【MTG レガシー】 オリジナルデッキ、青単ステイシス“ニヴルヘイム”で100敗してみた <200戦、完了! 中編> 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.オリジナルデッキ、青単ステイシス【ニヴルヘイム】で、レガシー上位10のデッキと戦う企画。第4戦までの経緯はこちら↓から。今回は第5戦からの再開です。
5戦目「4c豆の木コントロール」
「ステイシス」が効きにくい構造のテンポ系デッキとは別の意味で、この実験をスタートする前から危惧していた相手。それが、現代レガシーにおけるパワーカードの集合体「多色コントロール」系デッキ!
【ニヴルヘイム】から見れば、「コントロール」デッキとして張り合うには自分よりも遥かにパワーがありすぎ、「ステイシス」として攻めようにも《停滞》などの置物に触れる手段が豊富で、ロック状態から抜け出すことも容易。明らかに不利です。
実験とはいえ、戦術的な努力によって戦略レベルでの相性差を覆そうとする試みは、精神衛生上、よろしくありません。それなので1戦目からずっと、この難攻不落の強敵とどう戦うか、考えていたのですが……。
1つ、策があり。そして【ニヴルヘイム】に対する、ちょっとした不満も解決できるかもしれません。ヒントはこのカード。
“《停滞》によって高いマナ拘束力を誇る【ニヴルヘイム】と《目くらまし》は、とても好相性。「島」である《神秘の聖域》を手札に戻す効果も期待できるので、コンボパーツに近い。おまけに《サファイアの大メダル》でマナコストを軽減すれば、《魔力の乱れ》として振る舞うことさえできる”
↑が構築時点での《目くらまし》の採用理由だったのですが、あてが外れました。ここまでの80戦で、1度たりと刺さる機会がなかったからです。
お互いに手札をオープンにした練習なので、奇襲効果が皆無、完璧な精度のデイズケアをされるのが理由の1つ(さすがに、わざと《目くらまし》に引っかかるプレイングはしたくない)。
もう1つは、【ニヴルヘイム】自体の土地基盤と、対戦相手の《不毛の大地》のためです。
【ニヴルヘイム】が「青単」なのは、基本の《島》だけで安全に土地の枚数を伸ばし、デッキの根幹を支える柱石である《神秘の聖域》を最大に活かしたいから。
すなわち……青単の【ニヴルヘイム】には、ほとんど完全に《不毛の大地》が当たらない→対戦相手のコントロール下で立ちっぱなし→《目くらまし》の1マナを支払い放題、という構築時には意図しない相関関係が発生していたのでした。ムキーッ!!?
《目くらまし》の活用をあきらめ、最小の枚数に留めるのが、1つの手。
もう1つの手は、自分も《不毛の大地》を採用し、対戦相手のマナ基盤を攻めることで《目くらまし》が活きやすい構造に改造すること。《もみ消し》を積極的に採用するデッキでもあり、相性は悪くなさそうです。
そういうわけで5戦目からは《不毛の大地》採用型を試運転。「4c豆の木コントロール」には試し切りの相手になってもらいましょう。
結果。メイン戦は5ー5。事前の予想よりも大健闘。土地を伸ばせない「4c」が息苦しさから抜け出そうと動いたところを、《停滞》で凍らせるか、後述する“フィニッシャー”で圧倒というのが勝ちパターン。
とくにデッキ内に数少ない赤マナ源である《Volcanic Island》と「トライオーム」=《ザンダーの居室》を砕いておけば、上の《力線の束縛》が使いにくくなり、静止した世界から、ますます逃れづらくなります。
しかし、とにかく次の1枚が厳しく、多くの敗けに関わるカードでした。「プレインズウォーカー」=《時を解す者、テフェリー》。
コントロール要素の大半を打ち消し呪文に依存する【ニヴルヘイム】にとって、1枚でデッキを全否定してくる難敵中の難敵です。時を操り、テフェリーのフレーバー要素も持つ「ステイシス」の結界が「時間の大魔導師」《テフェリー》に阻まれるとは、なんたる皮肉よ……。
幸い、「4c豆の木コントロール」はボードコントロールに長ける反面、打ち消し呪文の攻防には強くなく、着地時の応酬は【ニヴルヘイム】有利なのですが……“出されたら、ほぼ負け”級のカードを擁しているのは、やはりツラい。
このカードと何とか戦えたのは、こちらにも“出したら、ほぼ勝ち”級フィニッシャーがいたから。《船乗りを滅ぼすもの》です!
