【MTG レガシー】 「青黒ダークデプス」の挑戦その4 戦闘編/対「スニーク・ショー」 【初心者、復帰勢に向けて】
1.「スニーク・ショー」! レガシー環境を象徴する「コンボデッキの王者」が誕生したのは2010年のこと。なぜ、2010年だったのでしょうか? 4月に「エルドラージ覚醒」が発売され、このカードが登場したからです。
レガシーの「女神」。《引き裂かれし永劫、エムラクール》。巨大すぎるマナコストを度外視すれば、今もなお……もしかしたら未来永劫に至るまで、単体のクリーチャーとしての性能、制圧力、決定力でこのカードに比肩する存在はいません。
興味深いのは、デッキのほうが先にあって、幸運にも史上最強のフィニッシャーを手に入れたわけではない、ということ。《引き裂かれし永劫、エムラクール》を最大に活かすために考案された専用デッキこそ、「スニーク・ショー」だったのです。
《エムラクール》のためのデッキ「スニーク・ショー」登場から13年。多少の浮き沈み、カードの入れ替えはあっても、このデッキは常にレガシー環境の最前線に立ち続けてきました。その骨子は不変です。色は青と赤。この2枚を自由に使うために。
《実物提示教育》か《騙し討ち》で
「手札から《引き裂かれし永劫、エムラクール》などの超大型クリーチャーを、マナコストを無視して戦場に出現させる」
……以上。
シンプル。それゆえに、強靭。
「リアニメイト」や「The Spy」のように「墓地」という分かりやすい泣き所がなく、「Doomsday」や「ANT」のように状況に応じた呪文を複雑な手順で唱える必要もない……これは《スレイベンの守護者、サリア》をはじめとするヘイトパーマネントの影響を受けにくいだけでなく、トーナメントなどの長期戦では計り知れない恩恵となります。
半日近く戦い続けたあと、疲弊しきった頭脳で《最後の審判》から正しい5枚を選ぶのは……もしくは、決勝をかけた複雑な局面、喉がカラッカラに渇くほど緊張しきった心で「ストーム」を数えぬくのは、難しい作業です。平時の練習ならともかく、よほどの習熟度でないと、魂を削られかねないほどの。
まあ、どちらのデッキも“黒”……取り扱いが危険だからこそ、魔力的な美と輝きを放つのだとも言えますが。
その点、“扱いやすさ”という特性は、武器です。
《実物提示教育》か《騙し討ち》の一撃で勝ち得るので、乗り手のコンディションに左右されにくく、安定して高い性能を発揮しやすい……小細工などは不要な「王者」の……いえ、「女神」のデッキ。さあ、みんなで「スニーク・ショー」を組もう!
これが、前回にお伝えしたとおり「青黒ダークデプス」が対戦会の後半で戦う、もう1つの相手。こちら側のデッキリスト等は前回の記事をご参照ください(2枚の《世界のるつぼ》だけを、別のカードに差し替えています。理由は後述)。
まちがいなく、強敵。ただし、留意したいことが1つ。今回「スニーク・ショー」の乗り手は、まだレガシーに詳しくない“初心者”さんだということ。
2.その方の「スニーク・ショー」と向かい合い……正直に思ったことがあります。このままだと、何重もの意味で「アンフェア」かもしれない、と。
1本目は後手。配られた7枚の手札には、《思考囲い》《狼狽の嵐》《意志の力》……「デプス・コンボ」達成こそ早くありませんが、水も漏らさない妨害がずらりと揃っています。それらに加え、早期に着地すれば、手札の質をさらに跳ね上げつつ、積極的に攻めにも回れる《帳簿裂き》。
お相手のデッキが「スニーク・ショー」だとわかったうえで、どこかの大会での遭遇戦なら? よし。これほど完璧な手札はありません。デッキの全力をもって、仕留めにかかります。
しかし、これは交流を主な目的とした練習会。ただ勝って、一方的に気持ちよくなるだけでは、意味が薄いのですよね……。
「アンフェア」。
そう感じた理由、1つ目。こちらだけお相手のデッキ内容を隅から隅まで知っています。なにしろ、この方の「スニーク・ショー」の調整を前回の対戦会のときに手伝いましたから。その結果、「試作型」は見事に敗れました。
