夢から目を背けないと絵に誓う。
灰溜まりの空。雨模様。
思いつめたような眼をして煙草の煙を空へ上げる人。
化合物を燃焼させて煙突から出された異臭は、鼻にツンと響いて、命を震わせてくる。
そんな工場の棟棟がそびえ立つ団地は、現代社会で暮らす人間の科学技術と裏側のディープな一面を垣間見させてくれる。
その場所に勤務地がある私は、トツトツと足跡を響かせて一歩一歩を踏み出していく。
自分語りをしよう。
私は工場で働く人間だが、夢がある。作家になりたいのだ。
一人前の作家になりたい、だがお金がない。
そんな時に求人サイトをみて、給料のハブりが良かったので今も生活資金をそこで稼いでいる。つまり勤務先に100%執着しているわけではない。分かっているんだ。矛盾していることは。ただ矛盾していることを自覚してしまうと、億劫な気持ちになる。
私はよく嘘をつく人間だった。小さいころに母に怒られたくらいならいいのだが、母はメンヘラな性格であるため何かあるたびにすぐ泣き叫び、父親はそんな母にしっかりしろと声を荒げた後に30分間説得するのをドア越しに聞こえてくるというのが事あるたびに起こった。それから私は自分の気持ちに蓋をして、普通でいようと努力した。だが発達障害の私は普通という行動を持ち得なかった。普通とはいわば大多数の人間が行うことだが、私の行動・思考は奇抜すぎると言われる。高校生の美術での彫刻作品は2つの手を絡み合わせて数字の3と2をつくるという奇々怪々な作品だった。
自分の普通でない行動・思考を隠して生きていたいと思うようになり、それから私は嘘をつくのが得意になった。ただ心は晴れないままだった。
自分を表現したい。その気持ちに気づいたのは23歳になった11月だった。
嘘をついたのはささいなことというが、モヤモヤ気分で毎日を生きていくのは辛いものがある。半端な気持ちに終止符を打つんだ。
だから私はことあるごとにSNSで作品を投稿し続けている。自分の気持ちを表現したいのだ。
工場についた。その一歩を踏み出すたびに足がすくみそうになるが、夢のためなら無尽蔵に力が沸いてくる。
「心のグレーを抱えて生きる。そしていつか夢を達成する。」
あの日の空は、私の心そのものだった。
おわり
【あとがき】
雨の日は億劫な気持ちになる。そして梅雨入りのころに空を見上げてみたら、ゲームの世界で見たことがないような灰色の空があった。その空は自分の気持ちと似ていると感じました。この不思議な気持ちをNOTEというSNS媒体に載せることで物語として完成させたい。そういう気持ちで記事にしました。
表紙の絵は自分で書いた創作イラストです。気にいってもらえたら嬉しいな。
【前回の記事はコチラ】
多様性社会は"優しい言葉"なのか?|綜 (note.com)