（第２話）最後の言葉【創作大賞2024ホラー小説部門応募作】

#創作大賞2024 #ホラー小説部門

第２話　不気味な調査の始まり

健太は、連続殺人事件の調査を本格的に始めた。しかし、彼の周りには不吉な空気が漂っていた。警察署に足を踏み入れた瞬間、同僚たちの視線が彼に刺さる。彼らは健太の特異な能力を恐れ、距離を置いているのだ。

健太は資料室に向かい、連続殺人事件のファイルを取り出した。ページをめくるたびに、被害者たちの無残な姿が彼の目に焼き付く。そして、彼の耳に再び不気味な声が響く。「私たちを見つけて...」それは被害者たちの声だった。健太は背筋が凍るのを感じた。

その日の夜、健太は自宅で事件の資料を広げていた。突然、部屋の電気が消え、真っ暗闇に包まれる。彼が懐中電灯を探そうとした瞬間、鏡に映る自分の姿が動いたように見えた。健太は息を呑む。鏡の中の自分が、不気味な笑みを浮かべているように見えたのだ。

翌日、健太は最初の被害者が発見された公園を訪れた。木々の間を歩いていると、突然冷たい風が吹き抜ける。そして、彼の耳に囁きが聞こえた。「ここよ...」健太は声のする方向を見た。そこには、一本の古びた木が立っていた。その木の根元に、何か光るものが見える。

健太が近づくと、それは小さなペンダントだった。おそらく被害者のものだろう。彼がそれを手に取った瞬間、激しい頭痛に襲われる。目の前に、被害者が殺される瞬間の映像が浮かび上がった。健太は恐怖で体が震え、冷や汗が背中を伝う。

その夜、健太は悪夢にうなされた。夢の中で、彼は暗い森の中を歩いていた。周りから被害者たちの声が聞こえる。「私たちを助けて...」「犯人を見つけて...」健太は走り出すが、どこまで行っても森から抜け出せない。そして、彼の前に一人の影が現れる。その影は、健太自身の姿をしていた。

目が覚めると、健太の体は冷や汗でびっしょりだった。彼は鏡を見る。そこには疲れ果てた自分の姿が映っていた。しかし、その瞬間、鏡の中の自分が微笑んだように見えた。健太は恐怖で叫び声を上げそうになるのを必死に抑えた。

翌日、健太は二番目の被害者が発見された場所を訪れた。それは古い廃工場だった。錆びた鉄の扉を開けると、中は薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。健太が中に入ると、突然扉が大きな音を立てて閉まる。彼は慌てて振り返るが、扉は開かない。

工場の中を進むと、床に何かが落ちているのが見えた。それは古い写真だった。写真には、笑顔の若い女性が写っている。健太がその写真を手に取った瞬間、耳元で声が聞こえた。「私を忘れないで...」健太は驚いて振り返るが、そこには誰もいなかった。

その時、工場の奥から物音がした。健太は恐る恐る音のする方へ向かう。暗がりの中、何かが動いているのが見える。健太が懐中電灯を向けると、そこには人の形をした影があった。しかし、よく見ると、それは単なる古い機械だった。健太はほっとするが、同時に背筋が寒くなるのを感じた。

工場を出た後、健太は警察署に戻り、発見した証拠を報告した。しかし、同僚たちは彼の話を半信半疑で聞いている。彼らの目には、健太への不信感が浮かんでいた。健太は孤独感に襲われる。

その夜、健太は再び悪夢を見た。今度は、彼が暗い部屋の中にいた。部屋の中央には鏡があり、その鏡に映る自分が彼を見つめている。鏡の中の自分が口を開く。「お前は本当に彼女たちを救えるのか？」健太は恐怖で目を覚ました。

翌朝、健太は決意を新たにする。彼は被害者たちの声に導かれ、真実を明らかにしなければならない。しかし、彼の心の奥底では、自分自身への不安が渦巻いていた。この能力は本当に被害者たちを救うためのものなのか、それとも彼自身を破滅に導くものなのか。

健太は鏡を見つめる。そこには疲れ果てた自分の姿が映っていた。しかし、その瞬間、鏡の中の自分が微かに笑ったように見えた。健太は恐怖で体が震えるのを感じた。彼はこの不気味な調査を続けなければならない。しかし、その先に待っているものが、彼自身の破滅なのか、それとも真実の解明なのか、誰にもわからない。

健太は深呼吸をし、再び資料に目を通す。彼の周りには、まだ見えない恐怖が潜んでいる。そして、彼の耳には被害者たちの声が絶え間なく響いていた。「私たちを助けて...」この声に導かれ、健太の不気味な調査は続いていく。

健太は、被害者たちの共通点を探るため、彼らの個人情報を詳しく調べ始めた。すると、ある奇妙な事実が浮かび上がってきた。全ての被害者が、死の直前に同じ夢を見ていたというのだ。その夢の内容は、暗い森の中で自分の影に追いかけられるというものだった。

この発見に、健太は戦慧を覚えた。彼自身も同じような夢を見ていたからだ。これは単なる偶然なのか、それとも何か重要な意味があるのだろうか。健太は、この夢と事件の関連性を探ることにした。

彼は地元の精神科医を訪ね、この奇妙な夢について相談した。医師は興味深そうに話を聞き、こう言った。「それは集団的無意識の現れかもしれません。何か強い恐怖や不安が、被害者たちの心の中で共鳴しているのかもしれません。」

この言葉に、健太は新たな視点を得た。彼は被害者たちの過去を更に深く掘り下げることにした。そして、彼らの人生に共通する出来事を探し始めた。

調査を進めるうちに、健太は奇妙な噂を耳にした。この地域には、古くから伝わる「影喰らい」という伝説があるというのだ。それは、人々の恐怖や不安を糧に成長し、最終的にその人の魂を奪うという恐ろしい存在だった。

健太はこの伝説に興味を持ち、地元の古老を訪ねた。老人は震える声でこう語った。「影喰らいは、百年に一度目覚める。そして、七人の魂を喰らうと、この世に完全に姿を現すのじゃ。」

この話を聞いた健太は、背筋が凍るのを感じた。これまでの被害者は五人。あと二人で、何か恐ろしいことが起こるのかもしれない。彼は時間との戦いに突入したことを悟った。

その夜、健太は再び悪夢にうなされた。今度の夢では、彼自身が影に追いかけられていた。彼は必死に逃げるが、影はどんどん近づいてくる。そして最後に、その影が彼を飲み込もうとした瞬間、健太は悲鳴と共に目を覚ました。

彼は激しい動悸を感じながら、窓の外を見た。そこには、月明かりに照らされた自分の影が、不気味に揺らめいているのが見えた。健太は、自分自身も「影喰らい」の標的になっているのではないかという恐怖に襲われた。

しかし、彼はこの恐怖に負けるわけにはいかなかった。被害者たちを救うためにも、この事件の真相を明らかにしなければならない。健太は決意を新たにし、更なる調査に乗り出す準備を始めた。彼の前には、まだ見ぬ恐怖と、解き明かすべき謎が待っているのだ。