しかし、こちらのデッキはその後も紆余曲折とアップデートを重ねています。そして、参考資料はなし(このニッチな記事のほかには)。何しろ「青黒ダークデプス」は、自分以外に使い手がいるかさえわからない、ローグデッキ中のローグデッキ。もし「己がそうだが?」という方がこの記事を読んでいたら……ぜひ、ご一報ください。切実に。
お互いのデッキに対する、情報量の格差がありすぎるようです。できるだけ「フェア」な状態で、どちらもゲームを楽しむために……まず、アイサツをする必要があると感じました。ただし「アンブッシュは1度だけ認められている!」。
こう言っては僭越ながら……1本目、必ず獲ります。後手2ターン目に《思考囲い》。《実物提示教育》を射抜くことで、次ターンのコンボ達成を妨害。手札に《全知》があることも確認。
なるほど。《全知》採用の「オムニ・スニーク」型。何らかの理由で、以前の形に戻しているようですね。《狡猾な願い》からのシルバーバレット戦術が可能で、攻撃を介さないコンボルートを持つ他、あらゆる状況への高い対応力を備えています。
しかし、流行している最新型と比べれば、平均的な速さや鋭さでは一歩を譲るという印象。「スニーク・ショー」の強さを次の段階へと押し上げた《偉大なる統一者、アトラクサ》も不在と見て、差し支えは無さそうです。
こちらが付け入る隙も、そこでしょう。妨害も加味した総合的な速度では「青黒ダークデプス」のほうが、おそらく上。3ターン目以降、《帳簿裂き》+《思案》で不要な手札を入れ替えつつ、《敵対工作員》も攻め手に加えます。
2体のクリーチャーでライフにプレッシャーをかけつつ、追加の《思考囲い》を引き込んで、お相手をさらに減速させます。
「スニーク・ショー」がコンポパーツを集めきるよりも一足早く、《吸血鬼の呪詛術士》と《暗黒の深部》を揃えることができ、「ヘックスメイジ・デプス」完成で、勝利。
ふぅ。かなり、ほっとしました。無事に、「こんなふうにして、勝つデッキです」というアイサツを済ませられたようなので。
3.対「スニーク・ショー」のサイドボーディングは、あらかじめ決めてあったので、手はずのとおりに。
今回の戦いではこちらのサイドボードをオープンにし、サイドインしたいカードの意図と狙いを説明させてもらうことにしました。
対「スニーク・ショー」でまず欲しいのが《トーラックへの賛歌》。たとえばお相手のリストだと手札2枚を消費する《意志の力》か、ケアが容易な《目くらまし》以外では防ぐことが難しく、直撃したときはそのままゲームエンド級の差をつけられる古代呪文。後述するサイドカードたちのパワーを倍加させる役目もあります。2枚を投入。
それから《ダウスィーの虚空歩き》。攻撃力も優秀ですが、今回の対戦で必要になるのはその能力のほう。
もし仮に、このクリーチャーが戦場にいる状態で《引き裂かれし永劫、エムラクール》を手札破壊で墓地へと落とせれば? 《エムラクール》が自らの誘発型能力で「久遠の闇」=「ライブラリー」へ逃げ帰る前に、置換型能力で虚空に捕らえ、こちらの呪文として放つことができます。もちろん、決まれば必殺。これも2枚を投入。
《外科的摘出》2枚も投入。手札破壊で撃ち落とした《実物提示教育》《騙し討ち》のいずれかをデッキから全て追放し、動きを徹底的に鈍らせます。運良く、両方の足首を掴めれば……それはそれで、ゲームエンド。
サイドボードから入れたいカードは、以上の6枚。どこに触れても半身をもぎとる、特大の機雷ばかりを用意したつもりです。
外したいカードは、毛が生えた《囁く工作員》でしかない《敵対工作員》2枚。攻撃力とコストが過剰で《赤霊破》系の標的になってしまう《濁浪の執政》2枚。サイドカードに触雷させる方針ならマナ加速の必要は薄いので《水蓮の花びら》2枚。以上の6枚。
「アンフェア」だと感じた理由、その2。おそらく、このマッチアップ……はじめから「青黒ダークデプス」が有利です。サイドボーディング後はなおのこと。
……このところ、レガシー環境では大きな変化が続きました。頂点捕食者として君臨してきた「URデルバー」の《表現の反復》、「イニシアチブ」の《白羽山の冒険者》の禁止。
その一方で、上でも紹介した《偉大なる統一者、アトラクサ》を擁する「アンフェア」デッキたちの台頭。
