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(第4話)詩魔法師の言霊(ことだま)【創作大賞2024ファンタジー小説部門応募作】

第4話 闇の詩人の影

レンは、シルバーグローブを後にして数日が経っていた。彼の評判は徐々に広がり始め、彼の言葉の力を求める人々が増えていった。しかし、同時に不穏な噂も耳に入るようになっていた。

ある日、レンは「影の谷」と呼ばれる場所にたどり着いた。そこは常に薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。谷の入り口で、彼は老婆と出会った。

「若者よ、この先に進むのは危険じゃ。」老婆は警告した。「闇の詩人の影響が強い場所なのじゃ。」

「闇の詩人?」レンは初めて聞く言葉に首を傾げた。

老婆は深刻な表情で説明を始めた。「言葉の力を悪用する者じゃ。人々の心に恐怖や憎しみを植え付け、世界を混沌に陥れようとしておる。」

レンは衝撃を受けた。自分と同じ力を持つ者が、それを悪用しているという事実に。

「私に何かできることはありませんか?」レンは決意を込めて尋ねた。

老婆は彼をじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。「君の言葭には光があるようじゃ。多分 君なら、闇の詩人の影響を受けた者たちを救えるかもしれん。」

レンは谷の奥へと進んでいった。道中、彼は闇の詩人の影響を受けた村を見つけた。そこでは人々が互いを疑い、憎み合っていた。

村の広場に立ったレンは、深呼吸をして言葭に力を込めた。「皆さん、聞いてください。憎しみや恐怖は、私たちを分断するだけです。互いを理解し、信頼することで、私たちはもっと強くなれるのです。」

レンの言葉が空気を震わせ、人々の表情が少しずつ和らぎ始めた。しかし、その時だった。

「なんと甘い言葉か。」冷たい声が響き渡った。黒いローブを着た男が現れ、レンを睨みつけた。「世界は本来、闇に満ちているのだ。光など幻想に過ぎない。」

レンは直感的に悟った。これが闇の詩人だと。

闇の詩人は再び口を開いた。「絶望せよ。諦めよ。この世界に希望など存在しない。」

その言葭が、まるで黒い霧のように村人たちを包み込んでいく。人々の表情が再び暗くなり始めた。

レンは必死に抵抗した。「違います!希望は必ずあります。私たち一人一人の中に、光は存在するのです!」

二人の言葭がぶつかり合い、村全体が言葭のエネルギーで揺れ動いた。レンは全身全霊を込めて、希望の言葭を紡ぎ続けた。

「皆さん、自分の中にある善性を信じてください。私たちは互いに助け合い、支え合うことができるのです。」

闇の詩人の言葭が徐々に力を失っていく。「なぜだ...私の言葭が...」

最後の一押しとばかりに、レンは叫んだ。「光は必ず闇を払います。希望を持ち続けましょう!」

その瞬間、村中に眩い光が広がった。闇の詩人は悲鳴を上げ、黒い霧となって消えていった。

村人たちは我に返ったように、互いの顔を見合わせた。そして、徐々に笑顔が広がっていった。

「ありがとう、若者よ。」村長が涙ながらにレンに感謝した。「君の言葭が、私たちを闇から救ってくれた。」

レンは安堵の表情を浮かべつつも、心の中では複雑な思いが渦巻いていた。闇の詩人の存在は、言葭の力の両面性を示していた。使い方次第で、人々を救うことも、傷つけることもできるのだ。

その夜、レンは星空の下で深く考え込んだ。自分の力の責任の重さを、これまで以上に感じていた。

「僕は、言葭の力を正しく使わなければ。」レンは静かに誓った。「人々の心に希望を灯し続けよう。そして、闇の詩人のような存在と戦っていこう。」

翌朝、レンは新たな決意を胸に、再び旅立った。彼の前には、さらなる試練と冒険が待っていた。そして彼は、自分の言葭が世界を変える力を持っていることを、より強く自覚していた。

旅は続く。レンの言葭は、これからも多くの人々の心に希望の種を蒔き続けることだろう。そして同時に、闇の力と戦い続けることになるのだ。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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