思い出探し(11)

翌日、舟山が私にLINEを送ってきた。
「伊藤、あの子と全然距離埋まんねーよ。伊藤から上手く今度3人で遊びに行こうって誘ってくれないかな?」
あの子とはもちろん沙耶香の事だ。
私は、昨日のやりとりを聞いた上で、まだ舟山がスーパーポジティブと言う事にも驚いたが冷静に返信した。
「向こうの都合もあるだろうし、また日にち置いて連絡してみるよ。でも行けるって決まってないからな。」
舟山はすぐにスタンプで笑顔に舌を出した変なキャラを送ってきた。
どこでみつけたのだろう…。

その日の夜沙耶香に連絡したが、何やら話したそうな雰囲気だったので直接話を聞く事にした。
 沙耶香の家に行って、部屋に上がらせてもらう。
 沙耶香は多趣味もあって色々な物が部屋を埋めている。
沙耶香はベット、私は床で沙耶香が用意してくれた菓子パンを食べ始めた。
「この間の飲み会楽しかったねー!」といつも通りの口調で淡々とまた前に話していた内容を再び話し始めた。私は舟山に言われた事を良いタイミングで切り出そうと様子をみていた。
沙耶香は嬉しそうに、
「そうそう、昨日言ってた人って誰だと思う?」
「えっ、元彼の話でしょ、沙耶香の。そいつはヒドい奴だよ本当。」
「ここで一緒になってたの誰かって事だよ♪」
「元彼だろ、本当に悪い奴だよそいつ。新しい出会いがこれからあるんだから…」

「先輩だよ。」

「?」

「いつも一緒にあそんでるじゃん!先輩っ!」
ポンポンっとベットを叩いた。

それから沙耶香は米田先輩とどこに連れて言ってもらった。こんな所で遊んできた。とデートの一部始終を話してくれていたが、最後の「先輩っ!」あたりで記憶がない。
沙耶香はとても女性らしくてニコニコして、彼氏に夢中。と顔に書いて見えた。

私と沙耶香はお互いに思春期に父親を亡くしていた。
私は妹の様に思っていた。

私は家に帰りいつもより長くシャワーを浴びた。
涙が溢れて止まらなかった。

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