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【一口馬主】馬体のデータ分析:馬体の作り(コンフォメーション)と競争成績、故障の関係①

下記の記事で馬体のデータ分析についてご紹介しました。

2024年6月時点で収集した506頭の馬体データに基づき、体長/体高などの各データ項目と競争成績(勝ち上がり率)、前肢故障の関係性についてまとめましたので、ご紹介していきたいと思います。
なお、量が多いので下記の3回程度に分けてご紹介します。
※馬体データを2023年:308頭→2024年:506頭と増やしたため、記事を更新しています。

①:測尺、データ:馬体全身
②:データ:馬体脚元
歩様などの状態、印象、筋肉の状態

今回は1回目。
測尺や馬体全体の項目(体高と体長の比率など)について、馬体の作りと勝ち上がり率、前肢故障率の関係をご紹介していきます。


はじめに

対象馬(データソース)

下表で丸がついている、クラブと募集年度の馬を対象に、計測や肉付きのチェックなどのデータ取得を実施しました。
ただし、募集中止や2次募集は対象外としています。

対象馬(データソース)

全体の勝ち上がり率と故障率

まず初めに集計した506頭の勝ち上がり率と前肢の故障率は下記となっています。

  • 勝ち上がり率は3歳6月1日時点のものです。

  • 故障率は前肢に絞っています。前肢に比べて後肢は故障数が少なかったため、今時点では対象外としています。

  • 1勝クラス、OPクラスなどクラス分けにもいずれ取り組みたいと思いますが、OPの場合件数が少ないため、今回は勝ち上がり率としています。

全体の勝ち上がり率と故障率

データ分割の考え方

ほとんどの項目において、506件のデータを昇順に3つのグループに分けています。1グループあたりのデータ数は約150件です。
データ数が多ければそれだけ精度が高くなり、少なければ精度が低くなります。

統計を専門的に勉強したわけではありませんが、調べてみたところ統計の観点からデータ数と信頼性の関係は下記のようでした。

データ数と許容誤差

例えば、馬体重の軽いグループ(100頭)の勝ち上がり率が30.0%の場合、データ数が100件であるため、±10%の許容誤差となり、20.0%~40.0%に収まる可能性が高いと考えらえます。
今後データ数を増やしていった場合、より精度が向上することになります。

今回ご紹介する対象一覧

この記事では下記の項目において、調査した勝ち上がり率と前肢故障率をご紹介します。

  • 牡/牝

  • 馬体重

  • 馬体重(デビュー時想定体重)

  • 体高

  • 胸囲

  • 管囲

  • 体高と体長の比率

  • 体長に対する胸、背中、腰の比率

  • 体長と胸深の比率

  • 顔と首の比率

  • 首と体長の比率

  • 顔と体長の比率

  • 体高と脚長①の比率

  • 体高と脚長②の比率

  • 体高と脚長③の比率

  • 脚長①の長さ

  • 脚長②の長さ

  • 脚長③の長さ

  • 肩の角度

  • 骨盤の角度

  • 腰高と体高の比率

表の見方

勝ち上がり率と前肢故障率について、表形式で記載していきます。
わかりやすいように平均からの乖離に応じて青~赤の色付けをしています。
青のほうが良い、赤だと悪い結果です。

表の見方

馬体の作り(コンフォメーション)と競争成績、故障の関係

牡/牝

牡/牝

性別の勝ち上がり率については、上記の集計よりも一口馬主DBのコラムのほうが、よりデータ数が多く正確と思いますが、基本的な項目なので記載しておきます。
結果として、勝ち上がり率は想定通り明らかに牡馬優勢となりました。
前肢故障率には性別による明確な違いは見て取れません。

馬体重

馬体重

募集時測尺の馬体重データです。
こちらも、勝ち上がり率については、一口馬主DBのコラムのほうがより正確と思います。
勝ち上がり率は馬体重が重い馬が高く、軽い馬が低い結果となりました。
ただ、前肢故障率については、重い馬のほうがやや高いように見えるものの、そこまで明確な違いは見受けられません。

馬体重(デビュー時想定体重)

馬体重(デビュー時想定体重)

一口馬主DBの出資ツールにある、デビュー時想定体重を元にした、馬体重のデータです。
こちらも、勝ち上がり率は馬体重が重い馬が高く、軽い馬が低い結果となりました。
また、前肢故障率は中間のグループが最も高い結果となりました。
これが、誤差なのか、それともそのような特性があるのかは、現時点では何とも言えません。

