祈る手、震える心〜平凡医学生の119回医師国試受験記〜
寒くて擦り合わせた手は祈りの形に似ていた。
前書き
この文章は、第119回医師国家試験を終えたばかりの平凡な医学生によって、「ハイスコアアタックに挑むほど勉強を頑張る気もないが、ボーダーラインスレスレを狙うのは怖い、普通くらいの成績を取りたい」というアンニュイでアンビバレントな気持ちを抱える来年以降の受験生向けに書かれたものである。
コスパの名の下での医師国家試験勉強の手の抜き方か、難化しようがパンリン90%安定という神々の、レベルの高すぎる勉強方法はインターネット上に多い。そして目を引く。
模試の偏差値的にかなり標準的な医学生である筆者は、「このままいけば受かるんだろうが、逆にここからどうしたらいいかわからん」という気持ちで1年間やっていた。以下のような記事を参考にもしたが、やはり他人の勉強は他人の勉強であって向き不向きがあり、全く自己投影する、ということはできなかった。
筆者は暢気で怠惰だが、心配性気味で直前にあれこれ心配してしまい、それが多大なストレスで不快であると分析していて、これを回避するために仕方がなしに手を打っているという状況である。
したがって、こういった事情を汲まない人間がこの文章を読むにはいささか時間の無駄であるので、ここで画面を閉じて日常に戻ることを強く強くお勧めする。
国試の基礎知識
医師国家試験は例年2月上旬に2日間にわたって行われる、A-Fブロックの6つに分かれた400問、500点満点の試験である。
A,Dは各論、B,Eは必修、C,Fは総論といい、総論は公衆衛生含む医師に必要な臨床の幅広い知識を、各論は臨床の更に深い知識を問い、各論に公衆衛生はほとんど含まれないという違いがある。総論各論を合わせて一般臨床(通称パンリン)と言い、1問1点、300点満点である。
必修はB,Eそれぞれ50問あり、それぞれ100点満点、合わせて100問200点満点である。パンリンよりも基本的な知識を問うものが多く、特に手技に関する問題や、医師としての倫理観を問う問題が多い。それぞれのブロックの前半は知識問題、後半は臨床問題となっていて、前者は1問1点、後者は1問3点で採点される。したがってこの3点問題をボロボロ落とすと、必修落ちが3倍速で近づくこととなる。
受験生が超えるべき関門は3つである。
①必修(B,Eブロック)で合計160点以上をとること
②禁忌選択数を厚労省の定める規定数以内におさめること(ただしこの禁忌の規定数や、どの問題が禁忌となったかを、合格発表まで知る術はない)
③パンリンで厚労省の定める規定の点数以上の点を取ること(ただしこの規定点数も合格発表までに正確に知る術はない)
これら全てを満たさなければ合格することはできない。
パンリンの合格点(通称ボーダー)や禁忌は予備校各社が予想を出していて(禁忌の予想はやっている会社とやっていない会社がある)、国試直後に6年生が気兼ねなく遊びに行けるのはこの予想システムのおかげである。
初期設定
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