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【MTG レガシー】 「プレインズウォーカー、父になる」その5/青単フルパーミッション 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】
1.初心者、復帰勢、それから親であるプレインズウォーカーの方に、安価で扱いやすい“単色”のレガシーデッキを紹介するのが、この記事の目的。
学校でわが子が「そ……勝負やね? フォーマットは、レガシーでよろし?」などと、ものやわらかに威圧されたときのために。
まあ、実際に子どもたちの「護身用デッキ」にレガシーがふさわしいかは……周囲の環境や進学先にもよるとは思いますが。
どちらかといえば、「親になっても、趣味から身を引く必要はない……自分や家族に無理がないペースで楽しみましょう」と伝えたいのが本当のところ。
それも5回目。残された色は「青」だけです。
貴方にとって、美しいデッキとは? 子どもたちに託したい「特別なデッキ」はありますか? このシリーズを通して、何度も同じ問いかけをさせてもらいました。
いつもと反対に、僕が問う側ではなく、回答する側になったのなら。
まっさきに、この青いデッキの名をあげます。個人的には、史上もっとも美しいデッキだと信じているのですが。
伝説的デッキビルダー、ランディ・ビューラーが世界選手権1999でスタンダード部門全勝を達成した「フルパーミッション」デッキ=「青単ドロー・ゴー」。
役割のはっきりしたカードが4枚ずつ投入され、無駄が一切ない、極度に純化されたデッキです。搭載された打ち消し呪文の総数は、実に17枚。対戦相手は全ての呪文を解決する前に「Permission(許可)」を求める必要があるため、「パーミッション」デッキ。自分のターンにはドローするだけで何もせず、即座に相手にターンを返すので「ドロー・ゴー」。
プレイングの方針は、簡単です。対戦相手のターン終了まで打ち消し呪文を構え続け、脅威が繰り出されるのを虎視眈々と、“待つ”。もし何もなければ、余ったマナを用い、インスタントのドロースペルで手札の量や質を向上させていきます。
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美しくも悲しいイラストです
2人の運命を思えば
僕は同じ種類のデッキを、3ターン目までが勝負の「速攻」デッキの一種だと考えて、プレイしていました。
なぜなら、全力をもって3ターンを凌げば、有利。5ターンを守りきれば……実質的なゲームは終わりです。対戦相手よりも量と質、共に上回る手札で複数の打ち消し呪文を構え続けるという、けっして「負けようがない」状態になるから。
打ち消し呪文が弱体化した現代のスタンダード環境では有り得ない、「受け」に特化したデッキ。「パーミッション」戦術を成立させる前提になっていたのが、このカードの存在です。
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《対抗呪文》。全てのトレーディング・カードゲームにおける“打ち消し呪文”の祖。書かれているのは、わずか3語。「Counter target spell」。2枚の《島》さえ立てておけば、どんな呪文も無に帰す、「青」の象徴。
「5版」+「ミラージュ」で「マジック:ザ・ギャザリング」を知り、「青」を好んで手にしていた僕にとっては、どんなデッキを組むときも、まず4枚搭載がスタートライン。
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しかし……第8版で再録されず、以降はスタンダード落ち。当時は嘆き、ほとんど同時に生活環境が一変したこともあり、「マジック」から距離をおくきっかけにもなりました。
今となっては……納得できます。
《対抗呪文》はスタンダード環境には、オーバースペックです。青2マナであらゆるカードと1対1交換でき、3マナ以上の呪文全てにテンポ面で有利。盤上を制圧したあとは優位を固定し、逆転を許しません。
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小型クリーチャーは単騎で壊滅
「これって、壊れてる」
