
【MTG レガシー】「アーボーグ型ドゥームズデイ」 ~ねんがんの 《黙示録、シェオルドレッド》を てにいれたぞ!~
1.2022年9月「団結のドミナリア」で登場し、あらゆるフォーマットを速やかに侵略し尽くしたカード、《黙示録、シェオルドレッド》。レガシー環境さえ例外ではなく、多くの黒いデッキに搭載されました。かつての姿では「沼渡りちゃん」などと揶揄されていたのに……。


立派になって、うれしいよ
たとえば、リアニメイト系でも《暗黒の儀式》からの素出しに耐えられるフィニッシャーとして、デッキのアクセントに。
ちなみに、この方は《グリセルブランド》と奇妙な相性のよさを誇り、敵として対峙したときは「7点のライフを支払い、カード7枚を引く」起動型能力に14点もの追徴課税を要求できるので、即殺。ただの優しいフレンチバニラ・デーモンに変えられます。
一方で、味方につけて2枚が並んでいるときは、7枚を引くと14点ずつライフが払い戻されるというワケのわからんポイント還元率で、ライブラリーのほとんどを引ききることが可能に。

そして、レガシー環境で《黙示録、シェオルドレッド》の恩恵をもっとも受けたデッキのひとつが「Doomsday」ではないでしょうか。たちまち、サイドボードの常連と化し、2枚採用が定番に。中には3枚以上を選択しているリストもあり、「2戦目以降は、このカードで勝つ!!!」という意志が伝わってきて、清々しいほどです。
「アーボーグ型ドゥームズデイ」でも、ぜひ採用したい、と願いつつ、なかなか手が出せなかったカードです……このカードはスタンダードやパイオニア環境で黒を選ぶときは真っ先に候補に挙がるパワーカード。「団結のドミナリア」発売から3ヶ月を経て、もっとも加熱していた時期より落ち着いたとはいえ、なかなかの価格です。なにより、じりじりと値動きが続いて、タイミングが計りにくくって。

カッケーな、おい……
しかしまぁ、買いました。Wisdom Guildと毎日睨めっこをし、ネット通販のショップを巡り、掘り出し物を探すのも楽しみの内とは思いつつ、自分のデッキを未完成のままにしておくのも忍びなく。
注文した商品をじりじりと待ち、届いたあとは、息をつめてそろそろとスリーブに入れて。
ふぅ。それから《シェオル》さまを他のカードといっしょに並べ、記念撮影も撮ろうとし。デッキの撮影は初挑戦だったのですが、難しいですね!? 光の照りが、配置が!?

デッキ全体がこいつを喰らったようになるよ!?
思い描いたデッキが完成した喜びで《永遠のワーム》と化し、ぐねんぐねん、うねり回りつつ、記事も書きます。デッキに入れたのはいいが、実戦に望んでからどう使えばいいんだ、と首をかしげるようでは困るので。ただでさえ、コンボデッキはサイドボーディングが難しいんだから。
2.まずは、今日のテーマのおさらいから。

《黙示録、シェオルドレッド》。②黒黒。伝説のクリーチャー、ファイレクシアン・法務官。4/5、接死。あなたがカード1枚を引くたび、あなたは2点のライフを得る。対戦相手1人がカード1枚を引くたび、そのプレイヤーは2点のライフを失う。
4マナ4/5というマナレシオは確かに優秀。しかし、破格に軽いとは言えず、戦場に出たときにカード枚数を稼ぐ能力を持つわけでも、除去耐性を持つわけでもない……現代クリーチャーの基準からすれば、さして強いカードには見えません。
しかし、このカード……時計の狂わせ方が半端ではありません。手番が1巡するだけで、あちらは2点のライフを失い、こちらは2点のライフを得て、攻撃が素通しなら、ライフの差は8点にも。
除去耐性を持たないといっても、4マナで黒く、タフネスが5もあるクリーチャーを倒すのは、なかなかの大仕事です。

そして数少ない除去手段を探そうと足掻くこと自体、彼女の手の内。ドロースペルにも課税できるので、あっというまに危険域まで追い込めます。レガシー環境での犠牲者代表は《渦まく知識》。撃つたび、6点ものライフを支払う必要があるのだから。
一方で、こちらの《渦まく知識》には6点ライフを得る効果が追加されます。キミ、理不尽すぎやしないか???

