相手の言動を被害的に捉えてしまう〜認知のゆがみとその改善策
こんにちは、精神科医のはぐりんです。
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今回は主に対人場面において、相手の言動を被害的に捉えてしまう方の認知の特徴とその改善策をお伝えしていきたいと思います。
相手の言動を被害的に捉えてしまう方は、表情や身振り、言葉などを通して得た情報をゆがめて捉えてしまう、いわゆる「認知のゆがみ」が原因と考えられています(社会的認知障害とも言います)。
認知のゆがみに関して、具体的には結論への飛躍、原因帰属バイアス、心の理論が挙げられます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、わかりやすくお伝えしていこうと思います。
一つ目の結論への飛躍は、元々は妄想の研究から見出された概念で、人間の信念を「情報」と「確信度」で考えた際に、妄想を抱きやすい人は「少ない情報量」で「すぐに確信度が強くなる」ことが判明しました。
改善策としては、まずしっかりと情報収集(質・量とも)をして整理すること、得られた情報を十分に吟味しその上で判断・決定することです。
早とちりせず、「本当にそうなの?」と問いただし、情報と確信度の精度を上げていきましょう。
二つ目は原因帰属バイアスについて。これは自分か他人、どちらかにしか原因を求めないバイアス(偏見)です。
例えば職場で同僚とすれ違った際に、「そっけない態度をとられた」「何か怒っていた気がする」と自分が捉えた『外的要因』のみで「自分は嫌われている」と判断したところ、
実はただ単に相手が前日に夫婦喧嘩をした、お金を使い込んだから不機嫌そうに見えただけ、といった相手の『内的要因』を含めずに判断し思い込んでいた、といった具合です。
「相手にも何か事情があるのかもしれない」、と相手の立場に立って考えること、つまり誰しもが帰属によるバイアスを有している、ということを認識する必要があります。
三つ目は心の理論です。他人の心を類推したり、自分とは違う考えを持っているということを理解する機能のことです。
心の理論と言えばサリーとアンの課題が有名です。詳細は割愛しますが、ある出来事を見た人と、それを見ていない人との捉え方の違いを、
観察者(幼児)が客観的に理解できているかを試す課題です。他人は自分とは違う信念や考えを持っている、ということを把握できているかどうかを試す課題です。
あるいはEyes Testと言って、人の目の部分だけの写真を見て、直感的に相手の感情を判断する能力も心の理論に含まれます。
心の理論は、自閉症や発達障害の子供は定型発達の子と比べると遅れて発達すると言われており、(時に失敗しながら)経験的に獲得していくことになります。
相手の言動を被害的に捉えてしまう傾向のある方は、今回ご紹介した三つの社会的認知のうち、どこに問題があるのか見直してみるといいかもしれません(セルフモニタリング)。
対人面以外でも、思い込みが激しい方、早とちりや勘違いをしやすい方、結論を急ぎがちな方にも当てはまるかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。