ランディ・ビューラーの「青単ドロー・ゴー」の頃だけでなく、《対抗呪文》が多くのセットに標準収録されていた時代、補色やフィニッシャー、立ち位置は様々でも、ほぼ必ず「パーミッション」デッキか、それに類する青いデッキが環境に存在していました。
「青」を愛用していた自分がいうのもどうかと思いますが……初心者のゲーム体験のために、よろしくない状態です。
完成された「パーミッション」デッキは「コントロール」でありながら、対戦相手に何もさせない「ロック」デッキにも近い性質を帯びます。
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《対抗呪文》を標準装備(げんなり)
そんな拘束力を誇るデッキと、3~5戦に1度ずつくらい遭遇する環境は、健全とはいえません。それも、ローテーションを越えて。試合も嫌ほど長びくし……ミラー戦なんか、ひどいもので。
あれから、長い時が過ぎました。第8版で《対抗呪文》が再録を逃してから、今年でちょうど20年。近年のスタンダード環境で「パーミッション」デッキを手にする機会は、ほぼ皆無です。しかし……レガシーでなら? 僕は以前の記事でこう言いました。レガシーは寛容だと。
膨大なカードプールが、あらゆる戦法に工夫の余地を与えてくれます。それに、レガシーにはどんなデッキも受け入れてくれる「度量」があります。
こう言っては何ですが……凶悪デッキがひしめくレガシーの世界でなら、「パーミッション」などは“優しい”部類。遠慮抜きで負けたり勝ったりを楽しむことができるでしょう。
よし。スタンダードからは失われた「パーミッション」デッキを、最新カードも駆使し、レガシーで甦らせよう。これが第5回、「青」のテーマ。
少なくとも僕にとっては《対抗呪文》を搭載した「青単フルパーミッション」こそが、“思い出”と少しの“悔い”に結びついた「特別なデッキ」だからです。
2.とはいえ……難しいテーマです。まず、記事の約束事として、このカードを使えません。
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「青単」なのに、《意志の力》が不在!!? 「青」を使う理由にも成り得る、レガシー環境を象徴する打ち消し呪文。攻防ともに軽量カードの撃ち合いとなるレガシーで、“0マナであらゆる脅威への即応”ができるのは最上級の特権。特に、1ターン目や2ターン目に軽々と致命攻撃を放ってくるコンボ戦への備えとして。
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しかし……この記事は初心者や復帰勢、親であるプレインズウォーカーに、安価なレガシーデッキを紹介するためのもの。
「高くても二千円くらいですッ!」と言いつつも、構築上のこだわりのため、しばしば三千円級カードも使ってしまう、縛りと意志がゆるーいシリーズでも「デッキを組むために、まず《意志の力》を4枚買ってください」は、マズイ……。
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この点については……考えます。“無いことを強みにして、個性的な構築に活かすこともできるはず”。そんな、他のシリーズでも唱え続けてきた主張を貫き通すために。
強力な《意志の力》とて、固有の弱点があり、装備しなければ絶対に敗れる“無敵”のカードなどではない……そのことはレガシーに触れたことがあるプレイヤーになら同意してもらえるはず。
どちらかといえば、別の課題のほうが難問です。《対抗呪文》は……今のレガシー環境ではなかなか見かけにくいカード。コントロール色が強くて青が濃いデッキで、せいぜい1枚か2枚……アクセントとして見かける程度で。
それは、なぜか。
先述のとおり、レガシーは軽量呪文の撃ち合いが主体の環境。言い換えれば、1マナ呪文こそがレガシーの花。1ターン目に通したこの1枚だけで、簡単に敗れ得る世界です。
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恐ろしい話ですが、スタンダードを長らく席巻していた《対抗呪文》でも、重い。2マナを構えるあいだに「デルバー」は2アクション+ピッチスペル。手数の差は歴然で、速さのハンデを埋めるために、新しい武器が要ります。
この点については……心当たりがありました。何とかします。というより、そのカードが刷られたからこそ、レガシーでも「パーミッション」戦術が成立するかもしれない、と考えた呪文があります。デッキリストは、こう!
