見出し画像

不正直者

1.不正直者


3/31 ここロンドンでも寒の戻り。日中は平均11℃。季節の変わり目か、土地柄か天気がハッキリしない日が続いている。

今日から2件目のホステルだ。昨日までのところはそれなりに良かった。2段ベッドが5つの10人部屋だった。スウェーデンは第二の都市、イェーテボリ出身の女の子が日本語堪能で気持ちが少し紛れたりもした。

今日からの宿は昨日までの宿から歩いて15分ほどだ。チェックイン時間前に到着したので荷物だけを預かってもらって時間潰しにマクドナルドへ来た。

コーヒー1杯1.99£。日本円で380円程だ。YouTube見たり彼女と電話したり有意義な時間を過ごしていると、掃除をせっせとしている女性と何度か目があい微笑んでくれる。無愛想だとも思われたくないので微笑み返すようなやりとりが何回か続いた。そのうちに話しかけられる。

女「ちょっと良いですか?」

僕「ごめんなさい。英語話せません。」

それでも彼女は僕に必死に話しかけてくる。何かこまっているのか?それなら助けてあげたい。発音が良すぎたので翻訳アプリで会話をした。

女「あなたの携帯にGoogleは入ってる?」

僕「あります。」

女「少し貸してもらえますか?」

僕「勿論」

彼女にURLを打ち込むように促され、開いてみるとマクドナルドのアンケートページだった。そこからは彼女が僕の携帯を操作してた。

女「OK」

携帯をみるとQRコードと英文記載のページだ。

女「2£のクレジットだから次に使って。」

有難うを繰り返し伝えた。

凄く癒され、気付くとチェックインの時間になっていた。

今日からの宿は一階がスポーツパブになっていてスタッフはチェルシーのサッカー観戦に夢中だ。頭を抱えたりガッポーズしたりチェルシーの熱烈なファンといったとこらか。

そこがレセプションになっていて受付を済ませて部屋へと向かう。部屋は三階だ。薄暗く下水の匂いのする狭い階段を上がり部屋へ入る。すると10畳くらいの部屋に細いパイプで組み立てられたシングルベッドにも満たない小さな二段ベッドが3台。僕は1番手前のベッド。僕の数字は1。2段ベッドを見てみると↑1↓2と書いてある。下にはアフリカ系の黒人。部屋は電気が付いておらず真っ暗。彼の目しか見えない。彼は言う。

「ワッツァ!」

一気に気落ちした。ベッドにコンセントすらない。一気に落胆した。一階のパブに行き

「一泊に変更したい。友達が急にロンドンまで来たんだ。」

僕は嘘をついた。その事にまた落胆した。自分の気量の無さに。スタッフに何度か謝りその場でバーガーとビールを頼んだ。ゆっくりと頬張りながらビールを味わう。と同時に昨日までの宿を再度予約した。それも10日。

気を落ち着かせたくて彼女にテレビ電話した。iPhoneがAirPodsの充電残り10%を知らせる。そこで気がついた。AirPodsのケースがいつものところにない。マックだ!急いで電話を切ってマックへ向かう。足が痛い。ロンドンに来てから散策ばかりで1日3時間は歩いている足はマメができ、それが潰れている。だがしかし、そんな事でAirPodsを、諦める訳にはいかない。マックにつき事情を説明するがなかった。もしかしたら昼間の女性が持っててくれているかもしれない。だけど、なかった事を考えてリサイクルショップにむかう。ケースだけでも安くて50£。痛い出費だ。彼女が待っていてくれてる事を願う。


精神的にも肉体的にも疲労して歩いていると綺麗な壁画のある広場の前を通った。懐かしい匂いがした。

その方向に行ってみると40歳後半位であろう男性が2人タバコを吸っていた。1人は既製品。1人は手巻き煙草。手巻き煙草の男に煙草を恵んで欲しいと頼んだら自分が吸っていた残り少ない煙草を全てくれた。僕は何とも大事に吸い尽くした。久しぶりにタバコを吸った。臭かったが嫌気がさしていたしニコチンでリラックス出来た。

僕「これは何のタバコだ」

男「ウィー」

あっ、やっぱりな!渡航後、初めてのそれだった。

気持ちも新たに考え直したが自分の気分に合わないからと1週間泊まる予定だった予約を1泊にしたのは、とても申し訳なく罪悪感にかられた。こういうところだ。自分の気量のなさを早速痛感した。

部屋に戻りバッグを整理しているとAirPodsも出てきた。俺は何をしているのだろう。ロンドンに来て5日。この辺の地理も分かってきて浮かれていたのか?

もっと物事を慎重に考えて柔軟に旅を謳歌したい。

いいなと思ったら応援しよう!