【ニヴルヘイム】を曲がりなりにもレガシーで戦えるデッキとして成立させているのは、ひとえに《濁浪の執政》のカードパワーのおかげ。
《停滞》とは関係なしで、墓地に落ちた大量の呪文を早期に喰らい、打ち消し呪文でガードしつつ、《濁浪の執政》で殴り勝つ“キレ濁浪”は【ニヴルヘイム】最速の、もっとも手軽な勝ち筋。ところが「4c豆の木コントロール」はこの実験で初遭遇の“白いデッキ”であり、信頼度が急落します。
そこで《船乗りを滅ぼすもの》の出番。《濁浪》より2枚も多くの墓地のカードが必要で、飛行もなく、普段の使い勝手ではかなり劣ります。
しかし「護法4」。レガシーでは、まして「ステイシス」が用いれば、事実上の支払い不能です。「護法」は能力でも打ち消すので、前述の《時を解す者、テフェリー》にも触られず、7/7の巨体でごくあっさりと踏み潰すことが可能。
追放領域のカードも参照にするので、《濁浪》との連続召喚が可能で、《サファイアの大メダル》でコストを軽減しても、戦闘力が落ちないの嬉しい。
フィニッシャー《濁浪の執政》4枚構成のほうが「速度が重要なテンポ戦では強い」「見た目に美しい」などの理由で、1人回しだと抜けやすいカードですが、実践的な練習のあとだと「やはり要るよな……」と思える1枚。護りの“ブルードラゴン”のおかげで、何とか五分に持っていくことができました。
サイド戦は《花の絨毯》を筆頭に、さらに苦手なカードが入ってくるので、テストプレイをする前は本気でげんなりしていたのです、気合いと奇跡の掛け合わせで、なんと6ー4。一人回しなのに、思わずのガッツポーズ。
・サイドから《否定の力》全投入+キープ基準を厳正化し、上の《花の絨毯》設置を絶対に阻止すること
・一方、こちらの《相殺》着地時には全リソースを投じる。あちらのサイドから投入される《紅蓮破》系も高確率で予防できるようになるため
・自らの能力で墓地に落ちる《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に《外科的摘出》を当てれば、「4c豆の木コントロール」側はデッキ内に勝ち筋がほとんど残らない。《神秘の聖域》での使い回しを視野にいれて、対戦相手のデッキの空洞化をこちらの勝ち筋として狙うこと
ふへぇ。このあたりを心がければ、どうにかなるかな、という印象。10のデッキの中で、もっとも時間がかかり、もっとも疲労させられた戦いでした……。
「4c豆の木コントロール」から9敗をもらい、ここまでの合計は44敗。
次。第6の相手は【ニヴルヘイム】の長所である“打ち消し呪文の総量”において、10の中で唯一、同等の装備を持つコンボデッキです。
6戦目「スニーク・ショー」
《引き裂かれし永劫、エムラクール》の登場以来、レガシーの前線に立ち続ける古強者「スニーク・ショー」!
《実物提示教育》+《騙し討ち》。8枚のキーパーツから次々と致命攻撃を放つことができ、墓地コンボやストームなどのように明確な弱点を持たない、おそらくはレガシーでもっとも安定したコンボデッキでしょう。
さて。やるか。僕の正体は対人での実践のチャンスをなかなか持てない、エアプ寸前のカジュアルプレイヤー。ところが、ときおり参加させてもらってるフリプ会のメンバー構成のおかげで、「スニーク・ショー」(と、「エスパー・ブレード」)との対戦経験は、そこそこにあるつもり。
また一介のレガシープレイヤーとしても、メタゲームでの短期的な浮沈は別として、「スニーク・ショー」がレガシー環境から完全に消えることは有り得ない、と考えます。
僕はこの「青単ステイシス【ニヴルヘイム】」を(他のオリジナルデッキも)、“今日の一時、戦って勝つ”ためだけに組んでいるわけではありません。もっと長いスパンで、レガシー環境を生き続けられればと願いながら、研ぎ続けています。
すなわち、普遍的なデッキにしたい。それならば……「スニーク・ショー」は、常に上位の仮想敵である!