「青単フルパーミッション」。この記事を作る前、MTG Goldfishで《対抗呪文》を使っているレガシーのコントロールデッキ、2年分のデータを漁っていました。
念のため、晴れる屋さんのデッキ検索でも「青単コントロール」の項目を調べてみて……つい最近、レガシーリーグで5ー0達成したリストを見つけたので、大いに刺激を受けたり勇気づけられたり。
(この項目が更新されるのは、4年ぶりの壮挙! 美しいデッキで、だいぶ影響を受けています。興味ある方はぜひ調べてくださればと)
「青単」でも、勝てる。そのうえで……やはり、と思いました。好成績のリストには、このカードが採用されています。《軽微なつまづき》。
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今の、間違い。こちら。
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レガシー禁止カード、ヴィンテージ制限カード《精神的つまづき》との性能差から疑問視されがちでしたが……適切な環境とデッキで使えば、非常に高い効果を発揮します。特に低マナ域の攻守に難がある「パーミッション」デッキにとっては、天恵のようなカードです。
《対抗呪文》の最大の死角である1ターン目の1マナ呪文を《軽微なつまづき》によってシャットアウト。《瞬唱の魔道士》による使い回しも視野に入れています。
打ち消し呪文の総数は、《緻密》や《大魔導師の魔除け》を合わせると、16枚。「デッキ内の21%以上=60枚デッキでは13枚以上が打ち消し呪文」という「フルパーミッション」の定義に当てはまります。
さらに今回のバージョンは、ちょっと個人的な趣味に走って、「奇跡」コントロール型。打ち消し呪文を潜り抜けた危険なパーマネントを処理する手段に、青の「奇跡」呪文《消え去り》や、探査呪文《漂流》を採用。
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珍しい選択だと思います
《緻密》も絡めて、ライブラリートップに戻した脅威は、《予報》や《思考掃き》で弾くこともできます。
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レベッカ・グアイのイラストも美しい……
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以前はこれだけだったのに↓
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4枚の《氷の中の存在》、2枚の《壊滅的大潮》まで採用しているのは、小型クリーチャーを横に並べる「エルフ」などを強く意識しているからです。特にあのデッキには「パーミッション」のコンセプトを1枚で全否定してくる天敵が潜んでいましてな……。
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無理。絶対に定着は許さん、という覚悟。
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古の「青単ドロー・ゴー」での《火薬樽》に相当するのが《氷の中の存在》。
安全に置くタイミングを計りつつ、まずは土地4枚への到達を目指すことに。そこから先は、奇跡呪文の使い回しに《神秘の聖域》を活用できるようになりますから。
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さらには、切り札《大魔導師の魔除け》を連発できるようになれば、大きく有利。
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土地構成はなかなか悩むところで、「フェッチランド」搭載がもっとも簡単な強化案。ただし今回は、「1点ずつのライフ損失が痛い」+「《神秘の聖域》の総数を増やしたい」+「予算」という理由で、《島》14枚+《神秘の聖域》4枚というシンプルな形にしています。
ライブラリートップをリフレッシュする手段が豊富なので、今の形でも意外と困りませんが、《渦まく知識》の強化や、《漂流》のための墓地肥やし、《神秘の聖域》サーチ用に。
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今はこれがお安いかな
今回ご紹介したのは相互シナジー重視の型です。おもしろカッコよさ重視に寄せて、フィニッシャーに《生ける卒論、オクタヴィア》を採用するバージョンも考えていたのですが……。
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「世界の“青単コントロール”巡り」をしているとき
心を掴まれた1枚
欲をいえば、回避能力がほしかった
もちろん、単体で強いカードを優先していくのも有効です。たとえば、こういう。
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基本的にはこちらから動かず、“待つ”デッキです。そういう戦い方を崩さなければ、《意志の力》不在はむしろ、個性にもなり得ます。
