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(第2話)AIエンジニアの挑戦【創作大賞2024お仕事小説部門応募作】

第2話 プロジェクト始動

翔太は会議室に入ると、緊張感が漂う空気に包まれた。テーブルを囲むように座った5人のメンバーの表情は、期待と不安が入り混じっていた。

「では、プロジェクト『エモAI』の kickoff ミーティングを始めます」

プロジェクトリーダーの村上が口を開いた。50代半ばの彼は、長年AIの研究開発に携わってきたベテランだ。

「感情を理解し、共感できるAIの開発。これは我々にとって、そして人類にとって大きな挑戦です」

村上の言葉に、メンバー全員が頷いた。

翔太は自己紹介を終えると、プロジェクトの技術面での責任者として、自身のビジョンを語り始めた。

「私たちの目標は、単に人間の感情を模倣するAIではありません。真に感情を理解し、適切に反応できるAIの開発です」

翔太は熱を込めて話を続けた。

「そのためには、まず大規模な感情データベースの構築が必要です。そして、そのデータを基に深層学習モデルを訓練し、リアルタイムでの感情認識と反応生成のアルゴリズムを開発していきます」

チームメンバーの一人、データサイエンティストの佐藤が手を挙げた。

「感情データの収集方法については、どのように考えていますか?」

翔太は準備していた資料を示しながら答えた。

「テキスト、音声、表情のデータを組み合わせて使用します。SNSデータの分析、アンケート調査、そして被験者実験も計画しています」

議論は白熱し、各メンバーが自分の専門分野からアイデアを出し合った。心理学の知見を持つ山田は、感情の分類方法について提案。自然言語処理のエキスパートである田中は、言語モデルの改良案を示した。

ミーティングは予定時間を大幅に超過したが、誰も気にする様子はなかった。全員が、このプロジェクトの可能性に心を躍らせていた。

翌日から、チームは本格的に動き出した。

翔太は毎日遅くまでオフィスに残り、新しいアルゴリズムの設計に没頭した。時には徹夜も辞さない彼の姿に、チームメンバーも触発された。

1ヶ月が過ぎた頃、最初の成果が現れ始めた。

「翔太さん、見てください!」

佐藤が興奮した様子で翔太の元へやってきた。彼女のノートPCには、感情分析の初期モデルの結果が表示されていた。

「テストデータでの感情認識の精度が、予想を上回っています」

翔太は画面を覗き込み、思わず笑みがこぼれた。確かに、従来のモデルよりも高い精度で感情を分類できていた。

「すごいじゃないか、佐藤さん。君の提案したデータ前処理の方法が効果的だったんだね」

佐藤は照れくさそうに頷いた。

この小さな成功を皮切りに、プロジェクトは順調に進んでいった。チームの士気は上がり、メンバー間の絆も深まっていった。

ある日の昼休み、翔太たちは近くの公園でランチを取っていた。

「翔太さんって、学生の頃からAIに興味があったんですか?」山田が尋ねた。

翔太は少し考え込んでから答えた。

「実は、最初は音楽の道を目指していたんだ。でも、ある日偶然参加したAIの講演会で、その可能性に魅了されてね」

「へえ、意外です」田中が驚いた様子で言った。

「でも、音楽とAIって、意外と共通点があるんだよ」翔太は続けた。「どちらも、人間の感情や思いを表現する手段だと思うんだ」

チームメンバーは、翔太の言葉に深く頷いた。

その日の夕方、村上が翔太を呼び出した。

「君たちの頑張りは、上層部にも伝わっているよ」

村上は満足そうに言った。

「ただ、これからが本当の勝負だ。感情を『理解する』というのは、単なるパターン認識以上のものが必要になる。君たちなら、きっとそれを成し遂げられると信じている」

翔太は決意を新たにした。確かに、ここまでの成功は序章に過ぎない。本当の挑戦はこれからだ。

オフィスに戻ると、チームメンバーが待っていた。

「みんな、新しいアイデアがあるんだ」

翔太は、ホワイトボードに向かって歩き出した。彼の頭の中では、次の一手が既に形になりつつあった。

チームメンバーは、翔太の周りに集まった。彼らの目には、好奇心と挑戦への意欲が輝いていた。

「エモAI」プロジェクトは、新たなステージへと進もうとしていた。人間の感情を真に理解するAIの開発。その道のりは長く険しいかもしれない。しかし、このチームなら、きっと乗り越えられる。

翔太はそう確信していた。

Citations:
[1] https://kakuyomu.jp/works/16817330666673424958/episodes/16817330666675288286
[2] https://kakuyomu.jp/works/16816700428505308295
[3] https://note.com/ashizawakamome/n/n136408e96b07
[4] https://twitter.com/takahiroanno
[5] https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1810/25/news011_5.html

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