メイン戦は5ー5。内容はなかなか悪くありません。「スニーク・ショー」は《暗黒の儀式》を用いる「ドゥームズデイ」などとは異なり、《古えの墳墓》などの2マナ土地を加速の主軸にしたデッキ。
言い換えれば、コンボ突入時には必ず土地を寝かせてくれます。その初撃さえ弾き返せば、返す刀で《停滞》→きれいに絶対零度に閉じ込めることが可能。
問題は、お互いが装備する打ち消し呪文の数量や種類が似通っており、その第一撃を確実に阻めるかは、手札の噛み合い次第になることですが……。
1度、「スニーク・ショー」の《実物提示教育》に合わせ、こちらは《サファイアの大メダル》。自分のターンに1マナで《停滞》。対戦相手のクリーチャーは《渦巻く霧の行進》でフェイズアウトさせ、そのまま時の果てに封印、という「ステイシス」として完璧な勝ちをおさめかけたのですが……、
《引き裂かれし永劫、エムラクール》には、有色呪文プロテクションのせいで《渦巻く霧の行進》が当たらないのでした。そのせいで負け。ウギギーッ!
ともあれ、体感では互角に近く、サイド後は6ー4。《狼狽の嵐》《否定の力》など投入できる打ち消し呪文の総量は【ニヴルヘイム】のほうが多く、初撃を弾いたところに《外科的摘出》。《実物提示教育》と《騙し討ち》を、片翼ずつ、丁寧にもぎ取る戦法が有効です。
今までの相手では八面六臂の活躍を示した、サイド《相殺》の効果が、いまひとつ薄いことには注意。
青単の【ニヴルヘイム】にとって当たり判定40枚以上の《紅蓮破》系を防げるのは良いのですが、「スニーク・ショー」の主力呪文は、やはり3マナと4マナ。ちょうどこちら側の手薄なマナ域で、物足りないタイミングがあります。
あとは「4cコントロール」時から継続して《不毛の大地》型を試しており、2マナランドが多い「スニーク・ショー」には確かに刺さりが良いのですが……うーむ。
「ステイシス」としても「コントロール」としても、【ニヴルヘイム】は常に青マナが欲しく、《島》を伸ばしていきたいデッキなのですよね。
《不毛の大地》の効果は、お互いの一手スキップに近く、得られる成果は“現状の維持”。
軽量の脅威を押しつけられるテンポ系デッキならともかく、【ニヴルヘイム】のデッキ方針に合うとは、残念ながら感じませんでした。あと、ぎりぎりで「ステイシス」モードを維持している途中で、無色マナしか出ない土地を引いたら、座ったまま気絶したくなる。
ふーむ。《目くらまし》問題の解決策と、特殊土地満載デッキに対するイージーウィンはやはり魅力で必要なため、他の手も考えておきます。
ともあれ、「スニーク・ショー」から9敗をもらい、合計は53敗。
次。第7戦は、戦略レベルというより、採用カード単位での相性で、下手すれば1勝もとれないのではと危惧していた曲者です。
7戦「黒単ヘックスメイジ・デプス」
「X」で言ったとおり、今の「黒単」系デッキの主流は《悲嘆》+《再活性》を搭載した「リアニメイト」型で、2戦目の「青黒リアニメイト+スキャム」と、ほぼ同じ構築思想。
仮に模擬戦をしても、“メイン戦は耐えの一手→サイド後に置物の対策カードを守りつつ、一転攻勢”という鏡合わせが目に見えるので……うーむ。
「実験、実験」と言ってますが、これは僕にとって責務ではなく、遊びの一環です。面白くないと、続けていられない。そこで、同じ「黒単」でも、ここまでの6戦とは別のタイプを使いましょう!
《暗黒の深部》=「ヘックスメイジ・デプス」である!!!
今まで書き殴ってきた記事の流れから、なんか僕のことを“いっぱしの「デプス」使い”だと勘違いしてくれる方が多いようで、いまだにその道の入門者ゆえ、面映ゆくなるのですが……、
僕のカードタイプは、カジュアル・ネタデッキ屋さんです(きっぱり)。
しかし、もちろん「デプス」はオリジナルデッキを作るくらいには好きで、「明日、青黒リアニメイトの海と化した大会に出ろ」と言われたら、たぶん独自チューンをほどこした「青単デプス」で出撃すると思いますが……改めて、試してみたかったのですよね。
今年の正月に軽い出来心で「X」にポストした、レガシー入門用「デプス」シリーズ。予想以上に好評をいただき、「青黒」なんか、110000viewに達していて、嬉しい以上に作者はちょっと引いたのでした……。
で。その中の「黒単」。これを改造して、今回の実験に使います!
記事のリストは独自構築で、安価な普及版でもあり……そのために苦手カードが少なくなっては実験にも練習にもならないので、再調整。4戦目「ドゥームズデイ」に、さんざん煮え湯を飲まされた“彼女”を、メインボードからガン積みしていきます。《黙示録、シェオルドレッド》!!!
