わたしのとこやさん
草原の少し小高いところのススキが段々に薄く少なくなってきた。
草原の周辺部の草がだいぶ成長してきたので丁寧にきれいに刈り取ってもらった。
「周りがすっきりしたので小高いところも気になりませんね」
「2ヶ月近くなるのでだいぶ伸びていましたね」
わたしととこやさんの会話である。
草原とはわたしの頭のことである。60を目前に最近、薄毛になったことを感じる。特に、頭頂部は薄くなった。
ありのままを受け入れるしかない。
とこやさんにとってとてもうれしいことがあった。
先月、娘さんを嫁に出したのだ。
散髪の予約をラインで入れたときに、すぐさま「結婚式の記念写真が出来たので見てください」と返信があった。
長年、とこやさんの苦労話を聞いてきたので、今日散髪にいって散髪より先に記念写真を出されてきたことにはとこやさんの喜びがよく分かった。
新郎新婦の写真もさることながら両家の集合写真を見たときに、本当によかったと心から祝福をおくった。
わたしのとこやさんは話し好きだ。対話の名手だ。どこのとこやさんもそうかもしれない。
独立開業を考える私には参考になることも教えてもらった。
「私が理容師資格を取った40数年前には、県知事名の免許証だったんだけど嫁が資格を取った時は厚生労働大臣名だったんです。理容師も国家資格だから定期的に保健所の検査もあるんですよ。免許証は、店での掲示の必要があり必ず見られるんですよ」
「不動産業の事務所には標識の設置義務はあるんですが免許証の掲示義務はないんですよ」
とこやさんとわたしの会話である。
手に職があり、稼ぐ舞台があり、固定客があるというのはすごいことだと思う。
とこやさんは身も心も頭もリフレッシュできるところだ。