もちろん、そう単純な話だけではなく、環境の状態は今も刻々と移ろっているのですが……僕にはメタゲームの衰勢を占う能力がなく、役目でもありません。
ともかく、新《アトラクサ》をもっとも活かせるデッキである「スニーク・ショー」と「リアニメイト」は仮想敵の上位として、意識せざるを得ない相手でした。
特に「青黒ダークデプス」は、最初から対コンボ戦を強く意識して開発したデッキ。練習試合なのに、こちらだけ相手へのガードを上げた状態なのは、不公平だろうと感じたのです。
2本目。先手のお相手は……惜しくも2マリガン。1ターン目は《古えの墳墓》から展開。
お相手は色マナが苦しそうな初動でしたが、次のターンには「フェッチランド」から《Volcanic Island》、そのまま《思案》まで繋がり、マナ量は充分に。
マリガンによる枚数損もデッキ間の相性も飛び越えて、《実物提示教育》の一撃さえ押し通せば、勝つ。一切の不利を覆せるパワーこそが「スニーク・ショー」の魅力の1つ。
手を緩めるのは不遜で、油断は「コンボデッキの王」への不敬行為。すでに危険域にいると考えたほうが良さそうですね。後手番、こちらの2ターン目に《思考囲い》。
コンボパーツを落とし、残った手札には《意志の力》2枚、《紅蓮破》1枚が見えました……なるほど、分厚い守りです。普通のコンボデッキなら1枚ずつ防壁を切り崩す必要がありますが……今回はその硬い手札、活かす機会の無いまま、氷漬けにさせていただこうと思います。
決着まで、こちらからはもう、一切の呪文を唱えません。
《演劇の舞台》を戦場に。次のターンに《暗黒の深部》。
《演劇の舞台》を氷の無い《暗黒の深部》のコピーにすることで、「マリット・レイジ」を呼び起こす「ステージ・デプス」コンボ。土地の起動型能力だけで完結するコンボなので、《意志の力》などの打ち消し呪文では妨害が不可能。
お相手のターン終了時、「マリット・レイジ」顕現に成功。そのまま攻撃で、勝利です。
3.さて、3本目は、少し変則。練習会ならではの提案をさせてもらい、こころよく同意してもらえました。
「お互いに手札をオープンにして、1手ずつ相談しながら、ゲームを進めてみませんか?」
僕のほうも「スニーク・ショー」の初手がどんな様子で、コンボ達成まで実際にどんなふうにゲームを進行していくのか、興味があったのですよね。
あちらは先手7枚でキープ。こちらは後手1マリガンで6枚キープ。
まず、「スニーク・ショー」に配られた7枚。土地の他は、《実物提示教育》《血染めの月》《渦まく知識》。土地は4枚と多めですが、必要なカードが過不足なく揃っています。対戦相手の視点から見ても、良い初手だと感じました。
一方、「青黒ダークデプス」に配られた6枚。《暗黒の深部》を含んだ土地3枚の他は、《帳簿裂き》《トーラックへの賛歌》《水蓮の花びら》。うーん。お貧弱!
しかし、まあ、2マリガン目に挑戦したいほどではないかな……《帳簿裂き》の活躍に賭けることにし、これでキープします。
何かアドバイス出来ることがあるかも、と考えていたのですが、差し出がましいことを言う必要など、ほとんどありませんでした。
提案したのは、この一点だけ。
「《渦まく知識》を撃つのは、待ってください」
1本目、2本目でお見せしたとおり、こちらは黒いデッキで、《思考囲い》や《トーラックへの賛歌》……手札破壊呪文によって情報を集め、ゲームの間合いを計る習性があります。
特に危ないのは、コンボ突入寸前のターン。マナ量やドロー呪文を撃った回数などから、気配を嗅いで、キーカードを狙ってきます。そのときまで《渦まく知識》を温存しておけば、コンボパーツをライブラリートップに逃がして守ることができますから。
実際の立ち回りでは、こちら後手2ターン目に《トーラックへの賛歌》。「スニーク・ショー」は対応して、《渦まく知識》。ライブラリーのいちばん上に《血染めの月》、2番目に《実物提示教育》という順番で逃がしました。
ダイスを振って、落とせたカードは《定業》と余った土地。事実上の空振りです。
さらに、返しのターンに置かれる《血染めの月》を防ぐ術がありません。全ての特殊土地が《山》に。