たった2枚に四苦八苦していた4戦目から、デッキとしての成長が無ければ、この「黒単」には絶対に勝てません。苦手な《ダウスィーの虚空歩き》も、当然、4枚を標準装備なのだから。
【ニヴルヘイム】側の工夫は……「ステイシス」と「コントロール」両面での強化を図れる手立てがあります。それは、デッキの個性でオリジナルの武器《サファイアの大メダル》が活きるカードが望ましい……。
「プレインズウォーカー」です。
青単で使える全ての「プレインズウォーカー」を精査したところ、やはり、このカードが群を抜いて強い……!
《精神を刻む者、ジェイス》。いわゆる《神ジェイス》です。
「コントロール」モードでは言うに及ばず、「プレインズウォーカー」というカードタイプは「ステイシス」モードと非常に好相性。能力起動にタップが要らず、《停滞》下でも着実に仕事をしてくれますから。(反対に、相手が使うプレインズウォーカーもツラい)
《精神を刻む者、ジェイス》は《停滞》とは別の方向からドローロックをかけられる装置であり、超強力で継続的なアドバンテージ源であり、一時的な(ステイシス下では永久的な)クリーチャー除去でもあり、追加のフィニッシャーをさえ兼ねる、【ニヴルヘイム】にとって欲しい要素の全てを一身に集めた存在。
瞬速の《オークの弓使い》を始めとして、苦手なカードが氾濫する現代レガシーでは、多くの「プレインズウォーカー」たち……《神ジェイス》でさえ見かけにくくなっているのが現状です。しかし……4マナ域から3マナ域にまでコストを下げ、隙を消すことができれば、往時の凄まじい強さを取り戻すのではないでしょうか?
「黒単デプス」に対しては、この「プレインズウォーカー」型で挑みます。
結果。メイン戦は5ー5。サイド戦は7ー3。「ジェイス」採用だけでなく、地味ながら重要な調整として、《停滞》維持用のバウンス呪文ブリンク呪文の割合を《錬金術師の挽回》4、《テフェリーの時間改変》2に変更。
自分側の都合だけを考えるならば、もっとも「ステイシス」モードを維持しやすいのは、《停滞》を明滅させれば再び唱える必要がない《テフェリーの時間改変》です。しかし、それでは盤面コントロール用の札が少なすぎると判断。この呪文構成だと《ジェイス》と合わせ、6枚のカードを対戦相手の盤面への干渉に用いることができます。
単純な攻撃型クリーチャーは《停滞》で封じられるので、苦手な常在型能力持ちクリーチャーが主なターゲット。そう考えれば、この枚数でも「黒単」と渡り合うことができました。
1本目から「黒単デプス」のオリジナル裏必殺技、《セッジムーアの魔女》+《煙霧の連鎖》を撃ち込まれたときは、どうしたもんかと思いましたが……。
とにかく危険なのは《暗黒の儀式》からの高密度攻撃で、《思考囲い》や《トーラックの賛歌》を交えた複数アクションを許せば、だいたいは死。多くの敗けの原因です。
ただ、動作の起こりの《暗黒の儀式》に《呪文貫き》などのソフトカウンターを丁寧に当てていければ、しばらくは1ターンにワンアクション、普通の速さのデッキになり、「ステイシス」の世界へと落ちてくれます。
あれだけ恐れた《黙示録、シェオルドレッド》を早出しされても、バウンス呪文で手札にお帰り願えば、《停滞》下で再び4マナを揃え直すのは気が遠くなる未来。そのころには《濁浪の執政》が対戦相手を屠ったあとか……“更地に《ジェイス》”が盤面を掌握しきっています。
ただし《暗黒の深部》のほうも厄介で、とくに《演劇の舞台》を用いた「ステージデプス」からコンボに入られたら、打ち消し呪文が無力に。インスタントで撃てるバウンス呪文を握っていなければ……そして、それを前方確認の手札破壊から守りきれなければ、女神の一撃でゲームエンド。2番目に多い敗因でした。
「黒単デプス」と【ニヴルヘイム】とは、デッキパワーや巡航速度、相性差が互角に近く、お互いの長所が活きる一進一退の攻防が多くて、楽しい対戦でしたね。
ふぅ。「黒単デプス」からは8敗をもらい、7戦目までの合計は61敗。ここまでの中盤戦で、またいったん記事を区切りましょうか。「青単ステイシス【ニヴルヘイム】」の長い実験も残りは3戦のみです。それでは、また。
3月27日追記。後編はこちら↓