守りに回っても強力で、積極的にライフを攻めてくるデッキ相手に大きな時間を稼いでくれます。時計の針をわずかでも遅らせれば、勝利をかっさらえるコンボデッキにとって、恩恵は絶大です。
同じく時を歪める《暗黒の儀式》を使うことで、1ターン目や2ターン目に容易く戦場に出すことができ、さらに《魂の洞窟》を経由すれば打ち消すことも不可能。除去が減らされるはずのサイドボード後は対処が困難、そして放置されれば、1枚で勝ち得るカード。これが《黙示録、シェオルドレッド》。
特に「Doomsday」にとっては、おあつらえ向きだったと思います。なにしろ「Doomsday」には弱点がありました。勝つために必ず1度は、キーカードの《最後の審判》を通さなければならないという点です。

2.以前は、多くの「Doomsday」のサイドボードに積まれていたのが《殻船着の島》と《引き裂かれし永劫、エムラクール》。《最後の審判》でライブラリーが5枚になることを利用し、「秘匿」された《エムラクール》を唱えて勝ち。

《殻船着の島》がタップインの土地で、時間が必要な代わりに、《エムラクール》は打ち消されることがなく、《忍耐》などの《タッサの神託者》にとって苦手なカードを無視でき、特に緑が混じったコントロール系へ、代わりのフィニッシャーとして機能します。

《タッサの神託者》登場前から存在する勝ち方
豪快で、カッコいいゾ
よりによって仮想敵である緑系のデッキが《耐え抜くもの、母聖樹》を装備して、《殻船着の島》を割れるようになっちゃったのですが……。

《最後の審判》は、事実上の1枚コンボ。これを通せば、自分か相手、どちらかが敗れる。そして、このカードの代わりが無いという点が、相手と場合によっては大きな弱点になります。標的として、わかりやすいからです。打ち消し呪文、手札破壊、詠唱禁止、ゲームからの追放……。ただでさえ、《最後の審判》はいったん解決すれば後戻りができない危険なカードなのに。
《殻船着の島》ルートも《最後の審判》を通さなければ成立せず、失敗が死につながるのは同じ。追加の勝ち手段というよりは、“対策カード対策”という、見た目の派手さに反した渋い役目を果たすカードたちだと考えたほうが良さそうです。
《黙示録、シェオルドレッド》が画期的なのは、《最後の審判》を経由しなくても、単独で勝ち筋として機能するところ。本当の意味で軸をずらせるカードで、キープ基準を拡大する効果も持っています。

コンボ使い、粉、キメる
もちろん《最後の審判》からの即死を狙えるなら、それでよし。《黙示録、シェオルドレッド》+《暗黒の儀式》で圧殺できるのなら、それはそれでよしです。

当然ながら「Doomsday」が使う《黙示録、シェオルドレッド》にも弱点はあります。デッキが目指す方向と軸線が違いすぎ、対戦相手のライフを奪えるカードは基本的にこれだけ(あとは、せいぜい《敵対工作員》と《厚かましい借り手》だけ。すごい、貧弱!)。
しかも伝説のクリーチャーなので重ね引きをしても戦場に2体は出せず、20点のライフを単騎で削りきらないといけません。それが不可能ではないのが恐ろしいところですが……。
つまり、いくら速いカードでも、コンボデッキ等のトップスピードに1枚でレースを挑むのは、心もとないということ。そのコンボが「自分からライフを減らし」「ドロースペルやサイクリングの連鎖」で勝利を目指すタイプのデッキなら、話はちがってくるとはいえ……おや。そういうデッキ、どこかで聞いた気が? えー……《古の墳墓》もりもりの「カーン・エコー」系?

冗談抜きで、「Doomsday」同型対決において対戦相手だけが《黙示録、シェオルドレッド》をコントロールしている状態は、想像するだけで《偏頭痛》。

《最後の審判》でライフ半減した上で、1枚引くたびに2点失う??? そんなん絶対、パイル完走できませんが。
対策は、除去を積むか、自分も《黙示録、シェオルドレッド》を戦場に出すこと。そうすれば、カードを引くたびに、ライフを2点失っては2点得るだけというカオスで無害なことに。
うーむ……スマートなのは、除去。ただでさえ、入れたいカードで枠がカツカツなのに、サイドボーディングがますます難解なことになっていきます。こいつで突けば、落とせるワケだが……。

実際のところ除去に弱いというのは、新手のクロック・パーミッション「シェオル=サマ・ゴー」として振る舞いたいとき、やはり問題です。2戦目からは除去が減らされるはずと書きましたが、《黙示録、シェオルドレッド》が「Doomsday」のサイドボードに積まれているのは周知で、もはや奇襲効果は望めません。《剣を鍬に》《孤独》《邪悪な熱気》《致命的な一押し》……こうしたカードがサイドボーディング後も残されていることが多いはず。中でも、手札もデッキスペースも消費せずに対策される《カラカス》が不味いです。

