高校サッカーのスターと右ウイング
水沼貴史、長谷川健太、山田隆裕……。
高校サッカーのスター、特に全国選手権で活躍したスーパールーキー(1年生レギュラー)は右ウイングばかりだった。
サッカー雑誌の歴代センシュケン特集でも、必ず水沼と長谷川は多くのページを割いて大々的に取り上げられる。それくらい、高校サッカーの歴史は右ウイングの歴史だったのだ。
それはきっと、右ウイングが、
①十代の若さ(スピード、ドリブル)が生きるポジション
②右利きの方が左利きより相対的に多く、昔は利き足と同じサイドにウイングを置いた
という、高校生の勢いが反映されるポジションだからだと思う。①は普遍的に続く事実だが、②は今と昔ではだいぶ違ってくる。
近年でこそ左サイドに右利きのCロナウド、マネ、ソンフンミンがいて、右サイドにメッシ、サラー、久保建英がいる。
でも、昔は基本的にはサイドとウイングの利き足は同じだった。深くサイドを抉って直角にセンタリング。今は斜め後ろからクロスだけど、昔はセンタリング一辺倒だった。伊東純也のような選手がもっと単純に折り返す姿こそかつての主流だったのだ。
それゆえ、水沼も長谷川も山田も、ドリブル突破からの折り返しに定評があった。
中でも、長谷川健太はすごい。名前が「ケンタ」でセンタリングがピンポイントの精度だったので、彼の蹴るボールは「ケンタリング」と言われた。
ぜひYouTubeで見てほしい。
ケンタリングは上の動画の〜0:59から。
右サイドでボールを受けて、ノールックでファーの味方に合わせてしまった。磁石でくっついてるんじゃないかと思うほど、長谷川のボールとボレーを決めた選手はドンピシャだった。
スマホで観た時は、その精度に驚いただけだったが、パソコンで観ると蹴る前にチョン、と蹴りやすい位置にボールを置いているのだ。そこも含めて名人芸である。
そして、今年の選手権の特集でナンバーワンに挙げられていたのは京都サンガF.C.に内定した安齋悠人である。彼は右利きのドリブラーだが、左サイドからのカットインを得意とする。
それは、利き足と逆サイドにカットインする今のサッカーを表しているのだ。
高校サッカーのスターに左ウイングは少ない。それは、過去は逸材が皆、右に流れ、今の有望選手は飛び級でとっくにプロになっているからかもしれない。時代は変わった。
因みに長谷川健太は、さくらももこと同級生で大野君とケンタはどちらも彼がモデルらしい。
天才漫画家にとってもケンタ少年はスターだったのだ。