#1-② 癌だと診断されたあなたへ。隆起性皮膚線維肉腫の経験
※この記事は①、②で分かれているため、未読の方は、よければ①からお読みください。
4.入院と手術
そうして最後に行きついたのが「がん研有明病院」でした。
隆起性皮膚線維肉腫という病気は、100万人や200万人に1人と言われており、いまだにそのメカニズムは解明されていないそうです。
そのような病気だと診断された私は、いざ大学の入学式や授業が始まってもそのような行事に行く気にも、ましてや他の人となれ合う気にもなれませんでした。
そうしてコロナの最後のほうだったこともあり、オンラインで授業を受けるなどしながら、通院を続けていました。
そうして通院が続いたある日、入院や手術の目処がつき、入院のための手続きや準備を始めました。
形的には母子家庭だった私は、幸い「高額医療制度」という制度を使うことで医療費の大部分を賄うことができました。
そうして大学に申請を出し、入院と手術をすることになりました。
いざ手術をするにあたり、先生から手術についてのいくつかの説明を受けました。
・この病気は比較的進行するスピードが遅いこと。
・鎖骨の近くということもあり、切除しにくい部位であること。
・鎖骨から血管?に移ると全身に転移する可能性があるため、余白も含めた大部分を切除する意向であること。
・足の付け根から肉を切り取って肉を補う予定であること。
などの説明を受け、承諾した証明のための書類にサインをしました。
・手術
様々な準備が整い、入院し手術の日程も決まり、とうとう手術する日が訪れました。
いざ手術が始まろうと担架に横になり、手術室に運ばれると不思議と不安がなかったように感じます。
もしかすると不安が大きすぎて、脳が感覚を麻痺させたのかもしたのかもしれません。
いざ手術室に入ると、担当の先生を含めた7,8人が私の周りを囲みました。
女性の看護師の方が気を利かせて、「不安だろうからJPOPを流そうか?」と聞いてくれたため、「洋楽のほうが好きです」と答えると「そっか笑わかったよ」と洋楽をかけてくれました。
そして麻酔が効きはじめ、気づくと病室のベットの上でした。
たくさんの管に繋がれ、傷にはに何かが貼られ傷を見ることはできませんでした。
動こうとすると管が邪魔で動きづらく、少し痛かったことを覚えています。
5.その後の経過
手術が終わると、しばらく色んな先生や看護師さんが病室に訪れ、術後の経過を聞かれました。
先生は、思ったより早く順調に手術が終わったこと、思ったより切除する箇所が少なく済んだこと、それにより足の肉を切る必要がなくなったこと、腫瘍と取りきれたので再発の心配はおそらくないだろう、などの内容を僕に伝えました。
私は術後、入院していた2~3週間の間に様々なことを考えました。
「やはり将来、転移して死ぬだろうか」
「転移したら抗がん剤を打ってやせ細り、髪の毛が抜け落ちるのだろうか」
そして私が一番強く思ったのは
「もっと色んなことをやっておけばよかった」
という後悔でした。
病名を言われたあの日からずっと「死」が自分の隣にいるような気持ちでした。
今まで自分事ではなかった「死」がとても近く感じました。
死後の世界を見たという海外の教授の体験記を読んで、死後の不安を軽減しようとさえしていました。
「この世には美しいものや楽しいことがたくさんあるのに、何してないじゃないか」
「自分は何物にもなれていなければ、何も成していないじゃないか」
と感じました。
この時の感情は私に大きな衝撃を与え、その後の私が様々ななことに挑戦する勇気を私に与えてくれたように思います。
手術から1年たった現在は、半年に一回だけ有明に行き、血液検査やCT検査を行っており、異常はなく、今のところ安定して再発もしていません。
6.隆起性皮膚線維肉腫だと診断されたあなたへ
最後に私も経験したこの「隆起性皮膚線維肉腫」だと診断された方々にいくつかのことを伝えたいと思います。
いまこの記事を読んでいるあなたが、どのような状況にあるか、私は想像し得ません。
病院でこの病気だと告げられたばかりかもしれません。
もうすでに手術や入院をしているひとかもしれません。
しかし私の経験から言えるのは、心配しなくてよい、もしくは心配しすぎなくてよいということです。
このようなことを言うとお医者さんに怒られかもしれません。
しかし私は実際に大丈夫でしたし、この記事は、私と同じ病気だと診断されたあなたに少しでも安心してほしいという目的で書いています。
私は診断されたときから、「あぁこれから死ぬのだ」と思ったし、言葉にできない不安に襲われ続けていました。
しかしこの病気は、進行するスピードが速くないうえに、腫瘍部分さえ切り取ってしまえば、転移の可能性が低いようです。
もちろん腫瘍の箇所によるでしょうし、これはあくまで私の場合での話です。
こんなことを言うと誤解されるかもしれませんが、私はある意味で病気になってよかったとさえ思っています。
この病気になる前の私は、家族のこと、受験のこと、将来のことなど、様々なことに悩むばかりで悶々とした日々を送っていました。
しかし私には家族や友人などの恵まれた環境があった。
アレルギーもなく好きなものを食べることができた。
自分の足で好きな所へ行き、自分の手で好きなものをとることができた。
病気になって初めて、自分が何を持っていないかではなく、自分が何を持っているかに気づくことができました。
病気になって初めて、「今と向き合う重要性」や「人間がいつ死ぬかわからない有限な存在であること」に気づくことができました。
「今の自分は何がしたいのだろう」
「今の自分には何ができるだろう」
「もっと自分を慕ってくれている家族や友達と時間を費やそう」
など、「今」と向き合うきっかけになりました。
もちろん最初はこの病気を憎みました。
しかし同時にこの病気のおかげで様々ことに気づくことができたと考えています。
もし病気になっていない人がこの記事を読んでいるなら、その人にも伝えたい。
「自分のしたいことに今すぐ目を向けるべきだ」と。
「家族との時間は有限である」と。
そして「時間は有限である」と。
・最後に、癌だと、隆起性皮膚線維肉腫だと診断されたあなたへ
病気を乗り越えた暁には、思い切りやりたいことをやろうではありませんか。
たくさん家族との時間を過ごそうではありませんか。
限りある1度きりの人生を楽しみつくそうではありませんか。
この記事を読んでくれたあなたが少しでも早く病気を乗り越え、前を向き、今あるものや今できることに気づけていただくきっかけになれば幸いです。
長々と呼んでいただきありがとうございました。
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