大きなハンデになる理由
ただし自分の《サリア》は除去から守る
ずるい
あああ……新ファイレクシアが《シェオル》さまの量産化に成功し、「伝説」の1文が取り除かれていれば……それこそが真の「完成」ってやつでしょう!? ちなみに、2体が横並びしていれば対戦相手の《渦まく知識》1回で12点のライフを奪えますが。うん。そら、無理。
3.簡単にまとめれば。
《黙示録、シェオルドレッド》は、放置すれば、1枚で勝負を決められる。アグロなデッキに対しては、守りの要にも。多くの「Doomsday」が2枚をサイドボードに積んでおり、3枚、4枚を搭載した強気のタイプまで存在する。《暗黒の儀式》から早期に飛び出してくるうえ、《魂の洞窟》が関われば打ち消すことができない。そして、除去には弱い。
これらが、他のデッキを使う方々にも、この機会に覚えていただきたい特徴です。
2戦目以降のサイドボーディングでうっかり除去カードを全て抜いてしまえば、このカード1枚に押しきられる可能性があります。くりかえしになりますが、ぜひとも、相応の量の除去を。

さて……。
このくらいで、喧伝としては充分でしょうか?
再録禁止カードを使わない「アーボーグ型ドゥームズデイ」は、初心者や復帰勢にも揃えやすくて扱いやすい「Doomsday」を作ろう、というテーマの作品です。今日の記事も、ある目的のために作成されています。
《黙示録、シェオルドレッド》の強力さはすでに知れ渡っている通り。
その上で「Doomsday」にとっての価値は、クリーチャーとしての性能とは別の部分にも隠されています。
実はこのカードには、呪文がかけられています。世界中にいる「Doomsday」の優れた使い手が唱え続けてくれた、タネを知っていたとしても避けられない術。
僕もこれまで、何度も助けられました。この場を借りて、感謝を。そして今日からは自分も2枚を積み、このニッチすぎる記事を通じて、後発の誰かの助けになりたいと願います。
今回のテーマ、「サイドボードに潜む《黙示録、シェオルドレッド》の存在と危険」を広めること。このこと自体が「Doomsday」の呪文です。
そして、もし、この記事を参考に「Doomsday」を組んでみたいと考え、このカードをデッキに入れるか迷っている方がいるとしたら。
今日の記事と矛盾することをあえて言えば、大急ぎで《黙示録、シェオルドレッド》を搭載することはない……と思うのです。本当に必要だと思う日が来るまで、ぜひ別の有用なカードに枠を割いてください。
それでも対戦相手は、2戦目以降、除去カードを積んでくる可能性が大きいですから。デッキに入っていない《黙示録、シェオルドレッド》の影を見て。

対戦相手の「サイドボーディングの圧迫」。これが《黙示録、シェオルドレッド》の真価ではないかと思います。
《黙示録、シェオルドレッド》が1枚で勝ち得るカードで、対策が必須というのは事実。一切、嘘はありません。そのうえで……2戦目以降も除去カードをデッキに残し続けてくれるのは、「Doomsday」側にとって真に都合がよいことです。
仮に《シェオルドレッド》を分厚く対策されても、《最後の審判》の本来の威力はまったく落ちません。むしろ、対戦相手の手札がコンボに対しては無力なクリーチャー除去に、ひとりでに化けてくれたら? 大きな有利になるはず。「Doomsday」を始めとする高速コンボにとって、クリーチャー除去とパーマネント除去を多く装備した「除去コントロール」ほど易々と狩れる相手はいません。
コンボとクリーチャー、両面の脅威をちらつかせ、的を絞らせないこと。両方に対応しようと過剰なサイドチェンジをしてくれても、デッキ本来の速度や攻撃力を削ぐことができ、こちらの得。タネ明かしをすれば簡単でも、実際の対処は難しい罠です。

いや、本当。自分が対峙する側に回ったら、ということを何度考えても……まだ確かな答えを得られません。
そのせいか、今は楽しみというより、怖さが勝るようです。いずれ来る「アーボーグ型ドゥームズデイ」が「Doomsday」と激突する日。それがいつになるかはわかりませんが、課題の1つとしてゆっくり時間をかけ、「審判の日」に対する用意をしておこうと思います。

4.ともあれ、紆余曲折あった末に《シェオル》さまを手に入れました。一安心。うれしくなったので誰かに報告したくなったというのが、本当のところです。
記事の結びとしてデッキの記念写真も載せたいと思い、いろいろ試してみたのですが、駄目でしたねー。満足する出来には写せなくて。ときどき、ニヤニヤ眺めるのに留めておきます。
買うと決めるまでの煩悶も、手にした瞬間の高揚も、《シェオル》さまには楽しませてもらいました。あとは、共に戦って、勝ちたいですね。それでは、また。
