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(第2話)タイムリープ・パラドックス【創作大賞2024漫画原作部門応募作】

#創作大賞2024 #漫画原作部門

第2話 タイムマシンの開発

翔太は大学に進学し、物理学と工学を専攻した。入学当初から、彼の頭の中はタイムトラベルの可能性で一杯だった。講義を受けながら、常に「これをタイムマシンの開発にどう活かせるか」と考えていた。

大学3年生になると、翔太は山田博士の量子物理学の授業を受講することになった。山田博士は、タイムトラベルの理論研究で世界的に有名な科学者だった。翔太は、博士の講義に熱心に耳を傾け、質問を重ねた。

「山田先生、量子もつれを利用して過去に情報を送ることは可能でしょうか?」翔太は、ある日の講義後に質問した。

山田博士は眉を上げ、「興味深い質問だね。理論上は可能かもしれないが、実現にはまだ多くの障壁がある」と答えた。

この会話をきっかけに、山田博士は翔太に目をつけた。翔太の熱意と理解力に感銘を受けた博士は、彼を研究室の学部生インターンとして迎え入れることにした。

研究室に入った翔太は、昼夜を問わず研究に没頭した。量子力学、相対性理論、宇宙物理学など、タイムトラベルに関連する様々な分野を学び、実験にも参加した。

ある日、翔太は実験中に思わぬ発見をした。量子もつれの状態を長時間維持する新しい方法を偶然見つけたのだ。興奮した翔太は、すぐに山田博士に報告した。

「素晴らしい発見だ、翔太君!」博士は目を輝かせた。「これは、タイムマシン開発への大きな一歩になるかもしれない」

この発見をきっかけに、研究室ではタイムマシンの理論的可能性を探る新しいプロジェクトが始まった。翔太は、大学院に進学し、このプロジェクトの中心メンバーとなった。

研究は順調に進んでいたが、翔太の心の中には常に葛藤があった。彼は、タイムマシンを完成させ、祖父の苦しみを取り除きたいという強い思いを抱えていた。しかし、その一方で、過去を変えることの倫理的問題や、歴史への影響を考えると躊躇してしまう。

ある夜、研究室の懇親会が開かれた。お酒が入り、場の雰囲気が和んできたころ、山田博士が翔太に声をかけた。

「翔太君、君はなぜそんなにタイムトラベルに興味があるんだい?」

翔太は一瞬躊躇したが、酔いも手伝って、心の内を話し始めた。

「実は...祖父が広島で被爆したんです。その苦しみを見てきて、もし過去に戻って原爆投下を止められたら...と思うようになったんです」

山田博士は真剣な表情で翔太の話を聞いていた。「そうか...君の思いはよくわかる。しかし、過去を変えることには大きなリスクがある。歴史の因果関係は複雑で、一つの出来事を変えることで、予期せぬ結果を招く可能性がある」

翔太は黙って博士の言葉を聞いていた。

「翔太君、君の思いは尊いものだ。しかし、タイムトラベルの危険性についても深く考える必要がある。そうだな...次の研究会で、タイムトラベルの倫理と危険性について講義をしよう。君だけでなく、みんなにもこの問題について考えてもらう必要がある」

翔太は頷いた。「はい、ぜひお願いします」

懇親会が終わり、翔太は夜の街を歩きながら考え込んでいた。祖父への思い、タイムマシンへの夢、そして博士の警告。様々な思いが交錯する中、彼は自分の決意を新たにした。

「どんな結果になろうとも、タイムマシンを完成させる。そして、正しい使い方を見つけ出すんだ」

翔太は空を見上げ、深呼吸をした。明日からの研究に向けて、彼の心は新たな決意で満ちていた。

研究室に戻った翔太を待っていたのは、予想外の展開だった。山田博士が緊急のミーティングを召集したのだ。

「みんな、聞いてくれ」博士は真剣な表情で切り出した。「私たちの研究が、ある財団の目に留まった。彼らが多額の研究資金を提供してくれることになったんだ」

研究室のメンバーから歓声が上がった。しかし、博士はまだ話を続けた。

「ただし、条件がある。1年以内に、小規模なタイムマシンのプロトタイプを作り上げなければならない」

一瞬の沈黙の後、議論が沸き起こった。「1年で可能なのか?」「無理があるのでは?」様々な意見が飛び交う中、翔太は静かに立ち上がった。

「やりましょう」翔太の声に、全員の視線が集まった。「私たちにはできます。この機会を逃す手はありません」

翔太の決意に満ちた言葉に、研究室のメンバーも次第に同意し始めた。山田博士は満足げに頷いた。

「よし、決まりだ。明日から本格的なプロジェクトを始動する。翔太君、君にはプロジェクトリーダーを任せたい」

突然の大役に、翔太は戸惑いを隠せなかったが、すぐに決意の表情を浮かべた。「はい、全力で取り組みます」

こうして、翔太たちの壮大な挑戦が始まった。タイムマシン開発への道のりは険しいものになるだろう。しかし、翔太の心の中には、祖父への思いと、未来を変える可能性への希望が燃え続けていた。

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