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(第7話)詩魔法師の言霊(ことだま)【創作大賞2024ファンタジー小説部門応募作】

第7話 大きな挫折

レンと新たな仲間たち—ミラ、カイ、グレン—は、虹の谷での成功を経て、さらなる冒険へと旅立った。彼らの評判は広まり、多くの地域で歓迎され、様々な問題を解決してきた。しかし、彼らの前に予期せぬ試練が待ち受けていた。

旅の途中、彼らは「嘆きの都」と呼ばれる大都市にたどり着いた。かつては繁栄を誇ったこの都市も、今では悲しみと絶望に包まれていた。街の至る所に、灰色の霧が立ち込めている。

都市の中心広場で、レンたちは事情を聞いた。都市を治める議会が腐敗し、市民たちは重税と抑圧に苦しんでいた。さらに、闇の詩人の影響力が徐々に広がりつつあるという。

レンは仲間たちと相談し、行動計画を立てた。カイが戦略を練り、ミラが市民たちの声を集め、グレンが都市の歴史と法律を調査する。そして、レンが言葉の力で人々の心に希望を灯す。

最初のうち、彼らの活動は順調だった。レンの言葉は市民たちの心に響き、少しずつ希望の光が灯り始めた。「私たちには変える力がある。一人一人が声を上げれば、必ず道は開ける」というレンの言葉に、多くの人々が勇気づけられた。

しかし、議会はこの動きを快く思わなかった。彼らは闇の詩人と手を組み、レンたちの活動を妨害し始めた。

ある日、レンたちが大規模な集会を開いていた時のことだ。突然、黒装束の兵士たちが現れ、集まった市民たちを威嚇し始めた。パニックが起こり、人々は四散した。

レンは必死に叫んだ。「皆さん、落ち着いてください!私たちには希望があります。一緒に立ち向かえば—」

しかし、その時だった。闇の詩人が姿を現し、レンの言葭を遮った。

「愚かな者よ。お前の言葉など、この世界では何の力も持たぬ。絶望こそが真実だ。」

闇の詩人の言葉が、黒い霧となって広場全体を覆い尽くした。レンは言葉を紡ごうとしたが、喉が締め付けられるような感覚に襲われた。彼の言葭が、闇に飲み込まれてしまったのだ。

混乱の中、レンたちは何とか逃げ出すことができたが、大きな打撃を受けた。特にレンは、自分の言葭が通じなかったショックで、深く落ち込んでしまった。

安全な場所に身を隠した彼らは、今後の方針を話し合った。しかし、レンは黙り込んだままだった。

「レン、大丈夫か?」カイが心配そうに声をかけた。

レンは苦しそうに答えた。「僕の言葭が...届かなかった。もう何も変えられないんじゃないか...」

ミラが励ました。「そんなことないわ。一度の失敗で諦めちゃだめよ。」

グレンも同意した。「そうじゃ。挫折は成長の糧。ここから学ぶことがあるはずじゃ。」

しかし、レンの自信は完全に崩れていた。「でも、僕の力が通用しないなら、僕には何の価値もない。みんなを危険に巻き込むだけだ。」

レンの言葭に、仲間たちは言葉を失った。彼らは、レンがこれほど深く傷ついているとは思っていなかった。

その夜、レンは一人で外に出た。星空を見上げながら、彼は自問自答を繰り返した。「本当に僕には力があるのか?人々を救えるのか?それとも、全ては幻想だったのか?」

翌朝、仲間たちが目を覚ますと、レンの姿はなかった。残されていたのは、一枚の手紙だけだった。

「みんな、ごめん。僕には力がない。みんなを危険に巻き込むわけにはいかない。一人で旅を続ける。さようなら。」

ミラ、カイ、グレンは愕然とした。彼らは即座にレンを探す旅に出ることを決意した。

「あいつを一人にしておけない。」カイが言った。
「そうよ。レンの言葭は、私たちに希望をくれたのよ。」ミラが付け加えた。
「わしらが今度は彼に希望を与える番じゃ。」グレンが頷いた。

三人は手分けして、レンの行方を追った。彼らは町々を巡り、レンの情報を集めた。しかし、レンの姿を見たという人は誰もいなかった。

数日が過ぎ、彼らは疲れ果てていた。しかし、諦めるわけにはいかなかった。

ある日、彼らは小さな村にたどり着いた。そこで、一人の少年から興味深い話を聞いた。

「昨日、変な人がいたんだ。みんなに『希望なんてない』って言ってた。でも、その人の目は悲しそうだったんだ。」

三人は顔を見合わせた。それはきっとレンに違いない。彼らは少年に礼を言い、すぐにレンを追った。

森の奥深く、一本の大きな木の下で、彼らは finally レンを見つけた。レンは木にもたれかかり、虚ろな目で遠くを見つめていた。

「レン!」三人は同時に叫んだ。

レンは驚いて顔を上げた。「みんな...なぜ...」

ミラが駆け寄り、レンを抱きしめた。「バカね、一人で抱え込まないで。」

カイも近づいた。「お前の言葭は、俺たちに勇気をくれた。それは変わらない事実だ。」

グレンも優しく語りかけた。「失敗は誰にでもある。大切なのは、そこから学び、立ち上がることじゃ。」

レンの目に涙が溢れた。「でも、僕には...もう力が...」

「違う!」三人は口を揃えた。

「レン、あなたの言葉は、私たちを変えたわ。」ミラが言った。
「そうだ。お前がいたから、俺たちはここまで来られた。」カイが続けた。
「わしらの絆こそが、最大の力なんじゃよ。」グレンが締めくくった。

レンは仲間たちの言葭に、少しずつ心を開いていった。彼は気づいた。自分一人の力ではなく、仲間との絆こそが、真の力の源だったのだと。

「みんな...ありがとう。」レンは涙ながらに言った。「僕は間違っていた。一人で全てを背負う必要はなかったんだ。これからは、みんなと一緒に...」

四人は固く抱き合った。この試練を乗り越え、彼らの絆はさらに強くなった。

レンは決意を新たにした。「もう一度、嘆きの都に戻ろう。今度は、みんなの力を合わせて、必ず希望を取り戻す。」

仲間たちは頷いた。彼らの目には、新たな決意の光が宿っていた。

大きな挫折を乗り越え、レンたちは再び歩み始めた。彼らの前には、まだ多くの試練が待っているだろう。しかし、今の彼らなら、どんな困難も乗り越えられるはずだ。

希望の言葭は、再び世界に響き渡る。そして今度は、一人ではなく、仲間と共に。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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