを同じ鍋に投げ込んだだけでは、“デッキ”には成りません。コンボ=“キメラ”の頭を支えるために、より重要なのは、サーチ=“サイクル”のほうでしょう。次の“ユニット”に話を移します。

・サーチカード+ドローカード 12枚

サーチ系8枚 《汚れた契約》2、《親身の教示者》、《通り抜け》、《呪文探求者》、《悪魔的助言》、《霊廟の秘密》、《納墓》
ドロー系4枚 《渦まく知識》、《思案》、《定業》、《考慮》

コンボパーツでもある《汚れた契約》は最重要級のサーチカードでもあります。それぞれのカードは、上で紹介したコンボと、距離が異なりつつも密接に関わり合い、他のサーチカードへと繋がる“サイクル”を描くことで、いずれ必ず、《汚れた契約》にもアクセスできるようにもなっています。

たとえば《通り抜け》は、《タッサの神託者》に1手でアクセス。《呪文探求者》へと“サイクル”を回し、《汚れた契約》には2手でアクセス。「オラクルパクト」と強い関わりがあります。

ウィザード・サイクリングは
呪文ではなく、妨害に強いのも嬉しい
基本的にはデッキのエース《汚れた契約》への
転換を目的としたカード
ただし②青と、かなり重い
クリーチャーでもあることが大きな利点で
墓地に落としてリアニメイトできれば、美味

他にも《親身の教示者》からスタートして《通り抜け》→《呪文探求者》へと繋いでいくこともできますが、手札に加えられるタイミングが遅い上に、「オラクルパクト」完成のためには距離が遠く、こちらはどちらかといえば《実物提示教育》や《再活性》への最短アクセス用。

あまりにも最強よな!
(レガシー禁止)
くーん

今回のリストで特徴的なのは《悪魔的助言》《霊廟の秘密》。黒い2マナサーチの採用でしょう。

どちらも墓地を肥やして条件を満たす必要があるとはいえ、万能サーチ呪文の中では抜群に軽く、手順の大幅なショートカットが可能に。これらを活かすために、今回のリストは墓地へとクリーチャーを落としやすいデッキ形状にしています。

まあ、
こういうこと

サーチカードの充実に比べ、ドローカードはそれほど強くはありません。レガシー御三家《渦まく知識》《思案》《定業》の次点にあたるカードは、ぐっとパワーが落ち、同系デッキの「オラクルパクト」ではしばしば《血清の幻視》が使われるほど。

こういう“弱い”カードを使うより
最初から強いカードを満載した構成にできないか?
というのが《キメラ・サイクル》の発想の原点
ただし、この《考慮》は例外
墓地を肥やしながらドローを進められ
大型クリーチャーを落とすことができれば
「リアニメイト」用の手順が大幅短縮

この《キメラ・サイクル》は、遅いコンボデッキです。最速はともかく、平均キルターン数は4~5以降。マナ加速カードの駒不足なども原因で、それ以上に、コンボ達成までにサーチ系カードで手札を調える必要があるため、テンポ損が生じやすいから。
それは言い換えれば、対戦相手に応じて、後だしジャンケンで有効打を使い分けられるという利点でもあり……問答無用での早期決着を狙うよりも、対戦相手に干渉しながら“後の先”を奪っていく必要があります。そのための“ユニット”が、豊富な妨害用カード群。

・打ち消し+手札破壊+万能バウンス+クリーチャー除去 14枚

打ち消し呪文6枚 《意志の力》、《否定の力》、《誤った指図》、《目くらまし》、《狼狽の嵐》、《呪文貫き》
手札破壊4枚 《思考囲い》、《強迫》、《コジレックの審問》、《陰謀団式療法》
万能バウンス2枚 《天上都市、大田原》、《厚かましい借り手》
単体除去2枚 《致命的な一押し》、《切り崩し》

打ち消し呪文は、自分よりも優速なデッキ(だいたいのコンボが該当する)の動きの枕を抑えられるよう、または自分の一撃を隙間にねじ込みやすいよう、各種のピッチスペルを優先的に装備。

《意志の力》さえ1枚しか積めないのが
このデッキの泣き所
たった1度しか使えない、本物の切り札
対戦相手のターンにも
インスタントの《汚れた契約》から動きだせるため
《否定の力》を攻めに転用することも
ちなみに《狼狽の嵐》でもアドバンテージを獲れる
対戦相手の呪文→対応して《汚れた契約》→
対戦相手の打ち消し呪文→《狼狽の嵐》
という撃ち方をすれば、大ストームで
対戦相手が用いた両方の呪文を打ち消せるから

