(第6話)スマートフォン依存症からの脱出:30日間のデジタルデトックス体験記【創作大賞2024オールカテゴリ部門応募作】
第6話 スマートフォン依存症からの脱出:30日間のデジタルデトックス体験記
デジタルデトックスを開始してから3週間が経過した。この期間、人間関係や日常生活の変化を強く感じてきたが、今週は特に仕事面での変化が顕著だった。スマートフォンを手放すことで、予想外にも集中力が高まり、創造性が刺激されているのを実感している。
月曜日の朝、いつもより早く目覚めた。スマートフォンの代わりに置いた目覚まし時計を見ると、起床時間まであと30分ほどある。以前なら、この時間をSNSのチェックに費やしていただろう。しかし今は、その時間を瞑想に充てることにした。静かに呼吸を整え、心を落ち着かせる。この小さな習慣が、一日の始まりを穏やかなものにし、精神的な準備を整えてくれる。
会社に到着し、デスクに向かう。スマートフォンがないことで、絶え間ない通知音に邪魔されることなく作業に集中できるようになった。以前は、メールやSNSの通知が入るたびに作業が中断されていたが、今はそれがない。その結果、一つのタスクに長時間没頭できるようになり、作業効率が格段に向上した。
午前中のミーティングでは、自分の変化に驚かされた。スマートフォンを見る癖がなくなったことで、周囲の様子をより注意深く観察するようになり、会話にも積極的に参加できるようになった。自分の意見を述べる際も、以前より論理的に考えをまとめられるようになり、プレゼンテーションの質が向上したと感じる。
昼食後、同僚と短い散歩に出かけることが習慣となった。オフィス近くの公園を歩きながら、仕事の話や個人的な話をする。この時間が、午後の仕事への絶好のリフレッシュとなっている。自然を感じながら歩くことで、頭がすっきりし、新しいアイデアが次々と浮かんでくる。以前は昼食後にスマートフォンでSNSを見ていた時間が、今では創造的な思考の時間に変わった。
午後の仕事では、長年抱えていたプロジェクトの難題に取り組んだ。これまでは、行き詰まるとすぐにスマートフォンを手に取り、気を紛らわせていた。しかし今は、じっくりと問題と向き合う時間ができた。集中力が持続することで、これまで気づかなかった解決策が見えてきた。問題を多角的に捉え、創造的なアプローチを考えることができるようになり、プロジェクトが大きく前進した。
夕方、上司から新しいプロジェクトの提案を求められた。以前なら、すぐにインターネットで情報を集めていただろう。しかし今回は、自分の経験と知識を頼りに、じっくりとアイデアを練った。その結果、独創的な提案ができ、上司からも高い評価を得ることができた。この経験から、常に外部の情報に頼るのではなく、自分の内なる知恵を活用することの重要性を学んだ。
帰宅後、仕事の続きをする代わりに、最近始めた水彩画に取り組むことにした。キャンバスに向かい、筆を走らせる。仕事中に浮かんだアイデアを、色彩豊かに表現してみる。この創造的な活動が、思考をさらに活性化させ、明日への活力を与えてくれる。以前は帰宅後もスマートフォンを手放せなかったが、今では自分の内面と向き合う貴重な時間となっている。
夜、一日の振り返りをノートに書き留める習慣も身についた。スマートフォンがないことで、自分の思考や感情をより深く観察できるようになった。日々の出来事や気づきを言葉にすることで、自己理解が深まり、明日への課題も明確になる。この習慣が、自己成長の大きな原動力となっている。
この一週間を通じて、生産性の向上を強く実感した。集中力が高まったことで、仕事の質が向上し、創造的なアイデアも生まれやすくなった。同時に、仕事以外の時間も充実してきた。読書や絵画など、以前は後回しにしていた趣味の時間が増え、それが仕事にも良い影響を与えている。この好循環が、日々の生活に新たな喜びをもたらしている。
しかし、課題も見えてきた。情報収集の速度が遅くなったことで、時には仕事の進行に支障が出ることもある。また、デジタルツールを使用できないことで、効率が落ちる場面もある。これらの課題に対しては、同僚との協力や、従来の方法(書籍や新聞など)での情報収集を心がけている。また、必要最小限のデジタルツール使用を検討し始めた。完全な遮断ではなく、適切なバランスを見出すことが重要だと気づいた。
デジタルデトックスを始めて3週間が経ち、その効果を強く感じている。特に、集中力と創造性の向上は、私の仕事や生活に大きな変化をもたらした。スマートフォンに依存していた時には気づかなかった自分の能力や可能性に気づくことができ、自信も深まった。
同時に、デジタル技術の利点も再認識している。効率的な情報収集や連絡手段としての便利さは否定できない。しかし、それに頼りすぎることの弊害も理解できた。今後は、デジタル技術とどのようにバランスを取っていくかが大きな課題となるだろう。
残り1週間のデジタルデトックス。これまでの経験を活かし、さらなる成長と発見を期待している。仕事面での成果を維持しつつ、プライベートでの充実も図っていきたい。この挑戦が、私の人生にどのような長期的な変化をもたらすのか、楽しみでならない。
最後の1週間では、これまでの経験を総括し、デジタルデトックス後の生活をどのように設計していくか考えていきたい。完全なデジタル断ちではなく、技術と上手く付き合いながら、より豊かな人生を送るための方策を見出すことが目標だ。この経験を通じて得た気づきや変化を、今後の人生にどう活かしていくか。その答えを探す旅は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
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