「パーミッション」は手札の量と質が生命線。“1枚を余計に失う”というデメリットは小さなものではありません。全体に手札が減りにくい構成を目指しているので、対戦相手よりも常に分厚く構えて、“自分の時間”を待ってください。
そんなことを言いつつも、丸腰では怖すぎるから、悩んだ末にけっきょく《緻密》も採用しちゃってるのですが……。《アロサウルス飼い》や《魂の洞窟》の「打ち消すことができない」という文言に弱すぎるデッキなので、対策は多いほうが安心です。
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まあ、4マナ到達以降はアドバンテージもとれるし……
同種と比べて、価格がお安いのも嬉しい
ほかの弱点としては「青」に統一されたデッキの宿命で、定番の《赤霊破》《紅蓮破》に対し、当たり判定が特大です。なんと、40枚前後。サイドボーディング後はこちらも《水流破》を追加と《狼狽の嵐》の増量で、「青」と「赤」、「水」と「火」との、伝統のスペル戦に臨んでください。
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ひどいクリティカルヒットを見せる1枚
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「まあ、まあ、落ち着いて」↓
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3.ふぅ。コントロール系の常として、あとは実際に戦いながら情報を集め、細部を調律していく必要があると思います。
むかしむかし、「青」の打ち消し呪文こそが「マジックの花」だと確信し、腕をふるっていた、古のプレインズウォーカーのために、ぜひ。
本当にねぇ。あれから、長い……本当に長い時が経ちました。夜を徹して「マジック」を遊んでいた友人たちと、今も連絡をとれるのは、ほんの1人か2人。それも年賀状くらいのやり取りだけで。
「マジック」は対戦相手を必要とするゲームです。“あのころ”の話を気軽にできる相手は、もう近くにはいない。それが、かすかに痛む“悔い”です。
若い日の自分がもっと賢明か、または我慢強かったら? 意識して、繋がりを残しておけば? あのとき、軽はずみなことを言わなければ?
「青」は、時を支配する。少なくとも、そう定められています。そういう意味では、僕は「青」使いとして未熟もいいところ。
いや……難しいですね。過去を覆し、悔いを無かったことにする魔法は「青」にも無い。「テフェリー」でさえも、不可能に近いことです。
長いストーリーの中でそれを成功させたのは、僕が思い出せる限りだと、《トレイリアのアカデミー》での「銀の時間逆行実験」か、「タルキール」で《精霊龍、ウギン》を甦らせた「サルカン・ヴォル」だけ。いずれも、とてつもない代償を払っています。
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「サルカン・ヴォル」は己のルーツを失いました
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それとも“過去”を変えずに、いっそ“悔い”のほうを消してしまう? 「ジェイス」がそうしていたように。
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“無かった”
……子どもがいる、というのは、良いことです。
人生の出来事、1つでも無かったら、この現在にたどり着くことは有り得ない。微小なズレが生じただけで、この子たちとは出会えなかったかもしれない。
もし、過去に行き、全てを思うがままに書き改められる大魔法があったとしても。
僕は決して唱えません。子どもたちが消える可能性がある、と考えるだけで、心底、“恐ろしい”からです。
わが子がここにいる、という覆しようのない事実が、今を、それまでの親の生涯を全肯定してくれる。過ちや卑怯や恥や未熟や……過ぎた時の全てを赦してくれる。
その恩義に報いるため、精いっぱいに慈しみ、愛情を返す。それこそが「フェア」である、と僕は考えます。
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ホンマに「白」はよ……
ま、信じましょう。こちらの目からは見えないだけで、友人たちもそれぞれの道をしっかり、自らの足で歩いているはずだと。
いずれ、ばったり、分かれた道程が交わる機会もあるかもしれません。
以上が、僕の“回答”で、今も「青」を好んで使う理由です。
あのときの熱気を思い出し、彼らのうちのだれかが、ふらりとカードショップや草の根大会に顔を出すことも無いわけではないでしょう。
そのとき、僕がテーブルの向こうで《島》2枚を立てて、かつてと同じく《対抗呪文》を構えてきたら……。呆れて、笑うでしょうね。お互いに。
「青単フルパーミッション」。時を越えた、良いデッキです。それでは、また。
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テフェリー