さらに打ち消し呪文のために割けるほど枠に余裕があれば、《撹乱する群れ》《拒絶の閃光》なども採用候補。

役割を終えた《呪文探求者》や《瞬唱の魔道士》などを
活用できるのはお得感
《タッサの神託者》で
《もみ消し》系を乗りこえるためにも
ただ、ちょっと使える状況が限定されるかも

手札破壊のほうは黒1マナの最優良呪文を上から順に4枚選んだ形。

ピーピングハンデスと
打ち消し呪文との組み合わせこそが
このデッキの生命線
パワーに勝る相手を情報戦で制するのです

次の項目で説明する通り、この《キメラ・サイクル》は第5の攻撃法……頭と併用できる“爪”として“通常打撃”を繰り出すことができ、また攻守の速度差を切り返すためにも、一般のコンボデッキとは異なり、ある程度、除去呪文で盤面に干渉できるようにしています。

今回は泣く泣く外しているけど
この辺りも優れた候補
《霊廟の秘密》で
持ってこられる“黒い打ち消し呪文”としても
新イラストも美しいンだ

・ユーティリティ 8枚

 《バロウゴイフ》《濁浪の執政》《厚かましい借り手》《カザド=ドゥームのトロール》
《悪意の大梟》《瞬唱の魔道士》《通りの悪霊》
《不死のさざ波》

ほぼ自由枠で、デッキ全体のサポートが役割。《バロウゴイフ》《濁浪の執政》は単騎でもゲームを決めきれるほどの高い攻撃力を誇り、コンボを巡る駆け引きと並行して、積極的にライフへのプレッシャーをかけていきます。

黒く、おまけ効果が山盛りの
《タルモゴイフ》
弱い部分が無い
空を制するのはブルードラゴン
このデッキだと
青青マナで7/7か8/8+α
長期戦でおもむろに《エムラクール》を墓地に落とせば
ライブラリーの全呪文が修復されるついでに
+10/+10くらい強化されるため
(隠し技)

《カザド=ドゥームのトロール》《通りの悪霊》は、それぞれ土地の安定化、デッキ枚数を59枚に圧縮、という役目もありますが、より重要なのが、自ずから墓地に置いておける「クリーチャー・カード」だという点。
このデッキは「土地」「インスタント」「ソーサリー」を容易に墓地に落とせるため、サイクリングでクリーチャーを捨てれば、「昂揚」達成。《悪魔的助言》を《悪魔の教示者》として扱うことができるようになり、大幅に戦闘力が上がるからです。

このカードも1枚クリーチャーを落とせば
最低限《納墓》か《再活性》への変換券

《不死のさざ波》も墓地肥やしを主目的としつつ、疑似《森の知恵》としてアドバンテージ源に。

エンチャント、というのが重要で
これ自体も「昂揚」達成の種になるのです
こちらの採用も面白い
《吸血鬼の呪詛術士》とのシナジーで
時間カウンターを取り除けば
すぐ動き出せるようになる

クリーチャー・カードの総数は今のリストだと14枚で、コンボパーツと同量。4枚を切削すればクリーチャー・カード1枚程度は墓地へと落ちるようになっています。

(で。墓地に落ちた重要カードを再利用するための
《瞬唱の魔道士》な)

・土地16枚

コンボパーツである土地カードを除き、純粋なマナベースはこのとおり。《キメラ・サイクル》は《暗黒の儀式》などのマナ加速呪文も1枚ずつしか採用できず、上振れ狙いにしかならないため、今回は不採用。こういう面からも、コンボとしては鈍足です。

そのため、《汚れた契約》《タッサの神託者》に続き、3種類目として《島》も“2枚目”を採用。足回りの安定性を高めています。

《不毛の大地》など
多くの土地対策が無効
レガシーでは基本土地の信頼性は正義
……だったはずが、今は雲行きが怪しい
やっぱりこの菌類、許されないんじゃないかな~

意識して序盤から《島》を持ってくるようにすれば、「オラクルパクト」の邪魔になることはそうそうありませんが、このあたりは構築上の好みが分かれそうなポイントです。

サイドボード

サイドボードは水物なので参考程度に。このリストでは比較的、汎用的なものを優先していますが、1枚差しの特効カードをサーチすることに異様なほど長けたデッキなので、創造力と遊ぶ環境次第で、何でもあり。追加コンボを仕組んで意識外からの奇襲をかけるのも、もちろんありです。

