（第１話）最後の言葉【創作大賞2024ホラー小説部門応募作】

#創作大賞2024 #ホラー小説部門

■あらすじ■
元刑事の健太は、死にゆく人の最後の言葉を聞く呪われた能力を持つ。ある夜、連続殺人事件の被害者の言葉を聞き、不気味な調査に乗り出す。次第に、彼の能力が邪悪な存在と繋がっていることに気づく。健太は自身の過去のトラウマと向き合いながら、真実に迫る。しかし、彼の分身として現れた邪悪な存在との壮絶な戦いが始まる。最後の犠牲を払い、健太は邪悪を封印するが、新たな連鎖の始まりを暗示して物語は終わる。

第１話　序章　呪いの始まり

夜の帳が降りると、健太の心に不安が広がる。彼は元刑事で、かつては数々の事件を解決してきたが、今はその能力が呪いとなって彼を苦しめている。彼には特異な能力があった。死にゆく人々の最後の言葉を聞くことができるのだ。しかし、その言葉は時に不気味で、彼の心に恐怖を植え付ける。

ある晩、健太は自宅の薄暗い部屋で、過去の事件を思い返していた。彼の目の前には、かつての同僚が残した資料が広がっている。連続殺人事件の未解決ファイルだ。彼はその事件に関わったことがあるが、数年前に起きた事故が原因で、刑事を辞めざるを得なかった。今でもその事故のことを思い出すと、胸が締め付けられるような痛みを感じる。

突然、健太の耳に不気味な声が響いた。「助けて…」それは、彼がかつて捜査した連続殺人事件の被害者の声だった。彼はその声に引き寄せられるように、資料を手に取った。被害者の名前は、佐藤美咲。彼女は無惨に殺され、その遺体は公園で発見された。健太は、彼女の最後の言葉が何を意味するのかを考え始める。

その夜、健太は夢の中で美咲の姿を見る。彼女は薄暗い部屋に立ち、彼を見つめている。彼女の目には恐怖が宿っていた。「助けて…」と再び彼女は呟く。健太はその言葉に心を揺さぶられ、彼女を助けることを決意する。だが、彼には何もできないという無力感が彼を襲う。

翌朝、健太は決心して警察署へ向かう。彼は未解決の連続殺人事件を再調査することを申し出る。しかし、彼の能力に対する疑念や、過去のトラウマが彼を苦しめる。周囲の人々は彼を心配し、彼の能力を恐れている。彼は孤独を感じながらも、真実を追い求める決意を固める。

調査を進める中で、健太は美咲の家族に会うことにする。彼女の母親は、娘の死に深い悲しみを抱えていた。「美咲は、いつも人を助けたいと言っていました。彼女は優しい子でした」と涙ながらに語る。健太はその言葉を聞き、彼女の最後の言葉がどれほど重いものかを実感する。

家に帰ると、健太は再び美咲の声を聞く。その声は、彼の心に恐怖を呼び起こす。彼は自分の能力が呪いであることを再認識し、恐怖に震える。彼はこの能力を持っていることで、彼女を助けることができるのか、それとも彼女の運命に巻き込まれてしまうのか、考え込む。

夜が更けるにつれ、健太の恐怖は増していく。彼は自分の部屋の鏡を見つめる。鏡の中の自分の顔が、どこか不気味に歪んで見える。彼はその瞬間、自分が何かに取り憑かれているのではないかという恐怖を感じる。彼の心の奥には、過去の罪悪感が渦巻いていた。

健太は決意を固め、再び調査を続けることにする。彼は美咲の死の真相を解明し、彼女を救うために立ち上がる。しかし、彼の心の中には不安が渦巻いていた。果たして、彼は本当に彼女を助けることができるのか。そして、彼の能力がどのような運命を彼に与えるのか、誰も知らない。

その夜、健太は再び夢の中で美咲に出会う。彼女は彼に向かって手を伸ばし、「私を助けて…」と叫ぶ。健太はその声に引き寄せられ、彼女の手を取ろうとするが、すぐに目が覚めてしまう。彼は冷や汗をかき、心臓が高鳴るのを感じる。

この呪いの始まりは、健太の運命を大きく変えることになる。彼は自分の能力と向き合い、恐怖の中で真実を探し続けることを決意する。しかし、彼の周囲には不気味な影が忍び寄り、彼を待ち受けていることを彼はまだ知らない。健太の物語は、恐怖と謎が交錯する道へと続いていく。

翌日、健太は警察署で古い事件ファイルを調べ始めた。彼は美咲の事件と似たような未解決事件がないか探っていた。そんな中、彼の目に奇妙な共通点が浮かび上がってきた。被害者たちは全員、死の直前に「影」について言及していたのだ。

健太は背筋が凍るのを感じた。彼が聞いた美咲の最後の言葉も、「影が…」で途切れていたのだ。これは単なる偶然なのか、それとも何か重要な手がかりなのか。彼は必死に考えを巡らせた。

その夜、健太は再び悪夢にうなされた。夢の中で、彼は暗い森の中を歩いていた。周りからは、被害者たちの声が聞こえてくる。「影が来る…」「逃げて…」彼は恐怖に駆られながらも、声の主を探そうと森の奥へと進んでいく。

突然、彼の前に一つの影が現れた。それは人の形をしているようで、しかし明らかに人間ではなかった。影は徐々に健太に近づいてくる。彼は逃げようとするが、足が動かない。影が彼に触れようとした瞬間、健太は悲鳴と共に目を覚ました。

朝日が差し込む部屋の中で、健太は激しい動悸を感じていた。この夢は単なる悪夢なのか、それとも何かの前兆なのか。彼は不安を感じながらも、この謎を解明する決意を新たにした。

健太は再び警察署へ向かい、「影」に関する情報を集め始めた。彼は古い民間伝承や都市伝説にも目を通した。そして、ある伝説に行き当たる。それは、人々の恐怖や負の感情を糧に成長する「影の存在」についての言い伝えだった。

この伝説が真実だとすれば、被害者たちは単なる殺人事件の犠牲者ではなく、何か超常的な存在に襲われたのかもしれない。健太は、自分の能力がこの「影の存在」と何らかの関係があるのではないかと考え始めた。

しかし、この推論を誰かに話せば、彼は狂人扱いされるだろう。健太は孤独な戦いを強いられることを覚悟した。彼は、この謎を解明し、被害者たちを救うため、そして自分自身の呪いから解放されるために、真実を追い求めることを決意したのだった。