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オーストリアでのバイオリンマスタークラス最終日
お母さんはこんな綺麗な場所で朝から晩までバイオリンできるなんてこんなに最高なことある?ほら外見てごらんよ。綺麗な山と空と街が見える場所でどうやって弓を動かすと音が綺麗になるか研究できるなんて、これ以上の幸せを私は考えられないよ、と泣いている僕に言った。ちょっと先生のこと信じてやってみようとお母さんは言った。言われてみれば確かにそうだと思った。お父さんはアパートでご飯を作って、お昼をその教室に届けてくれた。確かに至れり尽くせりで泣いている自分が馬鹿らしくなってきた。
気を取り直してやってみたら、だんだん先生が求めていることがわかるようになってきた。ユーチューブでいつもみている巨匠達の手の動きはこうすればいいんだという発見もした。日が暮れるまで、弓の練習をした。
とうとうマスタークラス最終日、レッスンに先生は自分の彼女を連れてきた。僕のレッスン中、彼女はずっとレッスンを見ていた。終わった時に先生はほらみてごらんこんなに上手くなったよ!と彼女に言っていた。先生は僕に、僕は本当によく出来た時しか褒めないから僕が褒めたということは誇りに思っていいよ!とまた興奮して言った。
レッスンの最後に彼女は僕のところに来て、君がとっても上手くなったから見に来てくれと言われて来たのよと言って僕にウィンクした。余談だが先生の彼女はとても美人だ。お母さんは彼女、朝っぱらから弓使い見させられて、ご苦労だったねと言って笑った。レッスンルームから出て、目の前に聳えるアルプスがこんなに綺麗だったのかと始めて僕は気づいた。
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