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(第9話)「成長への代償」【創作大賞2025ミステリー小説部門応募作】2024/08/19公開

第9話 「最後まで希望を持ち続ける」

早朝、橘凜花の携帯電話が鳴った。梶原警部からの電話だった。

梶原警部:「橘、大変だ。加藤誠一の逮捕状を取ろうとしたが、裁判所に却下された。」

凜花:「えっ?どういうことですか?」

梶原警部:「詳しい話は署で説明する。急いで来てくれ。」

凜花は急いで警察署に向かった。到着すると、梶原警部が深刻な表情で待っていた。

梶原警部:「裁判所によると、我々の証拠が不十分だという。クラブで撮影した写真は、違法な手段で入手した可能性があるため、証拠として認められないそうだ。」

凜花:「そんな...これまでの捜査が水の泡になってしまうんでしょうか。」

梶原警部:「いや、まだ諦めるのは早い。ここで大切なのは、最後まで希望を持ち続けることだ。」

凜花:「希望を持ち続ける...具体的にはどうすればいいのでしょうか?」

梶原警部:「まず、我々にできることを考えよう。今回の失敗から学び、新たな方法を見つけ出すんだ。これを『始めるときから終わりを考える』という。」

凜花:「終わりを考える...つまり、最終的な目標を明確にして、そこから逆算して行動するということですか?」

梶原警部:「その通りだ。我々の最終目標は何だ?」

凜花:「中野杏子さんの殺害事件を解決し、不正会計の真相を明らかにすることです。」

梶原警部:「そうだ。その目標を常に念頭に置きながら、次の一手を考えるんだ。」

凜花は深く考え込んだ。これまでの捜査の経緯を振り返り、新たな突破口を見出そうとする。

凜花:「警部、加藤誠一との直接的な接触は難しいですが、彼の周囲の人物から情報を得ることはできないでしょうか?」

梶原警部:「良い着眼点だ。誰か具体的な人物は思いつくか?」

凜花:「はい。加藤の秘書である村上智子さんはどうでしょうか。彼女なら加藤の日程や行動パターンを詳しく知っているはずです。」

梶原警部:「なるほど。村上智子か...彼女に接触する方法を考えよう。」

二人は村上智子へのアプローチ方法を議論し始めた。その過程で、梶原警部は凜花に重要な考え方を教える。

梶原警部:「橘、ここで大切なのは、相手の立場に立って考えることだ。村上がなぜ協力してくれるのか、彼女にとってのメリットは何かを考えるんだ。」

凜花:「相手の立場に立つ...なるほど。村上さんも、もしかしたらこの不正に気づいていて、苦しんでいるかもしれません。正義を実現する機会を提供することが、彼女にとってのメリットになるかもしれません。」

梶原警部:「その通りだ。これを『Win-Winを考える』という。お互いにとって良い結果をもたらす解決策を見つけるんだ。」

凜花:「わかりました。では、村上さんに接触する際は、彼女の立場を尊重しつつ、正義の実現という共通の目標を示すようにします。」

梶原警部:「よし、その方針で行こう。」

凜花と梶原警部は、慎重に村上智子へのアプローチを計画した。数日後、二人は村上と秘密裏に会うことに成功する。

村上智子:「警察の方々ですか...私に何を望んでいるんですか?」

凜花:「村上さん、私たちは真実を明らかにしたいだけです。あなたも、きっと正しいことをしたいと思っているはずです。」

村上智子:「...」

梶原警部:「我々は敵ではありません。共に正義を実現する仲間になれるはずです。」

村上は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

村上智子:「...実は、私も最近おかしいと感じていました。加藤社長の行動が、どんどん不自然になっていって...」

凜花:「具体的にはどんなことでしょうか?」

村上智子:「深夜の秘密会議が増えたんです。そして、ある名前をよく耳にするようになりました。」

梶原警部:「その名前とは?」

村上智子:「確か...綾小路という人物です。」

凜花と梶原警部は顔を見合わせた。綾小路という名前は、これまでの捜査では一度も出てきていなかった。

凜花:「綾小路...どんな人物か、何か情報はありますか?」

村上智子:「詳しくは分かりません。でも、加藤社長はその人物と話すたびに、とても緊張した様子でした。」

梶原警部:「わかりました。村上さん、協力してくれてありがとう。」

会話の後、凜花と梶原警部は新たな情報を整理した。

凜花:「警部、この綾小路という人物が、事件の鍵を握っているかもしれません。」

梶原警部:「ああ、その可能性は高いな。だが、まだ慎重に行動する必要がある。」

凜花:「はい。でも、ようやく新たな突破口が見えてきました。希望を持ち続けることの大切さを実感します。」

梶原警部:「その通りだ。希望を持ち続けることで、新たな可能性が開けるんだ。これを『最後まで希望を持ち続ける』という姿勢と呼ぶんだよ。」

凜花:「なるほど...では、次はこの綾小路という人物について調査を進めていきましょう。」

梶原警部:「そうだな。だが、ここでもう一つ大切なことがある。」

凜花:「何でしょうか?」

梶原警部:「自分自身を磨き続けることだ。新しい状況に対応するためには、常に学び、成長し続ける必要がある。これを『刃を研ぐ』という。」

凜花:「刃を研ぐ...自分自身を向上させ続けるということですね。」

梶原警部:「その通りだ。この事件を通じて、君自身も成長しているはずだ。その成長を意識し、さらに磨きをかけていくんだ。」

凜花は深く頷いた。これまでの捜査で学んだこと、そして今後学ぶべきことを思い返す。

凜花:「わかりました。綾小路の調査と並行して、金融取引や企業法についてもっと勉強します。それが、この事件の解決につながるはずです。」

梶原警部:「良い心がけだ。では、明日から新たな捜査を始めよう。」

その夜、凜花は自宅で一日の出来事を振り返っていた。逮捕状が却下されるという大きな壁にぶつかったが、希望を失わずに新たな道を見出すことができた。そして、自分自身を磨き続けることの重要性も学んだ。

凜花は、明日の計画を立てながら考えた。綾小路という新たな人物の存在。不正会計の真相。そして中野杏子の死の真相。全てが繋がっているはずだ。

最後まで希望を持ち続け、自分自身を磨き続ける。そうすれば、必ず真実にたどり着けるはずだ。

そう決意を新たにして、凜花は目を閉じた。明日は、きっと新たな展開が待っているはずだ。

第9話終了

登場人物:

橘凜花:18歳の新人女性刑事。希望を持ち続けることと自己成長の重要性を学ぶ。

梶原警部:凜花の上司。様々な人生の教訓を凜花に伝える。

村上智子:加藤誠一の秘書。重要な情報を提供する。

加藤誠一:投資会社の社長。不正会計に深く関与している疑いがある。

綾小路:新たに浮上した謎の人物。事件の鍵を握っている可能性がある。

#創作大賞2025   #ミステリー小説部門

第9話 終わり
次は 第10話

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