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(第7話)最後の言葉【創作大賞2024ホラー小説部門応募作】

#創作大賞2024 #ホラー小説部門

第7話 決断の時


健太は、自らの能力が引き起こした恐怖の渦に巻き込まれながらも、真実を追い求める決意を固めていた。しかし、彼の心の中には、過去のトラウマと新たな恐怖が渦巻いていた。彼はこのままではいけないと感じ、何か行動を起こさなければならないと強く思った。

ある晩、健太は再び悪夢にうなされ、目が覚めると冷や汗でびっしょりだった。夢の中で、彼は暗い森の中を彷徨っていた。周囲からは、被害者たちの声が聞こえてくる。「助けて…」「お前が私たちを救うのだ」と、彼の耳に響く。

その声に導かれるように、健太は森の奥へと進んでいった。すると、目の前に古びた小屋が現れた。小屋の扉は開いており、中から薄暗い光が漏れている。健太は恐る恐るその中に入ると、そこには無数の鏡が並べられていた。

鏡に映る自分の姿は、まるで異次元からやってきたかのように歪んでいた。彼は恐怖で動けなくなり、鏡の中の自分を見つめ続けた。そのとき、鏡の中の自分が口を開き、「お前は本当に真実を知りたいのか?」と問いかけてきた。

健太はその言葉に戸惑いながらも、頷いた。「はい、知りたい。真実を知って、彼女たちを救いたいんだ」

鏡の中の自分は不気味な笑みを浮かべ、「真実を知ることは、時に恐ろしい結果をもたらす」と警告した。健太はその言葉に恐れを感じたが、同時に彼は自分の決意を揺るがせるわけにはいかないと感じていた。

その瞬間、周囲の空気が変わり、鏡が一斉に揺れ始めた。健太は恐怖に駆られ、後ずさりしたが、背後には何もない。彼は逃げることができず、鏡の中の自分が彼を引き寄せるように手を伸ばしてきた。

「お前は逃げられない。お前の運命は、既に決まっているのだ」と、鏡の中の自分が囁いた。健太はその言葉に恐怖を感じ、必死に逃げようとしたが、身体が動かない。

そのとき、再び美咲の声が響いた。「健太さん、決断して!私たちを救って!」

彼女の声が彼の心に響き、健太は意を決して叫んだ。「私は逃げない!真実を知る!」

その瞬間、鏡が割れ、無数の破片が空中に飛び散った。健太はその中を突き抜け、目を覚ました。彼は自分の部屋に戻っていたが、心臓は激しく鼓動していた。

翌朝、健太は新たな決意を胸に秘め、再び被害者の家族に会うことにした。今回は、彼が見た夢の中の小屋のことを話すつもりだった。彼は、真実を知るために何が必要なのかを理解し始めていた。

最初に訪れたのは、佐藤美咲の母親、千恵子だった。健太は彼女の家に着くと、深呼吸をしてからドアをノックした。千恵子はすぐにドアを開け、彼を迎え入れた。

「健太さん、また来てくれたのですね」と、彼女は優しく微笑んだが、その目には悲しみが宿っていた。

「はい、今日はお話ししたいことがあります」と健太は言った。

リビングに入ると、健太は美咲の写真を見つめた。彼女の笑顔は、今でも健太の心に深く刻まれている。彼は千恵子に、夢の中で見た小屋のことを話した。

「小屋には、無数の鏡がありました。鏡の中の自分が、私に真実を知るように言ってきました」と健太は語る。

千恵子は驚いた表情を浮かべた。「それは…美咲が言っていたことと同じです。彼女は、夢の中で何かを見たと言っていました」

健太はその言葉に胸が高鳴る。美咲が何かを知っていたのかもしれない。彼は続けた。「私たちが真実を知るためには、過去の出来事を解明する必要があります。それが、彼女たちを救う鍵になると思うんです」

千恵子はしばらく考え込んだ後、頷いた。「私も、真実を知りたい。美咲のために、そして他の被害者たちのために」

その後、健太は千恵子と共に、美咲の死に関する情報を集めることにした。彼らは美咲の友人や知人に話を聞き、彼女の最後の行動を追跡することにした。

調査を進める中で、健太は美咲が最後に会った人物についての情報を得た。それは、彼女が交通事故に遭う前に連絡を取っていた男性だった。彼の名前は、田中健二。彼は美咲の大学の同級生で、彼女と親しい関係にあったという。

健太は田中に会うことを決意した。彼は美咲の死の真相を知るために、田中が何を知っているのかを探る必要があった。

田中の住所を調べ、健太はその家に向かった。彼の心には、緊張と期待が入り混じっていた。果たして、田中は美咲の死について何か知っているのだろうか。

田中の家に着くと、健太はドアをノックした。しばらくして、ドアが開き、田中が顔を出した。彼は驚いた表情を浮かべ、健太を見つめた。「君は…健太さん?」

「はい、佐藤美咲の友人です。少しお話ししたいことがあるのですが」と健太は言った。

田中は一瞬戸惑ったが、やがて彼を中に招き入れた。リビングに入ると、田中は沈んだ表情で座った。「美咲のことを思い出すのは辛いです」

健太はその言葉に共感しながら、話を続けた。「美咲が最後に何をしていたのか、何か知っていることはありませんか?」

田中はしばらく黙って考え込んだ後、口を開いた。「彼女は、何かに悩んでいる様子でした。最後に会ったとき、彼女は『影が近づいている』と言っていました」

その言葉を聞いた瞬間、健太の心に冷たい恐怖が走った。「影」とは、彼が夢の中で見た恐ろしい存在のことを指しているのかもしれない。

「それから、彼女は急に連絡が取れなくなりました。何かが彼女を追い詰めていたのかもしれません」と田中は続けた。

健太はその言葉に重い思いを抱えた。美咲が直面していた恐怖が、彼女の死に繋がっているのかもしれない。彼は田中に問いかけた。「美咲が何かを知っていたのではないかと思うのですが、彼女が話していたことを思い出せますか?」

田中はしばらく考え込んだ後、言った。「彼女は、何かを調べていると言っていました。特に、過去の事件に関することを気にしていたようです」

健太はその言葉に心が高鳴った。美咲が何か重要なことを知っていたのかもしれない。彼は田中に感謝し、次の行動を考え始めた。

その夜、健太は再び悪夢にうなされた。夢の中で、彼は美咲の姿を見つけた。彼女は薄暗い森の中で立っており、彼を見つめている。「健太さん、私を助けて…」美咲の声が響く。

「どうすればいいんだ?」健太は叫んだ。

「真実を知って、私を救って…」美咲はその言葉を繰り返した。

目が覚めた健太は、心の中に強い決意を抱いていた。彼は美咲を救うために、過去の事件を徹底的に調べ、真実を明らかにする必要がある。彼の心には、恐怖と希望が交錯していたが、彼は前に進むことを決意した。

次の一歩は、彼の運命を大きく変えることになるだろう。果たして、健太は美咲を救うことができるのか。そして、彼自身がこの呪いから解放される日は来るのだろうか。

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