《月》のせいで、こちらの勝ち手段はだいぶ限られてしまいました。まず思いつくプランは、《暗黒の深部》を氷の無い《山》として戦場に置き、《天上都市、大田原》で《血染めの月》を手札に戻すこと。「マリット・レイジ」降臨で、友情コンボ成立です。
即時の決着を狙えるのは魅力。ただし、デッキ内に1枚の《大田原》を探す必要があり、かなりの時間を稼がないといけません。
次に考えられるのは、クリーチャーによる攻撃で勝つこと。こちらのほうが現実的でしょうか。サイドボーディングの都合でデッキ内のクリーチャー枚数を減らしており、こちらのプランもそれなりに時間はかかります。
どのみち、《帳簿裂き》を出しておいて損はなさそうですね。
「謀議」によって《意志の力》《外科的摘出》を立て続けに引き込むことに成功。《実物提示教育》の一撃を防いで、そのままゲームから追放し、遅延を図ります。しかし、すぐさま《騙し討ち》が戦場に。波状攻撃! これはちと、マズイかもしれん。
赤マナから《グリセルブランド》の出現。ライフを削っておいたので、そのターンの即死こそありませんでしたが、7枚ドロー+攻撃後、「絆魂」での7点ライフを用い、追加7枚ドロー。次のターンに《引き裂かれし永劫、エムラクール》が走ってきて、敗け。
受け手に対応の間を与えない、見事な詰めだったと思います。それに「だんだん、キープ基準がわかってきた気がします」と言っていたのが、何よりの収穫でした。
4.本当にねぇ……。僕自身、ひとに教えられることがあるような立派なプレイヤーでもないのに、柄にもないことをしていると、よくわかっています。知らず知らずで「上から目線」になっていないか、内心、ハラハラし続けていました。
押しつけがましく偉そうにしてしまったことを、この場を借りて謝りたいと思います。ワガママにつきあっていただき、本当に申し訳なく……。
そう。これは、ワガママです。1本目、2本目の勝ちなんて、演武だとでも思ってもらえれば。
「アンフェア」だと感じた理由、その3。
たとえば《渦まく知識》を使って、手札破壊の影響を抑えるプレイなどは、何かの形で誰かから学んだことがないと決してわからない“知識”です。
“情報”だけではなく……初心者さんと自分との“知識”の差を利用して、一方的に攻め立てるのは、「フェア」とは言えない、と判断しました。黒いデッキを相手取ったとき、少しでも有利に立ち回れるプレイングの感覚をつかんでもらえていたら嬉しいのですが……。
言い換えます。
充分とは言えないかもしれませんが、これで条件は五分と五分に近づいたと、勝手に判断させていただきます。ハンデは必要無し。
改めて、「青黒ダークデプス」対「スニーク・ショー」戦。ここから先が、本当の意味での勝負です。「アンフェア」デッキ同士、持てる能力が許すかぎり……「フェア」な戦いをしましょう。
それぞれのデッキをメインボードの形に戻し、改めて1本目。こちら後手で、「フェッチランド」から《湿った墓》をアンタップ状態でショックイン。先手2ターン目に早くも仕掛けてきたからです。
《実物提示教育》!
強襲! 準最速パターン! お相手が急戦に打って出た根拠として、《意志の力》によるバックアップがはっきりと目で見えるようです。こちらの手にあるのが単発の打ち消し呪文なら、打ち負けて、ゲームエンド直行。
しかし……今回に限っては《意志の力》1枚では《実物提示教育》を押し通すには不充分。こちらの応手がこのカードだからです。
「ストーム」を持つ《狼狽の嵐》は、そのターンに唱えた呪文の回数分、コピーを作って一斉に襲いかかるため、複数の打ち消し呪文がないと対処は困難。
「ストーム」=1で、《実物提示教育》の撃退に成功。
切り返しとして、こちらは後手2ターン目に《水蓮の花びら》。《暗黒の深部》+黒マナ2つから《吸血鬼の呪詛術士》を戦場に。準最速「ヘックスメイジ・デプス」で「スニーク・ショー」の強襲に応じます。
《呪詛術士》を狙う《意志の力》には……こちらからも《意志の力》による返礼を。
3ターン目、「マリット・レイジ」の牙が突き刺さり、勝ちです。
……あっ。すぐ終わっちゃった! これもコンボデッキ対決ではよくあること。いまの戦いも高密度な呪文戦ではありましたが……そ、そうですね、短すぎて不完全燃焼ですよね、もう1本! もう1本、戦いましょう!
