大恋愛の終焉
3年半にも渡る長い恋愛が終焉を迎えた。
24歳、社会人2年目。
あ〜、失恋ってこんな感じだったなあ。懐かしい。
心臓が、まるで感情があるかの様に、ギュッと痛む。
自分の全てを曝け出せる人に出逢い、お互いを好きになり、色んな所に行き、喧嘩してぶつかり合った3年半。あっという間で濃くて、人生最高に幸せな時間だった。
人間というものは、当たり前を当たり前と思い込んでしまう本当に愚かなものだ。当たり前の日常がまた明日も来るとは限らないし、思っている事は言わないと伝わらない。全ての物事に感謝すべきであり大事にすべき。
頭では分かっているのに、未熟な私達はお互いに甘えていたし目の前の楽しみだけを大事にして見て見ぬ振りしていた。気がついたらもう、このまま一緒に居て幸せなのか、好きがなんなのかわからなくなってしまった。
自信がないだとか、自分では幸せに出来ないだとか、他にいい人がいるだとか、3年半を無駄にしてしまって申し訳ないだとか、そんな事を言われたって私は貴方に幸せにして欲しかったし、貴方を幸せにしたいと思っていた。けれど、完全に自信喪失し、「好きってなんだろうね」と呟いた彼に私はそんな事を言える筈もなく、「それなら別れるしかないね」と返すしかなかった。
彼はずっと泣いていたけれど、私はなんだかこれで終わりだという実感が湧かなくて、彼が永遠にティッシュを使うのを見て「ティッシュ無くなりそうだなあ」などと全くお門違いな事を考えてしまう始末。
なのに、「握手しよう」と言われて彼の手を握ったら、
涙がとめどなく出てきて驚いた。この綺麗な温かい手で私を引っ張ってくれて、頭を撫でてくれて、手紙を書いてくれた。私は何度この手に救われただろう。
ーやっぱり、別れなくても。
この言葉が喉元まで何度も出かかっては、「またそうやってハードル下げるの?」と、ある映画のセリフが頭をよぎって、なんとか呑み込む。
もしここで別れなくとも、私達はまたいつしか、お互いに甘えてしまうし駄目になってしまうだろう。
最後にハグをしたら、大好きだった匂いに包まれて激しく後悔した。同じ匂いにしたくて買った柔軟剤ももう使えないなあ。この人の匂い、大好きだったな。
「じゃあね、ありがとう」と言ってお互いの車に乗り、コンビニの駐車場を後に車を走らせる。彼は記念日をナンバーにしているのに、これからどうするんだろう。
あの信号を右に曲がれば彼の家、左に曲がれば私の家。この期に及んで尚、着いてきてくれないかなあ、などと阿呆な事を考えながら私は左に曲がり、彼が右に曲がったのをバックミラーで確認する。
これで終わりなのか。呆気なかった。
3年半という長い時間かけて積み重ねてきたものは一瞬にして崩れて、家族よりも素を曝け出していた人は一番遠い人になった。
私はまたきっといつか恋をするだろう。
到底今はそんな気分になれやしないけど。
もしそんな日が来たら、絶対に幸せにしよう。
自信喪失なんてさせないくらい愛を伝えよう。
そりゃあもう、しつこいくらいに。
ありがとう 幸せになってね
大好きだったよ 元気でね