突然の
ワ ー ル ド ゴ ー ジ ャ ー

重要なのは、1本目に“なにを見せたか”によって、対戦相手からの印象を考えながら、次の立ち回りを決めること。
このような異形すぎるデッキで、ぼく自身、前身にあたるリストで戦った機会はかなり前なのが心苦しい限りですか(子育てで忙しくてなー)……意外なほど、勝てます。
それが単なるデッキ同士のパワー比べではなく、駆け引きが介在する“ゲーム”であるならば。

このレガシー版《キメラ・サイクル》の武器は、四つのコンボを掛け合わせた頭の数でも、その陰に隠した爪の鋭さでもなく、“情報”だからです。
対戦相手から、テーブルのこちら側の意図を読みきることは、まず不可能。
他のデッキなら、“このニッチな記事を読んでいない限りは”という但し書きを付けるところですが、《キメラ・サイクル》は使い手にとっても、潜るたびに様相を変える迷宮。
これよりパワーに優れるレガシーデッキはごまんとあります。しかし、ある意味で……これほど不気味で、“怖いデッキ”は、他にありません。

まだまだ、コンボ完成は遠いのか? それとも、とっくに魔物の牙圏に立っていて、今まさに顎門が閉ざされる瞬間なのか?
それをかろうじて測ることができるのは、魔獣の手綱を握る、使い手のみ。

そう、対戦相手も、怖がるのです。テーブルごしにこのデッキを。
そんな怯えの気配を嗅ぐことで、ぼくは対戦相手の隙を探ることができたし、すくんだ足になら、この遅いコンボでも充分に追いつけた、というカラクリです。

「対戦相手は君の手札を知らない」「対戦相手は恐れている。君の手札を」「泰然自若と構えたまえ。貴様が知り得ぬ最高のサイクルで殺してやると」
そのとおり。恐怖を武器にするゆえに、このデッキは、変幻自在の“怪物”=“キメラ”の銘を持つのですから。

2.ふぅ。おつかれさまでした。超が付く駆け足で、ざらっと表面をなぞっただけでも、この長さになりましたか。とうてい“五輪の書”などとは呼べない“地の巻”のさわり程度のデッキ紹介になってしまいましたねー。

しかも色々書いたうえで、デッキビルダーの良心として“絶対的に強いデッキである”ということはできません。どこまでいっても、出力の不安定さが課題になります。
しかし、とてつもなく面白いデッキ、ということだけは保証できます。

今回、提示したリストはあくまで自分用に使いやすくカスタムした例にすぎず、もうビックリするくらい自由なデッキですから。
コンボの数を増やすのも減らすのも、種類を変えるのも、新しいカードを次々と試すのも。膨大な自由枠こそが、レガシー版《キメラ・サイクル》の最大の武器で、魅力です。

たとえばFFコラボだと
彼が気になる
手札に来た大型クリーチャーを墓地に落とせるし
何より基本能力の高い“ウィザード”
変身条件もわりと現実的
このデッキ、そこそこ防御力があるのに
なかなか1枚差しのコンボパーツを引けなくて
“ぐだる”ことが少なくないですから

ぼくがこうしてレガシー版《キメラ・サイクル》の記事を書いた動機は、誰かが興味を持ってくれて、いずれ、それぞれの好みを反映した独自のリストを何かの形で見せてくれれば、と願うからです。
(あと、自分で戦う時間をとれなくなったから、そういう意味でも情報のフィードバックが得られると嬉しい)
レガシー版《キメラ・サイクル》。個性的で楽しいデッキです。手品のタネ明かしをするように、《汚れた契約》を撃ちながら「このデッキにはほとんどのカードが1枚しか入っていません」と対戦相手に告げる瞬間が、実はいちばんの醍醐味かも。

デッキとは使い手の意志を写した鏡です。心血を注いで組まれたデッキは、全てがそれぞれなりに美しく、ぼくはそういう美を追求するために、この長い長い遊びに興じているのですから。それでは、また。

ローグライクゲームの如く
 無限に味がするため
一人回しをやり過ぎて
本当に寝不足になりかけました
オーバードーズに注意が必要だ……
ムゥン

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