改めて、メインボードのまま……今度こそ、この日の最終戦です。
こちらは後手。《思考囲い》を《意志の力》で迎撃されつつも、《演劇の舞台》《暗黒の深部》とコンボパーツの土地を並べることで、「ステージ・デプス」の準備を整えていきます。
ところが先手4ターン目、先にコンボにたどり着かれます。《実物提示教育》……やられました。こちらの応手が、ありません。
「スニーク・ショー」の手札から飛び出してきたのは……《全知》。そして、0マナで唱えられる《引き裂かれし永劫、エムラクール》。
ついに来ましたね……! 「スニーク・ショー」、それも「オムニ・スニーク」型の全力攻撃「《全知》=《エムラクール》」。《全知》の影響下、《引き裂かれし永劫、エムラクール》が“唱えられた”ので、誘発型能力により「追加ターンを行う」。実質的に「速攻」付与。
本体の巨大な攻撃力に加え、「滅殺6」によりパーマネント6つを生け贄に捧げる必要があり、決まれば必殺の魔技。おまけに「この呪文は打ち消されない」。
「女神」の名にふさわしい壮大な攻撃です。直撃は、即、敗け。しかし……限りなく最強に近いとはいえ、完全に無敵とは言えず、対抗策が無いわけではありません。15マナ15/15の《引き裂かれし永劫、エムラクール》が繰り出す、次元を揺さぶる超攻撃を、時にはたった1マナの手品で封じられるのが、このゲーム。
《もみ消し》。
対象は……《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えたときに誘発する「このターンに続いて追加のターンを行う」。その効果、打ち消させていただきます。「まさか、そんなやり方があるなんて」と驚いてもらえたようで……何よりです! 「マジック」、楽しいです!
もちろん、これだけでは一時しのぎにしかなりません。ところが先ほど、《実物提示教育》で……こちらも手札にあるカード1枚を戦場に出す権利をもらっていました。
といっても、起死回生のクリーチャー、エンチャント、アーティファクトなどではありません。「土地」です。《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》。
1手足りないと思っていましたが……いえ。ありがたいことです。《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》から+1マナ。《暗黒の深部》からも黒マナを出せるようになって、さらに+1マナ。必殺であるはずの《実物提示教育》のおかげで、《演劇の舞台》の起動コストをちょうど揃えられましたから。
お相手のターン終了時、2マナを支払い、《演劇の舞台》、起動。氷の無い《暗黒の深部》を擬似的に作り出し、暗い水底で眠る「我らが女神」を日の下へと呼び覚まします。
テーブルを挟んで座っているのは、経験浅い初心者と復帰勢。ところが不思議な噛み合いのおかげで、どれほど実戦をくぐり抜けても、なかなかお目にかかれないであろう光景が現出しました。
「女神」対「女神」。《引き裂かれし永劫、エムラクール》対《マリット・レイジ》。「久遠の闇」を統べる「女神」と、《暗黒の深部》から目覚めた「女神」との、向かい合う2柱による頂上決戦です。
ターンをもらって、即座にパワー20の《マリット・レイジ》で攻撃。絶命に至る打撃からライフを守るために……そこにいる唯一の飛行ブロッカー、差し出してもらいましょうか?
20/20の《マリット・レイジ》と、15/15の《エムラクール》が空中で激突。数多くの凶悪な能力で武装した《引き裂かれし永劫、エムラクール》も「破壊不能」を持たないので……《マリット・レイジ》に屠られ、撃墜に成功です。
よし。ただし、プレイヤーへのトドメは、次の自分のターン。今引きの《意志の力》を構えたまま、手番を返します。お相手はドローステップに引いたカードを確かめてから……「投了」のコール。対戦、ありがとうございました。グッド・ゲーム!