体高

体高

募集時測尺の体高データを基にしています。
勝ち上がり率は体高が高い馬が高く、低い馬が低い結果となりました。

胸囲

胸囲

募集時測尺の胸囲データを基にしています。
勝ち上がり率は胸囲が長い馬が高く、短い馬が低い結果となりました。

管囲

管囲

募集時測尺の管囲データを基にしています。
管囲が細いグループの勝ち上がり率が明らかに低い結果となりました。
また前肢故障率は、当然といえば当然ですが、管囲が細いグループが高い結果となりました。逆に、管囲が太いグループは故障率がやや低い結果となりました。

体高と体長の比率

体長/体高で算出しています。

体長/体高

勝ち上がり率、前肢故障率ともに、中間のグループが良い結果となりました。
体長と体高はバランスが良い馬が良いといわれていますが、それを裏付ける結果となりました。

体長に対する胸、背中、腰の比率

各々、胸幅/体長、背中/体長、腰幅/体長で算出しています。

胸幅/体長
背中/体長
腰幅/体長

勝ち上がり率は、胸幅が狭いグループがやや高めとなりました。
また、前肢故障率の観点では、胸幅が狭く、腰幅が広いグループが低い結果となりました。
ちぐはぐ感もあり、この辺りはあまり参考にはならないかもしれません。

体長と胸深の比率

胸深/体長で算出しています。

胸深/体長

この項目では胸が深いグループの勝ち上がり率がやや低い結果となりましたが、それほど明確な違いは見受けられませんでした。

顔と首の比率

顔/首で算出しています。

顔/首

顔が長いと勝ち上がり率がやや下がり、前肢故障率は中間のグループが高い結果となりましたが、それほど明確な差は見受けられませんでした。

首と体長の比率

首/体長で算出しています。

首/体長

体長と比べて首が短いグループが勝ち上がり率が高くなる傾向が見られました。

顔と体長の比率

顔/体長で算出しています。

顔/体長

勝ち上がり率は顔が短いほどよく、前肢故障率は顔が長いほど良い結果となりました。

体高と脚長①の比率

脚長①/体高で算出しています。

脚長①/体高

この項目については勝ち上がり率、前肢故障率とも明確な差は見受けられませんでした。

体高と脚長②の比率

脚長②/体高で算出しています。

脚長②/体高

前肢故障率観点で、体高に対して脚長が長いほど故障率が高まる傾向が見受けられました。

体高と脚長③の比率

脚長③/体高で算出しています。

脚長③/体高

勝ち上がり率、前肢故障率ともバランスのよいグループが良い結果となりました。

脚の長さ①

脚長①/体高 × 体高で算出しています。
体高を元に、比率ではなく絶対値として算出しています。

脚長①/体高 × 体高

勝ち上がり率観点では、脚長が短いグループが明らかに低い結果となりました。

ただ、後述の「脚の長さ②」の結果を踏まえると、あまりきちんとした傾向が出ない項目であると考えています。

脚の長さ②

脚長②/体高 × 体高で算出しています。
体高を元に、比率ではなく絶対値として算出しています。

脚長②/体高 × 体高

脚長が長いグループの勝ち上がり率が高い傾向が出ました。
前肢の故障率観点では、中間のグループがやや良い結果となりました。

脚の長さ③

脚長③/体高 × 体高で算出しています。
体高を元に、比率ではなく絶対値として算出しています。

脚長③/体高 × 体高

前肢以上に脚長が長いほど勝ち上がり率が高まる明確な傾向が出ました。
前肢故障率の観点では、特に違いが見られませんでした。

肩の角度

肩の角度

肩の角度では明確な違いが見受けられませんでした。

骨盤の角度

骨盤の角度

骨盤が立っているグループにおいて、前肢故障率が明らかに低い結果となりました。
ただし、勝ち上がり率や前肢故障率全体でみると、何かしらの傾向があるわけではないので、データ量をもっと増やした後に判断したほうがよさそうです。
また、骨盤の角度は最も計測が困難な項目でしたので、計測結果の誤差が大きかった可能性も十分あります。

腰高と体高の比率

腰高/体高で算出しています。

腰高/体高

腰高が低いグループにおいて、勝ち上がり率が低く、腰高が高いグループで前肢故障率が高くなる傾向が見て取れました。

まとめ

一口馬主における出資馬選定において、有用と思われる項目としては、主に下記がありました。

  • 体重、体高、胸囲、菅囲とも、高い馬を選ぶのが良い。
    特に菅囲は故障率の観点からも太い馬を選ぶべき。

  • 体長と体高の比率はバランスが取れた馬を選ぶのがよい

  • 脚長は前肢後肢とも長いほど勝ち上がり率が上がるが、体高との比率で考えた場合、バランスが取れた馬を選ぶのが良い

「馬体の作り(コンフォメーション)と競争成績、故障の関係①」は以上です。
②では脚元周りのデータ(繋ぎの角度や膝の角度など)を基にした、勝ち上がり率と前肢故障率の関係について、同じようにご紹介します。



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