5.ところが。試合後にオープンされたお相手の手札を見て、気がついたことがありました。
この勝負、おそらくは……僕の敗けですね。「スニーク・ショー」最後の手札は、3枚。土地が1枚と、《意志の力》1枚、《狡猾な願い》1枚。
どのカードが最後のドローで手に入れたものか、こちらの視点からはわかりません(おそらくは《意志の力》だろうと、推察はしていますが)。
なぜ、僕は敗れるのか。前に調製を手伝ったとき、「スニーク・ショー」のサイドボードに《残響する真実》が採用されていたからです。
「投了」をコールした場面から、仮にプレイを続けてみましょう。
《全知》が戦場に残ったままなので、0マナで《狡猾な願い》。それに対応して、こちらが《意志の力》。さらに0マナで「スニーク・ショー」側も《意志の力》。
《狡猾な願い》、解決。《残響する真実》を手札に。「マリット・レイジ」を対象に《残響する真実》。「マリット・レイジ」はトークンなので、ゲームから追放。
こうなると戦場は空っぽ。こちらは再び、1からコンボ達成を目指すか、《全知》を処理しなければいけません。
この場合は、全スペルをマナコスト不要で唱えられる「スニーク・ショー」側のほうが圧倒的に受け入れられるカードの枚数が多く、大きく有利。
たとえば数ターンを待てば……やはり、いましたね。先ほど「マリット・レイジ」に倒され、「ライブラリー」という「久遠の闇」に逃げ帰ったはずの《引き裂かれし永劫、エムラクール》を無事に引き直しました。
再び0マナで唱えて、今度こそ……「スニーク・ショー」の勝利です。
最後の勝負は、どちらが勝ったと判定するべきか、僕にはわかりません。ただ1つ。ほんの少し視点を変えれば、たどりつく風景はまるで違う、ということ。
僕も……自戒しなければなりません。まだまだ、気づくことができない兆しや、見えていない道筋のほうが多いのだろうなぁ、と思って。何しろお互いが、まだまだ同じ初心者なのですから。
その方は「スニーク・ショー」を自分で組んだわけではないとおっしゃっていました。このデッキは、友人でもある対戦会の主催者さんがカードを貸して作ってくれたもの。それを、そのままの形で使っているのだと。
なるほど。「スニーク・ショー」はとても良い選択だと思います。パワーがあって、乗り手のコンディションに左右されづらい……それはつまり、経験が薄くても扱いやすく、勝ちやすいデッキということですから。
初心者さんの第一歩のために、「スニーク・ショー」を託した主催者さんの思いを汲み取った上で……あえて、僕からも提案させてもらったことがあります。
いずれ……近々、「自分のデッキ」を組んでみませんか? ということ。何しろこのゲーム……その方が何十倍も楽しめますからね!
というわけで、僕がもっとも信頼している1人回しアプリとして、「Study Hall of MTG」内のWEBアプリケーション「MTG Tools」を紹介させていただきました。
操作感が爽快で、時を忘れて、何十回でも1人回しを続けたくなり、検索機能も充実しているので、既存のデッキの調整用にも、新規のデッキの開発にも、これほど頼りになるツールはありません。初心者、復帰勢の方に、絶大な威力を誇る装備品として、ぜひ。
「やっぱり、でっかいクリーチャーを出すのがいちばん楽しいですね」と言うことなので、「スニーク・ショー」と別タイプのデッキとして、
「ダークデプス! 黒単ダークデプス!!!」
と布教をしておきました。さっき実演してみせたとおり、20/20を2ターン目に出せます。
いや、実際、悪くない選択だと思うのですよね。作り方次第で初期投資は安価に抑えられるし、お試しで気に入ったのなら、そのあとの発展形も豊富で個性が出しやすいし。何より……超、カッコいい(超、重要)。
強さも侮れません。先手1ターン目、《暗黒の儀式》(50円)→《コジレックの審問》(200円)+《トーラックへの賛歌》(300円)というアイサツを撃ち込まれて、悶絶しないで済むデッキは少数派ではないでしょうか???
値段や希少性、コピーかオリジナルかという物差しは関わりなく、75枚の隅々まで、自分の目と愛で選び抜き、共に戦う……こんな楽しい遊びは他にありません。
もちろん「スニーク・ショー」を本格的にチューンしていくのも良いと思いますし、他にも何かのデッキに興味を抱いたのなら、喜んで相談に乗らせてもらうつもりです。
次は、「上から目線で」なんて無意味な心配をしないで済む、「良いライバル」としてテーブルの向こうで会えたら、と心から願います。なに、そんなのは……明日と言えるほど、すぐです。
おっと、長くなりました。今回の対戦会は、これでおしまい。対「スニーク・ショー」は……これ、何勝何敗と数えるのが適切なのでしょうか? おそらく互角……よりは、ちょい上のスコア。
「自分のデッキ」=「青黒ダークデプス」の課題点や改良点については、次回の記事で。そのときに、新カード《帳簿裂き》の評価もしたいと思いますから。
……それにしても、「女神」と「女神」の対決は、なかなかに燃えました。またいつか、あんな戦いを演じる機会が巡ってくるでしょうか。その未来を願いつつ、みなさんにも……「《エムラクール》の加護があらんことを」
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